FMの調査・分析とは?現状を知り施策の根拠をつくる|第6章④

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🔎 FMの調査・分析は何のために行う?

FMの調査・分析は、ファシリティの現状や周囲の環境を把握し、根拠のあるFM施策を立案するために行います。 前回は、FM目標とFM課題をもとに、進む方向を決める「FM施策」について学びました。

しかし、現在の施設がどのように使われ、どのような変化が起きているのかを知らなければ、本当に必要な施策は選べません。

そこで、建物や設備の状態、利用者の声、コスト、スペースの使われ方、社会や市場の動きなどを調べ、施策を考えるための情報を整えます。

🐥ぴよまる:調査って、数字をたくさん集めればいいの?

🐔にわのとりさん:数字を集めるだけでは足りんのじゃ。まずはクイズで考えてみようかの。

🐥 ぴよまると考える3択クイズ

「会議室が足りない」という声が増えています。FM施策を決める前に、最初に行うこととして最も適切なのはどれでしょう?

  • A:すぐに新しい会議室を増設する
  • B:予約状況、実際の利用状況、混雑する時間帯、利用者の声などを調べる
  • C:会議室を使わないよう、全員へ呼びかける

🐥:本当に部屋が足りないのか、使い方に偏りがあるのか、まだ分からないよね。Bかな?

😸うちのねこさん:Aなら、オレ専用の静かな部屋が増える可能性もあるニャ。

🐶うらのいぬさん:正解はBです。 「足りない」という声だけで増設を決めると、特定の時間帯だけ混雑している、予約は多いのに実際には使われていない、といった状況を見落とす可能性があります。 まず現状を調べ、その情報を分析してから、増設、用途変更、予約方法の改善などの施策を検討します。

😸:増やす前に、今ある部屋が本当に使われているか確かめるのニャ。

🧭 調査と分析はどう違う?

調査と分析は、似ているようで役割が異なります。

  • 調査:判断に必要な情報やデータを集める
  • 分析:集めた情報を整理・比較し、傾向や関係を読み取る

たとえば、会議室の予約記録と実際の利用状況を集めるのが調査です。

二つを比較し、「予約は埋まっているが、実際には使われていない時間がある」と読み取るのが分析です。

現状を評価した結果、判断に必要な情報が不足している場合には、目的に応じて追加の調査を行います。

調査と分析の進め方は、扱う課題や必要な判断によって異なります。

調査や分析そのものを目的にせず、得られた情報をFM課題の把握やFM施策の立案へつなげることが大切です。

🔺 第9章の評価結果をFM戦略へ活かす

FM施策を考えるときは、第9章で扱う品質・財務・供給の評価結果を、FM戦略立案の基礎情報として使います。

  • 品質評価:ファシリティの品質や利用者満足度などに関する評価
  • 財務評価:ファシリティコスト、施設資産、施設投資などに関する評価
  • 供給評価:施設面積、施設利用度、サービスの供給状況などに関する評価

これらの評価結果を目標と比較し、その差を分析することで、今後の改善方針やFM目標、FM課題を検討します。

第6章では、評価結果を受け取ってFM戦略やFM施策へつなげる流れを扱います。品質・財務・供給の評価項目や評価方法の詳細は、第9章で学びます。

現状評価で確認される主な情報

公式ガイドでは、FM施策を検討するための現状評価として、次のような情報が挙げられています。

  • 利用者意識・満足度調査:施設を利用する人の評価や満足度を確認する
  • ファシリティコスト調査:施設の運営や保有にかかる費用を確認する
  • 施設利用度調査:施設やスペースがどの程度利用されているかを確認する
  • 組織近接度調査:連携する組織同士の位置関係が業務に合っているかを確認する

