ファシリティマネジメントでは、建物の点検や清掃だけでなく、利用者の声を集め、課題を見つけ、改善計画を立てる仕事も行います。
では、FMの業務は、どのような流れで進むのでしょうか?
今回は、目の前の困りごとを解決しながら、施設の未来も整えていくFMの仕事を、ぴよまるたちと一緒に見ていきます。
まずは3択クイズ!
🐶うらのいぬさん:あるオフィスで、暑くて仕事に集中できないという声が届きました。FM担当者が最初に行うこととして、もっとも適切なのはどれでしょう?
① すぐに新しいエアコンへ交換する
② 建物全体の設定温度を一気に下げる
③ いつ、どこで、どのような問題が起きているかを確認する
🐥ぴよまる:暑いなら、エアコンを交換すれば解決しそう!ぼくは①かな。
🐶:正解は、③です。
🐥:えっ、すぐに直し始めないの?
🐔にわのとりさん:急いで対応することが必要な場合もある。しかし原因が分からないまま設備を交換しても、本当の問題が解決するとは限らんのじゃ。
たとえば、日差しが強い場所だけが暑いのかもしれん。人が増えた時間帯だけ暑くなるのかもしれんし、温度センサーや空調設備に不具合がある可能性もある。
まず状況を確かめることが、適切な改善への第一歩なんじゃよ。
FMの業務は「一日の予定表」ではなく循環する
🐥:FMの仕事って、朝に点検して、昼に修理して、夕方に報告するような流れだと思っていたよ。
🐔:もちろん、そのような一日もあるじゃろう。しかし、FMの業務は一日の予定だけでは説明できんのじゃ。
建物や設備を動かす毎日の仕事もあれば、数年先を考える計画もある。それらをつなぐ基本的な流れは、次のように考えられるぞ。
- 目的を確認する
- 現状を把握する
- 計画を立てる
- 計画を実行する
- 結果を評価する
- 改善して次の計画につなげる
🐶:実際のFMでは、これらの業務が一度で終わるのではなく、何度も繰り返されます。
国際規格のISO 41001でも、FMは組織の目的を支え、関係者の要求を継続的に満たしていくためのマネジメントシステムとして位置づけられています。
🐥:ぐるっと回って、また次の計画につながるんだね。
🐔:そうじゃ。前に学んだPDCAサイクルも、この考え方を整理する方法の一つじゃよ。
FMの業務は、施設を動かしながら、確かめ、少しずつ良くしていく循環です。
日常業務と計画業務はどうつながる?
🐥:毎日の点検と、何年も先の計画は、別々の仕事じゃないの?
🐶:別の仕事に見えますが、実はつながっています。FMには、大きく分けて二つの時間軸があります。
毎日を支える「運営・維持」
建物や設備を安全で使いやすい状態に保つため、日常的に行う仕事です。
たとえば、次のような業務があります。
- 建物や設備の運転・監視
- 日常点検や法定点検の管理
- 清掃や衛生管理
- 警備や入退館管理
- 廃棄物の管理
- 故障や不具合への対応
- 利用者からの相談・要望への対応
- 災害や事故に備えた訓練・準備
😸うちのねこさん:空調も照明も、いつも自然に使えているニャ。やはり、オレを迎える館として日々整えられているんだニャ。
🐥:みんなが使う建物だからだと思うよ。
🐔:設備が問題なく動いていると、その仕事は目立ちにくいものじゃ。しかし、何も起きていないように見える毎日も、点検や管理によって支えられておるんじゃよ。
未来に備える「計画・改善」
毎日の運営から集まった情報を使い、施設の将来を考える仕事です。
たとえば、次のような業務があります。
- 建物や設備の修繕・更新計画
- 予算やコストの管理
- エネルギー使用量の分析と省エネ計画
- オフィスや施設のレイアウト変更
- 利用率や利用者満足度の調査
- 防災・事業継続計画の見直し
- 建物の改修、統合、移転などの検討
🐥:設備が壊れてから交換するんじゃないの?
🐔:故障してから直す方法もあるが、設備の状態や重要性を確認し、故障する前に修繕や更新を計画する方法もある。
すべてを早く交換すればよいわけでもない。安全性、費用、設備の寿命、事業への影響などを比べて、優先順位を決めることが大切なんじゃ。
🐶:毎日の点検記録や故障履歴、利用者から届いた声は、将来の計画を立てるための大切な材料になります。
つまり、日常業務で集めた情報が計画につながり、その計画が再び日常の運営を支えるのです。
空調の困りごとをFMの流れで見てみよう
🐥:最初のクイズに出てきた、暑いオフィスはどうやって改善するの?
