ベンチマーキングは、外部の優れた事例と自組織を比較し、改善の手がかりを見つける方法です。
🔍 ベンチマーキングとは?優れた事例から学ぶ方法
ベンチマーキングとシナリオプランニングは、FM戦略やFM施策の立案を支える代表的な手法です。
ベンチマーキングでは、外部の優れた事例と自組織を比較し、その違いから改善の手がかりを探します。
シナリオプランニングでは、将来起こり得る複数の状況を描き、それぞれにどのように対応するかを考えます。
一つは「外から学ぶ方法」、もう一つは「複数の未来に備える方法」です。
🐥ぴよまる:どちらも、よりよいFM施策を考えるために使うんだね。
🐔にわのとりさん:うむ。ただし、比べるだけ、未来を想像するだけでは不十分なのじゃ。まずはクイズで違いを確かめてみようかの。
🐥 ぴよまると考える3択クイズ
シナリオプランニングについて、最も適切な説明はどれでしょう?
- A:未来を一つだけ正確に予言する方法
- B:起こり得る複数の未来を描き、それぞれに備える方法
- C:過去の出来事だけを調べ、現在の計画を変えない方法
🐥:未来を正確に当てるのは難しいから、Bかな?
😸うちのねこさん:未来が一つなら、オレが選ばれし予言者になるAも魅力的ニャ。
🐶うらのいぬさん:正解はBです。シナリオプランニングは、未来を言い当てるための手法ではありません。 事業環境がどのように変化するかを複数のシナリオとして考え、どのような状況になっても適切に動けるよう準備します。
😸:未来を当てるのではなく、未来が変わっても慌てないための準備なのニャ。
🔍 ベンチマーキングとは?
ベンチマーキングとは、有効な外部情報やデータをベンチマーク、つまり比較の基準として、自組織のデータと比べ、その差を分析する方法です。
さらに、優れた成果を上げている組織の業務プロセスや取り組み方を学び、自組織の改善につなげます。
たとえば、次のような項目を比較できます。
- 1人当たりのオフィス面積
- 施設の利用率
- 光熱費や運営費
- 修繕・更新にかかる費用
- 利用者満足度
- 運営サービスの品質
- 設備管理や業務の進め方
ただし、平均値や優良事例を、そのまま自社の目標値にすればよいわけではありません。
組織の規模、業務内容、建物の用途、立地、働き方などの条件が異なれば、同じ数値でも意味が変わります。
ベンチマーキングでは、「どのくらい違うか」だけでなく、なぜ違いが生じているのかを分析することが大切です。
ベンチマーキングは、ものまねではない
ベストプラクティスと呼ばれる優れた事例を見つけても、それをそのまま導入できるとは限りません。
相手の方法が成功している背景を調べ、自組織の目的、文化、人材、予算、施設の状態に合う形へ置き換える必要があります。
🐥:他の会社と同じにするんじゃなくて、うまくいっている理由を学ぶんだね。
🐔:そのとおりじゃ。答えを写すのではなく、考え方を学ぶのがベンチマーキングなのじゃよ。
🪜 ベンチマーキングの10ステップ
公式ガイドでは、ベンチマーキングを次の10ステップで進めます。
| 段階 | ステップ | 行うこと |
|---|---|---|
| 調査 | STEP 1 | ベンチマークする項目を決める |
| STEP 2 | 比較する相手となるベストプラクティスを決める | |
| STEP 3 | 必要なデータや情報を集める | |
| 分析 | STEP 4 | 差異(ギャップ)を認識し、その理由を分析する |
| STEP 5 | 将来の到達水準を設定する | |
| 計画 | STEP 6 | 到達水準について組織の理解を得る |
| STEP 7 | 改善目標を設定する | |
| STEP 8 | 実行計画を立案する | |
| 導入 | STEP 9 | ベストプラクティスを導入し、進捗を確認する |
| STEP 10 | ベンチマーキングを続け、継続的に改善する |
ベンチマーキングは、一度比較して終わるものではありません。
導入後の結果を確認し、改善が見えてきたら再び比較します。
こうして継続的な業務改善へつなげます。
⚠️ 数値の比較だけでは分からない
ベンチマーキングでは、数値を並べるだけで判断しないことが重要です。
たとえば、自社の1人当たりオフィス面積が他社より広かったとしても、すぐに「無駄な面積が多い」とは限りません。
業務内容、来客の多さ、必要な設備、働き方などによって、必要な面積は異なります。
数値の差を確認した後は、次のような点も調べます。
- どのような業務プロセスで運営しているか
- どのような行動や工夫が成果につながっているか
- 比較する条件に大きな違いがないか
- 自組織へ導入した場合に、どのような影響があるか
データを扱うときは、対象年度や調査条件も確認します。
古いデータや条件の異なる数値は、そのまま現在の基準として使えない場合があります。
🔮 シナリオプランニングとは?
