プロジェクト管理とは、FM戦略や中長期実行計画で決めた方向を、具体的な取り組みとして実行へ移す仕事です。
第6章では、経営の目的からFM戦略を考え、中長期実行計画によって未来への道筋を描きました。
けれど、地図を描いただけでは、建物や職場は変わりません。計画を一つひとつのプロジェクトへ落とし込み、人・予算・時間をつなぎながら動かしていく必要があります。
第7章では、計画を現実へ変えるためのプロジェクト管理について、ぴよまるたちと一緒に学んでいきましょう。
🐥ぴよまる:未来への地図はできたけど、ここから本当に歩き始めるんだね。
🐔にわのとりさん:そうじゃ。第7章では、描いた未来を実際に動かす方法を学ぶのじゃよ。
🧭 クイズ:プロジェクト管理は何をする仕事?
FMにおけるプロジェクト管理の説明として、最も適切なものはどれでしょうか。
- A.建物の工事が予定どおり進んでいるかだけを確認する
- B.専門的な仕事はすべて外部へ任せ、完成するまで待つ
- C.計画にもとづいて関係者をつなぎ、品質・予算・納期などを管理し、評価まで行う
🐥:工事の進み具合を見るAかな。でも、プロジェクトって工事だけじゃなかったような……。
😸:オレはBを推すニャ。待っている間に、いつの間にか完成している。実に効率的ニャ。
🐶うらのいぬさん:正解はCです。
プロジェクト管理では、目的や目標を確かめ、必要な人や情報をつなぎ、品質・予算・納期などを管理します。完成したら終わりではなく、結果を評価して、次の改善や計画へつなげるところまでが大切です。
Aは工事を伴うプロジェクトの一部だけを表しています。Bのように外部へ委託する場合でも、方針を決め、結果を確認する責任まで外部へ渡すわけではありません。
🏁 プロジェクトとは何だろう?
プロジェクトとは、一般に、決められた目的を達成するために、一定の期間を設けて行う取り組みです。
日常的に繰り返す運営維持の仕事とは異なり、プロジェクトには達成したい目的と、始まりから終わりまでの区切りがあります。
| 仕事の種類 | 特徴 |
|---|---|
| 日常の運営維持 | 施設や設備を、安全で使いやすい状態に保つため、継続して行う |
| プロジェクト | 決められた目的を実現するため、期間や条件を定めて行う |
たとえば、空調設備の日常点検は運営維持の仕事です。一方、老朽化した空調設備を新しい設備へ更新する取り組みは、プロジェクトとして進めることがあります。
🐥:ずっと続ける仕事と、ゴールを決めて取り組む仕事があるんだね。
🐔:うむ。ただし、二つは切り離されているわけではないぞ。プロジェクトで新しい設備を導入したあとは、運営維持の仕事へ引き継がれるのじゃ。
🏢 FMにはどのようなプロジェクトがある?
FMのプロジェクトは、建物の新築や改修だけではありません。
公式ガイドでは、中長期実行計画にもとづいて進めるプロジェクトとして、次のような例が挙げられています。
| プロジェクトの例 | 主な内容 |
|---|---|
| ワークプレイスづくり | 働き方に合わせて、執務空間や会議室などを整える |
| 不動産の賃貸借 | 事業に必要な建物や土地を借りる、または貸す |
| 不動産の取得 | 必要な土地や建物を購入する |
| 建物建設 | 経営目的に合う新しい建物を計画し、建設する |
| 大規模改修 | 老朽化への対応や機能向上のため、大きな改修を行う |
このほかにも、オフィス移転、施設の統合、設備の更新など、組織の目的に合わせてさまざまなプロジェクトが考えられます。
大切なのは、「新しくすること」自体を目的にしないことです。
働き方を変えたい、事業を成長させたい、安全性を高めたい、施設にかかる負担を見直したい――。そのような経営上の目的を、施設・空間・設備などの変化へつなげるのがFMのプロジェクトです。
😸:建物を変えることが目的じゃなくて、その先で何を実現したいかが大事なんだニャ。
🐥:第6章で決めた方向を、具体的な行動に変えるんだね。
💼 プロジェクト管理とは何をする仕事?