🐶:FMの業務の流れに沿って見てみましょう。
1.目的を確認する
まず、何のために改善するのかを確認します。
今回の目的は、単に室温を下げることではありません。働く人が健康で快適に過ごせる環境を整えながら、エネルギーの無駄も抑えることです。
2.現状を把握する
次に、問題が起きている場所や時間を調べます。
- どの場所が暑いのか
- 何時ごろ暑くなるのか
- 室温や湿度はどのくらいか
- その場所を何人が利用しているか
- 空調設備は正常に動いているか
- 窓からの日差しや機器の発熱が影響していないか
🐥:暑いという一言の中にも、調べることがたくさんあるんだね。
3.計画を立てる
調査結果をもとに、対策を考えます。
空調の設定変更、設備の修理、フィルター清掃、ブラインドの設置、座席配置の変更など、複数の方法を比べます。
費用や効果、実施に必要な時間なども検討し、優先順位を決めます。
4.実行する
決めた対策を実施します。
設備工事が必要な場合は、施設の利用に大きな影響が出ないように、関係部署や専門業者と日程を調整します。
🐔:FM担当者がすべての作業を自分で行うとは限らんぞ。専門業者へ依頼し、作業の進み具合や安全、品質を管理することも大切な仕事じゃ。
5.結果を評価する
対策後に、問題が改善されたかを確認します。
- 室温や湿度は改善したか
- 利用者からの不満は減ったか
- エネルギー使用量は増えすぎていないか
- 別の場所に新たな問題が起きていないか
6.改善して次につなげる
十分な効果が出なければ、原因や対策をもう一度見直します。
うまくいった方法についても、記録を残し、ほかの場所や次の計画に活用します。
😸:なるほどニャ。オレが涼しい場所を探して一日何度も移動するのも、現状調査ということかニャ。
🐶:ねこさんの場合は、かなり精度の高い温度センサーかもしれませんね。
😸:ついにオレの才能が施設運営に認められたニャ。
FMは一人ですべてを行う仕事ではない
🐥:これだけたくさんの仕事を、ファシリティマネジャーが一人で行うの?
🐔:いや、FMはさまざまな人と協力して進める仕事じゃ。
経営者、施設の利用者、総務・人事・情報システムなどの社内部門、建築・設備の専門家、清掃・警備・保守を担当する事業者など、多くの関係者が関わる。
🐶:ファシリティマネジャーには、それぞれの情報や要望を整理し、組織の目的につなげていく役割があります。
何を自社で行い、何を外部の専門事業者へ依頼するかも、組織や施設によって異なります。
🐥:自分で全部直す人というより、みんなの力をつないで施設を良くしていく人なんだね。
🐔:その理解が大切じゃ。FMは、建物だけを見る仕事ではない。人、情報、お金、時間、専門技術を結びつけながら、施設を経営に役立てていく仕事なんじゃよ。
今日のまとめ
🐶:今回のポイントを整理しましょう。
- FMの業務は、日常点検や修理だけではない
- 目的の確認、現状把握、計画、実行、評価、改善という流れで進む
- 日常の運営・維持から得た情報が、将来の修繕・更新計画につながる
- 実施後は効果を評価し、次の改善へつなげる
- FM担当者は、社内外の関係者や専門家と協力して業務を進める
🐥:FMって、建物を見張る仕事じゃなくて、情報を集めながら未来まで整えていく仕事なんだね。
😸:今日の快適と、明日の供物を同時に考える仕事ニャ。
🐥:供物の計画は入っていないと思うよ。
🐔:小さな異変に気づく日常の仕事と、先を見通す計画。その二つがつながることで、施設は少しずつ良くなっていくんじゃよ。
次回予告:FMの「目的」と「目標」はどう違う?
安全で快適な施設をつくるという目的を、実際の行動につなげるには、具体的な目標が必要です。
次回は、FMにおける目的と目標の違い、そして成果をどのように確かめるのかを見ていきます。
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- FMと法律の関係とは?やさしく学ぶFM入門|第1章④
参考資料
- 公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会(JFMA)|調査研究
- JFMA|運営維持手法研究部会
- ISO 41001:2018|Facility management — Management systems
※FMの業務範囲や担当体制は、組織の目的、施設の種類・規模、契約内容などによって異なります。本記事では、初学者が全体像をつかみやすいよう、代表的な流れに整理しています。