ここでは評価方法を詳しく学ぶのではなく、こうした情報がFM課題や施策を考える材料になることを押さえておきましょう。

🌍 FMの調査・分析で行う追加調査

第9章で扱う品質・財務・供給の評価結果だけでは、FM課題の把握やFM施策の立案に必要な情報が十分に得られない場合があります。

その場合は、公式ガイドに示されている次の調査を、必要に応じて実施します。

1.社会動向調査

企業活動を取り巻く社会的要因のうち、特に影響の大きいものを調べます。

法規制や会計基準の変更、政府の重要政策、関係省庁の動きなどが主な対象です。

2.市場動向調査

不動産市場の動向を把握するため、土地・建物の取引価格、周辺地域の賃料相場、オフィスの空室率、施設種類ごとの需要状況などを調べます。

移転、賃借、取得、売却などのFM施策を検討する際の判断材料になります。

3.施設状況調査

不動産取引の過程で行われるデューデリジェンスなどにより、施設の状況を詳しく調べます。

主な内容には、登記や抵当権、賃貸借契約などの法的調査、建物の収益性に関する経済的調査、建物の状態や土壌汚染などに関する物理的調査があります。

4.業務・行動特性調査

施設のあり方を検討するため、施設内で行われる業務と、それに伴う利用者の行動を調べます。

現場観察、ヒアリング、アンケートなどにより、業務の流れやスペースの使われ方を確認します。

5.類似事例調査

同業他社や、企業規模・業務内容が似ている企業の情報を調べ、自社の現状と比較します。

他社情報は、FM施策を検討する際の比較情報として役立ちます。代表的な調査方法の一つがベンチマーキングです。

6.リスク要因調査

施設に関するリスクへの対応として、地震・火災時の緊急対応、施設の一部が機能停止した場合の代替機能などを調べます。

ICTに関するコンピュータウイルスやネットワークセキュリティなども重要な調査対象です。

リスクへの対応では、人員配置、組織、業務内容、社内ルール、社内部署との関係、社外との関係なども含め、総合的に確認します。

🐥:建物の中だけでなく、社会や市場まで調べるんだね。

🐔:ファシリティは、外の世界から切り離されておらんからのう。周囲の変化を知らなければ、これからの施策は考えられんのじゃ。

💡 FMの調査・分析で使われる代表的な手法

公式ガイドの図表6.2.4「代表的な調査分析手法」には、FM施策の立案に役立つ22の手法が示されています。

以下の一覧は、図表6.2.4に掲載された手法と概要をもとに、初めて学ぶ人向けの補足を加えたものです。

手法の名称と対象範囲は公式ガイドに沿い、「やさしい補足」では、どのような場面で役立つのかを簡潔に説明しています。

手法 公式ガイドで扱う内容 やさしい補足
不動産鑑定 土地や建物などの資産価値を評価する 売買、賃貸、保有継続などを判断するための材料になります。
財務分析 財務諸表などの数値から企業の状態を把握する 施設に関する判断を、経営や財務の状況と結びつけます。
プロブレム・シーキング 要求条件を整理し、問題を明らかにする いきなり解決策を決めず、「何を解決すべきか」を整理する方法です。
施設面積評価 施設面積や利用状況の妥当性を評価する 広すぎる、狭すぎる、使われ方に偏りがあるといった状態を確認します。
快適性評価 温熱、音、光、空間などを快適性の面から評価する 測定値と利用者の感じ方を組み合わせて考える場合があります。
組織近接度関連分析 業務上連携する組織同士の位置関係を分析する 頻繁に連携する部署を近くに配置する必要があるか検討します。
評価グリッド法 人が対象をどのような基準で評価しているかを把握する 利用者への面接などから、「なぜそう感じるのか」を段階的に掘り下げます。
SD法 対になる言葉を用いて印象を段階評価する 「明るい―暗い」「開放的―閉鎖的」などの印象を数値として整理します。
評価尺度法 段階的な尺度を用いて評価を回答してもらう 満足、やや満足、普通などの選択肢で評価を集めます。
ベネフィット構造分析 利用者が感じる効果を重要度や満足度などから評価する 利用者が何を重視し、何に満足しているかを整理します。
ポートフォリオ分析 複数の対象を二つの評価軸で分類する 施設や施策を比較し、維持、改善、見直しなどの判断を助けます。
ベンチマーキング 優れた事例を基準として、自組織との違いを分析する 数値を比べるだけでなく、優れた業務の進め方から学びます。
シナリオプランニング 複数の将来像と、それに応じた戦略を考える 未来を一つに決めつけず、変化に備えて複数の道を用意します。
キャッシュフロー分析 将来の資金の流れをもとに投資の価値を判断する 費用や収入が発生する時期も考慮して、施設投資を検討します。
AHP分析 複雑な判断を階層化し、選択肢の優先順位を検討する 費用、安全性、利便性など、複数の基準を使って案を比較します。
相関分析 二つのデータの関係の強さを調べる 一方が変化したとき、もう一方も変化する傾向があるかを確認します。
多変量解析 複数のデータを使い、複雑な関係や特徴を分析する 多くの要素が関わる状況を、分かりやすい形に整理するために使います。
パレート図 問題を大きい順に並べ、主要な要因を把握する 影響の大きな問題から優先して取り組むために役立ちます。
KJ法 情報をカードに書き、似た内容をまとめて整理する ばらばらの意見や情報から、全体像や新しい関係を見つけます。
デルファイ法 専門家への質問を繰り返し、意見を集約する 将来予測など、すぐに答えが出ない問題を検討するときに使われます。
ブレーンストーミング 自由にアイデアを出し、発想を広げる 批判を急がず、多様な案を出してから整理します。
特性要因図 問題と、その原因として考えられる要因を整理する 魚の骨のような形で表すため、フィッシュボーン・チャートとも呼ばれます。

ベンチマーキングとシナリオプランニングについて

ベンチマーキングとシナリオプランニングも、図表6.2.4に代表的な調査分析手法として掲載されています。

さらに公式ガイドでは、次節の6.2.4「ベンチマーキングとシナリオプランニング」で、この二つを詳しく説明しています。

そのため、この記事では図表に沿った概要にとどめ、具体的な進め方は第6章⑤で学びます。

手法は「何を知りたいか」に合わせて選ぶ

調査・分析では、難しい手法を使えばよいわけではありません。

まず、何を明らかにしたいのかを考えます。

  • 現状や利用状況を知りたいのか
  • 利用者の評価を知りたいのか
  • 複数の案を比較したいのか
  • データ同士の関係を知りたいのか
  • 意見やアイデアを整理したいのか
  • 将来の変化を考えたいのか