シナリオプランニングとは、よりよい戦略を立てるために、将来起こり得る複数の状況を想定し、それぞれに対応する戦略や行動を考える手法です。
将来は、一つの予測どおりに進むとは限りません。
たとえば、オフィスの将来を考える場合でも、次のような変化が起こる可能性があります。
- 働く人の数が増える、または減る
- テレワークがさらに増える
- 出社による交流が再び重視される
- エネルギー価格や建設費が上昇する
- 新しいICTが普及する
- 災害や感染症によって働く場所が制限される
どの未来が実現するかを一つに決めつけず、いくつかの可能性を描きます。
そして、それぞれの未来で何をすべきかを考え、変化の兆しを確認しながら行動を選びます。
シナリオプランニングは予言ではない
シナリオプランニングの目的は、最も当たりそうな未来を一つ選ぶことではありません。
複数の未来を考えることで、思い込みを外し、どのような変化が起きても対応できる戦略を準備することです。
🐥:一つの未来を当てるより、いくつかの道を見ておくほうが安心だね。
🐶:はい。シナリオは未来の答えではなく、考える範囲を広げるための道具です。
🗺️ シナリオプランニングの5段階
公式ガイドでは、シナリオプランニングを次の5段階で進めます。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1.シナリオ作成 | 将来のビジネス環境を考え、複数のシナリオを描く |
| 2.戦略の具体化 | それぞれのシナリオで、目的を実現するための行動計画を考える |
| 3.トリガーの明確化 | 別のシナリオへ変化する兆候を示す指標を決める |
| 4.トリガーのモニター | 決めた指標を継続して確認する |
| 5.トリガーにもとづく行動 | 指標の変化を見て、準備していた対応を実行する |
🌱 複数のシナリオをつくる
シナリオを作成するときは、最初に「何について考えるのか」という重要な問題を決めます。
次に、その問題へ影響を与える要因を挙げ、影響の方向や組み合わせを整理します。
そのうえで、起こり得る複数の未来を描きます。
公式ガイドでは、少なくとも次のようなシナリオを用意する考え方が示されています。
- 基本シナリオ:最も起こりそうな事業環境
- 最良シナリオ:望ましい条件が重なった場合
- 最悪シナリオ:厳しい条件が重なった場合
ただし、「最悪」という言葉は、怖い未来を大げさに描くためのものではありません。
事業や施設へ大きな影響を与える状況を前もって考え、対応を準備するために使います。
🚦 トリガーが行動の合図になる
シナリオを作ったら、状況の変化を示す「トリガー」を決めます。
トリガーとは、あるシナリオから別のシナリオへ移りつつあることを知らせる指標です。
たとえば、オフィス戦略では次のような指標が考えられます。
- 出社率や在宅勤務率
- 従業員数
- 席や会議室の利用率
- 賃料や空室率
- エネルギー価格
- 建設費
- 設備の故障率
- 法令や制度の変更
トリガーとなる指標を継続して確認し、一定の変化が表れたら、あらかじめ考えていた行動へ移ります。
ただし、数字が基準を超えたら機械的に施策を変更するとは限りません。
指標が示す背景やほかの情報も確認し、現在の戦略を続けるのか、別のシナリオに沿った行動へ切り替えるのかを判断します。
🔗 二つの手法を組み合わせる
ベンチマーキングとシナリオプランニングは、別々の役割を持っています。
- ベンチマーキング:外部の優れた事例から、現在の改善方法を学ぶ
- シナリオプランニング:複数の将来を考え、変化へ備える
ベンチマーキングで見つけたベストプラクティスも、将来の環境が変われば、そのままでは使えなくなるかもしれません。