プロジェクト管理では、最初にプロジェクトの基本方針を整理し、それにもとづいて具体的な要求条件を作ります。
そして、関係者や専門家と連携しながら、主に次の要素を管理します。
- 品質:求めている機能や性能が確保されているか
- 予算:承認された範囲で適切に費用が使われているか
- 納期:必要な時期までに完了できるよう進んでいるか
- リスク:起こり得る問題に備え、影響を小さくできるか
- 変更:途中で条件が変わったとき、影響を確認して対応できるか
プロジェクトでは、多くの人が関わります。
経営者、利用者、関係部門、設計者や施工会社、コンサルタントなどは、それぞれ異なる立場や専門性を持っています。すべての希望が、そのまま同時に実現できるとは限りません。
そこで、目的を見失わないように情報を整理し、必要な判断を経営者へ示しながら、プロジェクト全体を前へ進めます。
🐥:みんなの言うことを、全部そのまま採用するわけじゃないんだね。
🐶:はい。目的、必要性、予算、期限、実現可能性などを確認して、プロジェクトとして進む道を整えます。
👥 ファシリティマネジャーは人と情報をつなぐ
ファシリティマネジャーは、プロジェクトにおいて、経営者から必要な権限を受け、承認された目的・目標にもとづいて計画と実施を進めます。
ただし、すべてを一人で決めたり、すべての専門業務を自ら行ったりするわけではありません。
主な役割は、次のとおりです。
- 経営戦略や事業上の目的を理解する
- 利用者や関係部門から必要な情報を集める
- 異なる要望や条件を整理する
- 専門家やサービス提供者と連携する
- 品質・予算・納期などの状況を把握する
- 経営者の判断に必要な情報を分かりやすく示す
- 変更や問題が起きたとき、関係者と調整する
ファシリティマネジャーは、何でも一人で決める「総司令官」というより、プロジェクト全体を見渡し、人と情報をつなぐ推進役です。
🐔:専門家に任せる仕事があっても、プロジェクトの目的まで人任せにはできんのじゃ。
😸:船をつくる人、荷物を運ぶ人、進む方向を決める人。それぞれの仕事をつながないと、船は出発できないニャ。
🐥:ファシリティマネジャーは、みんなが同じ方向へ進めるようにするんだね。
🌱 建物だけでなく、働き方や組織の変化も支える
FMのプロジェクトでは、施設や設備を変えるだけでなく、その変化を通じて経営上の課題に取り組みます。
たとえば、ワークプレイスを見直すプロジェクトでは、机や会議室の配置を変えるだけでは十分ではありません。
- どのような働き方を目指すのか
- 部門同士がどのように連携するのか
- 利用者が新しい環境を使いこなせるか
- 仕事の進め方にどのような変化が必要か
といった点も、一緒に考える必要があります。
公式ガイドでは、ファシリティマネジャーには、ファシリティ以外の要素とも結びつけながら、ワークスタイルや業務プロセス、意識、マネジメントなどの改革を支援する役割があると説明されています。
施設の変化は、人の働き方や組織の動きにも影響します。そのため、プロジェクト管理では「何をつくるか」だけでなく、「その変化によって何を実現するか」を考えることが重要です。
🔄 プロジェクト管理は完成したら終わりではない
プロジェクトによって施設や設備が完成したら、日常の運営維持へ引き継ぎます。
さらに、プロジェクトの結果を評価し、うまくいった点や改善すべき点を整理します。
- 予算は適切だったか
- 求めた条件は実現できたか
- 予定した時期に完了できたか
- 利用者の満足度は向上したか
こうして得られた情報は、施設の改善や次のプロジェクトだけでなく、FM戦略や中長期実行計画の見直しにも活用されます。
プロジェクトには明確な終わりがあります。しかし、そこで得た経験は、次の計画をよりよくするための材料になります。
🐥:完成したところがゴールだけど、そこで分かったことは、次の地図に書き込めるんだね。
🐔:そのとおりじゃ。計画を実行し、結果を確かめ、次の計画へ返す。そうしてFMは少しずつ前へ進んでいくのじゃよ。
📚 ポイントまとめ
- プロジェクトは、目的を達成するために期間や条件を定めて行う取り組み
- FMのプロジェクトには、ワークプレイス、不動産賃貸借、不動産取得、建物建設、大規模改修などがある
- プロジェクト管理では、品質・予算・納期・リスク・変更などを管理する
- ファシリティマネジャーは、経営者、利用者、関係部門、専門家をつなぐ推進役
- 外部へ委託しても、目的を定め、結果を評価する責任は組織に残る
- 完了後は運営維持へ引き継ぎ、評価結果を次のFM戦略や計画へつなげる
🌤️ 今日のまとめ
プロジェクト管理は、決められた計画を機械的に進める仕事ではありません。
目指す未来を確かめ、異なる立場の人たちをつなぎ、変化へ対応しながら、計画を現実へ近づけていく仕事です。
第6章で描いた未来地図は、第7章で動き始めました。
一人では動かせない大きな計画も、目的を共有し、人と情報を丁寧につなげれば、少しずつ形になっていきます。
🐥:プロジェクト管理って、強い人が一人で引っぱることじゃないんだね。
😸:みんなが別々の方向へ歩かないように、道と合図を整える仕事とも言えそうニャ。
🐶:そして、歩いた結果を次の地図へ残すところまでが大切です。
🐔:未来は、計画しただけでは動かん。人が考え、人をつなぎ、一歩ずつ実行することで、初めて形になるのじゃ。
🎮 次回予告
次回は、第7章②「プロジェクト管理のプロセスとは?計画から評価までの道筋」です。
プロジェクトは、どのような順番で進むのでしょうか。
計画段階と実施段階、そして節目ごとに必要となる経営者の承認について、全体の流れを見ていきます。
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📖 参考資料・関連情報
- 『公式ガイド ファシリティマネジメント』第7章「プロジェクト管理」
- 7.1「プロジェクト管理とは」(130~131ページ)
- 7.1 a「プロジェクト管理の概要」
- 7.1 b「ファシリティマネジャーの役割」
この記事では、公式ガイドに示されたプロジェクト管理の概要とファシリティマネジャーの役割をもとに、FM戦略・中長期実行計画から個別プロジェクトへつながる流れを、初めて学ぶ人向けに整理しました。
プロジェクトの標準プロセス、経営者の承認、基本方針、実態把握、要求条件、予算、体制、実施、完了時評価については、第7章②以降で順に詳しく扱います。
- 公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会
日本におけるFMの普及と、ファシリティマネジャーの育成を行っている公式団体です。同協会もFMを経営基盤に関わる活動として扱っています。