前回は、ファシリティマネジメント(FM)が、建物の修理や点検だけではなく、組織の目的に合わせて施設や環境を活用する考え方だと学びました。
では、FMは何を目指し、そのためにどんな働きをするのでしょうか。
今回は、少し似ている「目的」と「機能」という二つの言葉を整理します。
- 目的:何を実現するためにFMを行うのか
- 機能:その目的を実現するために、FMが何をするのか
まずは、身近な職場を思い浮かべながら、3択クイズに挑戦してみましょう。
まずは3択クイズ
【問題】FMの目的として、最も適切なのはどれでしょう?
- すべての建物を、できるだけ長く残すこと
- 施設にかかる費用を、できるだけ安くすること
- 人が活動しやすい環境を整え、組織の目標達成を支えること
少し考えてから、ぴよまると一緒に答えを選んでみましょう。
🐥ぴよまる:ぼくは「2番」かな。建物にかかるお金を減らせたら、会社の役に立ちそうだもん。
🐶うらのいぬさん:正解は、3番です。費用を適切に管理することも大切ですが、安くすることだけがFMの目的ではありません。判断のポイントは、人の活動と組織の目標の両方を支えているかです。
では、なぜ3番が正解なのでしょうか。
FMの目的は、人の活動と組織の目標を支えること
🐥:建物を管理するのに、どうして組織の目標まで考えるの?
🐔にわのとりさん:建物や設備は、そこにあるだけでは役割を果たせんからじゃ。人が使い、仕事や活動を進めることで、初めて価値が生まれるんじゃよ。
オフィスは、仕事をするために使われます。
学校は、学ぶための場所です。病院は診療や治療を行い、店舗は商品やサービスを届けます。
つまり、建物や設備は、組織の本来の活動を支える土台です。
国際規格ISO 41011では、FMの目的を、人々の生活の質と、組織の中核となる活動の生産性を高めることにつながるものとして整理しています。
ここでいう「生産性」は、ただ仕事を急がせるという意味ではありません。
安全に働けること、必要な場所や設備を使えること、無駄な移動や待ち時間を減らすことなども、組織の活動を支える大切な要素です。
FMの目的は、大きく三つの方向から考えられます。
人を支える
安全で健康的に過ごせること、施設を使いやすいこと、仕事や学習に集中しやすいことを目指します。
組織を支える
施設や設備を有効に活用し、組織の目標達成や事業の継続を支えます。費用を把握し、限られた資源を適切に配分することも含まれます。
社会を支える
省エネルギー、防災、環境への配慮、地域との共生など、施設が社会に与える影響にも目を向けます。
😸うちのねこさん:つまり、オレが快適で、飼い主さんも暮らしやすく、地球にもやさしい部屋が理想ということだニャ。
🐔:ねこさん中心なのが少し気になるが、三つの視点を一緒に考えるという意味では近いのう。
ただし、この三つは、いつでも同じ方向を向くとは限りません。
利用者の快適性を高めようとして空調を強くすれば、エネルギー使用量や費用が増えることがあります。
反対に、費用を減らすことだけを優先すると、安全性や働きやすさを損なうかもしれません。
FMでは、どれか一つだけを最大にするのではなく、組織の目的や施設の条件に合わせて、全体のバランスを考えます。
FMの機能は、目的を実現するための道筋
🐥:目指すところは分かったけど、FMは実際に何をするの?
🐔:そこで出てくるのが「機能」じゃ。目的地を決めただけでは、そこへは着けん。状況を調べ、計画し、実行し、結果を確かめる必要があるんじゃよ。
この記事では、FMの働きを次の四つの流れで見てみましょう。
1.現状を把握する
まず、施設の状態や使われ方を調べます。
建物や設備の劣化状況だけでなく、利用人数、スペースの使用状況、維持費、エネルギー使用量、利用者からの要望なども確認します。
2.方針と計画を立てる
集めた情報をもとに、どの課題から取り組むのかを決めます。
修理するのか、設備を更新するのか、部屋の使い方を変えるのか。予算や実施時期も含めて計画します。
3.計画を実行し、施設を運用する
工事や移転、設備更新などのプロジェクトを進めます。
完成した後も、点検、清掃、警備、修繕、エネルギー管理などを通して、施設を安全に使える状態に保ちます。
4.結果を評価し、改善する
計画どおりの効果が得られたかを確認します。
費用だけでなく、使いやすさ、安全性、利用者の満足度、エネルギー使用量など、目的に合った指標で評価します。
十分な効果が得られなければ、原因を調べ、次の改善につなげます。
🐶:FMには、計画をつくる仕事、工事や移転を進める仕事、日常の運用を支える仕事、結果を評価する仕事があります。組織や施設によって、担当する範囲は異なります。
会議室不足をFMの流れで考えてみよう
たとえば、職場で「会議室が足りない」という声が上がったとします。
FMでは、すぐに会議室を増設するとは限りません。
まず、予約状況や実際の利用時間を調べます。
すると、次のようなことが分かるかもしれません。
- 大きな会議室を少人数で使っている
- 予約だけされて、実際には使われていない
- Web会議に必要な設備のある部屋へ利用が集中している
- 会議室の場所や予約方法が分かりにくい
原因が分かれば、部屋を増やさなくても、設備の追加や予約方法の見直しで改善できる可能性があります。
対策を実施した後は、本当に予約が取りやすくなったか、利用者の不満が減ったかを確認します。
🐥:建物を増やす前に、困っている理由を探すんだね。
🐔:そうじゃ。目的は「会議室を増やすこと」ではない。「必要な人が、必要なときに打ち合わせできる環境をつくること」なんじゃよ。
ここが、FMの目的と機能を見分ける大切なポイントです。
- 目的:必要な打ち合わせができる環境をつくる
- 機能:利用状況を調べ、計画し、対策を実行し、効果を確かめる
目的を見失うと、「会議室を増やすこと」そのものがゴールになってしまいます。
FMは、建物や設備という手段を使って、その先にある人や組織の活動を支えます。
今日のまとめ
冒頭のクイズの正解は、
3.人が活動しやすい環境を整え、組織の目標達成を支えること
でした。
FMの目的は、建物を残すことや、費用を減らすことだけではありません。
人が安全で活動しやすい環境を整え、組織の目標達成を支え、社会や環境にも配慮することです。
そして、その目的を実現するために、FMには次のような機能があります。
- 現状を把握する
- 方針と計画を立てる
- 計画を実行し、施設を運用する
- 結果を評価し、改善する
覚えておきたいのは、目的は「何のために」、機能は「そのために何をするか」という違いです。
建物や設備は、それ自体がゴールではありません。
その場所で誰が何をするのか。その活動を、どのように支えるのか。
FMは、建物の向こう側にいる人と、組織の未来を考える仕事なのです。
次回予告:FMはいつ、どこで生まれた?
次回は、ファシリティマネジメントがどのような背景から生まれ、日本へ広がっていったのかをたどります。
参考資料・関連情報
- 公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会
日本におけるFMの普及と、ファシリティマネジャーの育成を行っている公式団体です。 - ISO 41011:2024 — Facility management — Vocabulary
FMの用語を整理した国際規格です。FMの目的を考えるうえで基礎となる定義を確認できます。
※本記事は、FMの基本的な考え方を初心者向けに整理したものです。資格試験の出題範囲や用語の定義については、受験年度の公式案内・公式教材も併せてご確認ください。