そこで、外部から学んだ施策が、複数の未来でも有効かを検討します。 反対に、シナリオで考えた行動を具体化するときには、外部の優れた事例が参考になります。
二つを組み合わせることで、現在の改善と将来への備えを、同時に考えられるようになります。
📚 ポイントまとめ
- ベンチマーキングは、外部の優れた事例と比較し、その差から改善方法を学ぶ手法
- 数値の差だけでなく、優れた成果を生む業務プロセスや行動を調べる
- ベストプラクティスは、自組織の条件に合う形へ置き換えて導入する
- ベンチマーキングは、調査・分析・計画・導入の10ステップで進める
- シナリオプランニングは、未来を当てるのではなく、複数の未来へ備える手法
- 基本・最良・最悪など、起こり得る複数のシナリオを描く
- 変化の兆しとなるトリガーを決め、継続して確認する
- 二つの手法を組み合わせると、現在の改善と将来への備えをつなげられる
🌿 今日のまとめ
ベンチマーキングは、外部の優れた事例から学び、自組織の現在地と改善の方向を確かめる方法です。
シナリオプランニングは、まだ決まっていない未来を複数の道として描き、それぞれに備える方法です。
どちらも、答えをそのまま教えてくれるものではありません。
優れた事例を自分たちの条件に合う形へ読み替える。複数の未来を描き、変化の兆しを見ながら行動を選ぶ。
外から学ぶ目と、未来を広く見渡す目。その二つを持つことで、FM戦略は変化に強いものへ育っていきます。
🎮 次回予告
第6章⑥「中長期実行計画とは?」へ ここまで、FM目標、FM課題、FM施策、調査・分析について学んできました。
次回は、選んだFM施策を、時期・予算・優先順位を持つ実行可能な計画へ変える「中長期実行計画」について学びます。
🔗 関連記事
📖 参考資料・関連情報
- 『公式ガイド ファシリティマネジメント』第6章「FM戦略・計画」
- 6.2.4「ベンチマーキングとシナリオプランニング」
- 117~122ページ
- 図表6.2.5「ベンチマーキングの10のステップ」
- 図表6.2.6「シナリオプランニングの進め方」
- 図表6.2.7「アクションプラン(戦略の具体化)の例」
この記事は、公式ガイドに示されたベンチマーキングとシナリオプランニングの目的、進め方、FMでの活用を、初めて学ぶ人向けに整理したものです。
- 公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会
日本におけるFMの普及と、ファシリティマネジャーの育成を行っている公式団体です。同協会もFMを経営基盤に関わる活動として扱っています。
🎁 おまけ劇場「未来を想像しすぎたぴよまる」
🔮 ぴよカフェの三つのシナリオ
- 基本シナリオ:利用者数は現在と同じくらいで推移する
- 最良シナリオ:地域の人気店となり、利用者とテイクアウト注文が増える
- 最悪シナリオ:在宅勤務の増加や競合店の開店で、来店者が減る
| シナリオ | 考えられる行動 |
|---|---|
| 基本 | 現在の店舗を使いながら、席や動線を少しずつ改善する |
| 最良 | テイクアウトカウンターの拡張や、空きスペースの客席化を準備する |
| 最悪 | 余ったスペースの用途変更や、固定費を抑える運営方法を検討する |
🚦 変化を知らせるトリガー
- 1日当たりの来店者数
- テイクアウト注文数
- 客席の利用率
- 売上と運営費
- 周辺の競合店や働き方の変化
🔮 未来を一つに決めつけず、複数の可能性と行動を準備しておけば、変化が訪れたときにも落ち着いて道を選べます。😸:オレは、どの未来でも快適に昼寝できる場所を確保するニャ。