目的を明らかにしてから、必要な情報と適切な手法を選びます。

一つの調査だけで判断せず、必要に応じて複数の情報を組み合わせることもあります。

🐶:手法は答えを自動的に出してくれる道具ではありません。判断に必要な情報を、見やすく整理するための道具です。

😸:道具を増やす前に、何を探しているのか決めるのニャ。

📚 ポイントまとめ

  • FMの調査・分析は、根拠のあるFM施策を立案するために行う
  • 調査は情報を集めること、分析は情報を整理・比較して意味を読み取ること
  • 品質・財務・供給の評価結果を、FM戦略や施策の材料として活用する
  • 評価方法の詳しい内容は、第9章で扱う
  • 必要に応じて、社会、市場、施設、業務、類似事例、リスクを調査する
  • 調査・分析手法は、何を知り、何を判断したいのかに合わせて選ぶ
  • 調査結果は答えそのものではなく、FM課題や施策を考えるための根拠になる

🌱 今日のまとめ

FMの調査・分析は、情報をたくさん集めることが目的ではありません。

施設や組織の現在地を知り、社会や市場の変化を確かめ、どのFM施策を選ぶべきか判断するために行います。

利用者の声、利用記録、財務情報、市場の動きなど、それぞれの情報は、ファシリティの一部分を映しています。

それらを目的に合わせて集め、整理し、比較することで、組織は思いつきではなく、根拠を持って未来への道を選べるようになります。

情報は、ただ集めただけでは宝の地図になりません。

何を知りたいのかという問いを持ち、判断に使える形へ整えることで、初めて未来への道を照らしてくれるのです。

🎮 次回予告

第6章⑤「ベンチマーキングとシナリオプランニング」へ

他社の優れた取り組みから、何を学べるのでしょうか。 そして、まだ決まっていない未来に、どう備えればよいのでしょうか。

次回は、外から学ぶベンチマーキングと、複数の未来を描くシナリオプランニングについて学びます。

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📖 参考資料・関連情報

  • 『公式ガイド ファシリティマネジメント』第6章「FM戦略・計画」
  • 6.2.3「FM施策立案のための調査分析手法」
  • 115~117ページ
  • 図表6.2.4「代表的な調査分析手法」

この記事は、公式ガイドに示されたFM施策立案のための現状評価、追加調査、代表的な調査分析手法を、初めて学ぶ人向けに整理したものです。品質・財務・供給の詳しい評価方法は、第9章で扱います。

🎁 おりたたみ劇場「会議室が足りない」の本当の姿を調べよう
~予約表だけでは分からなかったこと~
🐥ぴよまる:今日の調査は、「ぴよカフェの会議室が足りない」という問題です!
😸うちのねこさん:それなら、すぐに増築するニャ。ついでにオレの昼寝部屋も頼むニャ。
🐶うらのいぬさん:まだ増築が必要とは決まっていません。まず、利用状況を確認しましょう。
🐔にわのとりさん:うむ。一つの情報だけで施策を決めず、いくつかの角度から見てみるのじゃ。

📍調べた情報

  • 予約表では、会議室はほぼ一日中埋まっている
  • 利用者からは「必要な時間に予約できない」という声がある
  • 現地で確認すると、予約時間になっても使われていない部屋がある
  • 予定より早く会議が終わっても、予約がそのまま残っている
  • 2人の打合せに、大人数用の会議室が使われている
🐥:予約表では満室なのに、実際には空いている部屋があるよ!
🐶:予約データだけでは、実際の利用状況まで分からなかったということです。
😸:会議室が足りないというより、予約と使い方にずれがあるのかもしれないニャ。
🐔:その可能性が見えてきたのう。では、どのような施策が考えられるか整理してみよう。

🛠️ 調査結果から考えられるFM施策

  • 使わなくなった予約を解除しやすくする
  • 会議が早く終わったら、自動的に空室へ戻せる仕組みを検討する
  • 少人数用と大人数用の会議室を使い分ける
  • 小規模な打合せスペースを増やす
  • 改善後も不足が続く場合に、用途変更や増設を検討する
🐥:いきなり増築しなくても、使い方を変える方法があるんだね。
🐶:はい。調査によって、複数の選択肢を比較できるようになりました。
😹:オレの昼寝部屋は、選択肢から外れたニャ……。
🐔:FM施策は、声の大きさや思いつきだけで決めるものではないのじゃ。必要な情報を集め、状況に合う道を選ぶことが大切じゃよ。
🔍 一つの情報だけでは、施設の状態を十分に判断できないことがあります。利用者の声、記録、現場の状況を組み合わせることで、FM課題をより正確に捉えられます。
🐥:情報を重ねると、地図に本当の道が見えてくるんだね!
😸:では次に、「冷蔵庫のおやつが減る謎」を調査するニャ。
🐶:その件は、すでに有力な目撃情報があります。
🐱:……調査終了ニャ。
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