FMの8ユニットとは、幅広いファシリティマネジメントの仕事を、役割ごとに整理した8つのまとまりです。
前回は、FMの標準業務が「統括マネジメント」「FM戦略・計画」「プロジェクト管理/運営維持」「評価」「改善」の5つで構成されていることを学びました。
今回は、その5つの標準業務をさらに詳しく分けた、8つのユニットを見ていきましょう。
🧩 FMの8ユニットは、8つの部署のこと?
🐥ぴよまる:前回は、FMの標準業務が5つあると習ったよね。今度は8つに増えるの?
🐔にわのとりさん:仕事が増えたわけではないぞ。5つの標準業務を、実際の役割が見えやすいように、さらに詳しく分けたものなのじゃ。
ここでクイズです。
FMの8ユニットについて、最も適切な説明はどれでしょうか?
- A.8人の専門家でつくるFMチーム
- B.FMの標準業務を、役割ごとに整理した8つのまとまり
- C.建物を8つの区域に分けて管理する方法
🐥:建物を8つに切り分ける話ではないよね。ぼくはBだと思うな。
😸うちのねこさん:オレ専用の食事係、寝床係、室温係……8人の専門家をそろえるAが理想的だニャ。
🐶うらのいぬさん:正解は、B.FMの標準業務を、役割ごとに整理した8つのまとまりです。
ここでいう「ユニット」は、部署や専門チームの名前とは限りません。FMの仕事を機能や役割によって分けたものです。
組織によっては一つの部署が複数のユニットを担当することもあれば、社内外の複数の担当者が一つのユニットに関わることもあります。
🗺️ FMの8ユニットを役割ごとに見てみよう
FMの8ユニットは、次のように整理されています。
- 統括マネジメント
- FM戦略
- 中長期実行計画
- プロジェクト管理
- 運用・サービス
- 維持保全
- 評価
- 改善
🐥:名前だけ見ると、少し難しそうだなあ。
🐔:大丈夫じゃ。それぞれを「何をする仕事なのか」に置き換えて見てみよう。
1.全体をつなぐ「統括マネジメント」
統括マネジメントは、FM全体を見渡し、各業務が円滑に進むようにまとめる役割です。
FMを担当する組織や責任の範囲を整え、予算、情報、標準、規程などを管理します。また、ほかの7ユニットがばらばらに動かないよう、全体をつなぎます。
🐥:船の行き先を決めるだけでなく、乗組員や道具も整えて、航海全体を支える船長みたいだね。
2.進む方向を決める「FM戦略」
FM戦略では、経営戦略やFM業務の評価結果を踏まえ、FMの目標と、それを実現するための施策を考えます。
例えば、「働き方に合ったオフィスをつくる」「施設にかかる費用を適正にする」「環境負荷を減らす」といった方向性を定めます。
3.道筋を具体化する「中長期実行計画」
中長期実行計画では、FM戦略を実現するために、数年程度の期間を見通して具体的な計画を立てます。
主に、次のような計画をまとめます。
- 必要な施設や面積を考える供給計画
- 求める品質を考える品質計画
- 必要な費用を考える財務計画
計画には、何を、いつ、どのくらいの費用で行うのかを落とし込み、経営者の承認を得ます。
🐥:FM戦略が「どこへ向かうか」で、中長期実行計画が「どうやって向かうか」なんだね。
4.期間のある仕事を進める「プロジェクト管理」
プロジェクト管理は、中長期実行計画にもとづいて、一定の目的と期間を持つ仕事を具体的に進める役割です。
例えば、次のような仕事があります。
- オフィスづくり
- 建物の新築や増改築
- 大規模改修
- 不動産の取得や賃借
- 移転やレイアウト変更
求める品質、予算、工期などの条件を整理し、計画どおりに完成するよう管理します。
プロジェクトが完了したあとは、その成果が「運用・サービス」や「維持保全」へ引き継がれます。
5.日常の利用を支える「運用・サービス」
運用・サービスは、利用者が施設を快適に使い、高いパフォーマンスを発揮できるように、日常の環境やサービスを整える役割です。
例えば、清掃、警備、受付、会議室の運用、廃棄物処理、利用者への案内などが含まれます。
施設そのものを管理するだけでなく、そこで働く人や利用する人にとって、使いやすい環境をつくる仕事です。
6.施設を長く使えるようにする「維持保全」
維持保全は、建物や設備の性能・機能を保ち、必要に応じて修繕や更新を行う役割です。
点検や保守によって不具合を防ぎ、施設を安全に長く使える状態に保ちます。また、施設の長寿命化やライフサイクルコストの低減にもつなげます。
🐥:第3章で学んだ予防保全も、ここにつながるんだね。
🐔:そのとおりじゃ。これまで学んだ建物の一生が、第4章の業務の地図に重なってきたのう。
7.現在地を確かめる「評価」
評価は、FMの現状を、主に次の3つの視点から把握する役割です。
- 品質:施設やサービスが求められる状態になっているか
- 財務:コストや施設資産、投資が適切か
- 供給:必要な施設や面積、サービスが適切に用意されているか
目標にどこまで到達したのか、どのような問題が残っているのかを、数値や調査結果などから明らかにします。
8.次の一手を考える「改善」
改善は、評価によって明らかになった未達成の課題や、新しく生まれた課題をもとに、今後の改善方針を考える役割です。
改善方針は、次のFM戦略や計画に反映されます。経営上の重要な課題に関わる場合は、経営戦略へ提案することもあります。
こうして一度きりで終わらず、次のサイクルへ進んでいきます。
🔄 FMの8ユニットとPDCAのつながり
🐥:8つの仕事は、それぞれ別々に動くわけではないんだね。
🐔:うむ。前回学んだPDCAの中に置いてみると、つながりが見えやすくなるぞ。
| PDCAと全体管理 | 対応するユニット | 主な役割 |
|---|---|---|
| 全体を統括 | ①統括マネジメント | FM全体をまとめ、各業務をつなぐ |
| Plan | ②FM戦略・③中長期実行計画 | 目標と実行への道筋を決める |
| Do | ④プロジェクト管理・⑤運用/サービス・⑥維持保全 | 計画を具体的な仕事として実行する |
| Check | ⑦評価 | 結果と課題を確かめる |
| Act | ⑧改善 | 改善方針を決め、次の計画へつなぐ |
統括マネジメントは、PDCAの一部分だけを担当するのではありません。サイクル全体の中心にいて、各ユニットが連携できるように支えます。
🐥:8つの箱を暗記するより、どこからどこへ仕事が流れるのかを見るほうが分かりやすいね。
🐶:はい。一つのユニットだけでFMが完成するのではなく、前の仕事を受け取り、次の仕事へ渡していくことが大切です。
😸:オレの快適な昼寝も、計画から評価まで多くの仕事に支えられているニャ。
🐔:ねこさんの昼寝がFMの目標かどうかは、次回じっくり考えることにしようかの。
📚 ポイントまとめ
- FMの8ユニットは、標準業務を役割ごとに詳しく整理したもの
- ユニットは、8つの部署や専門チームを意味するとは限らない
- 「FM戦略」と「中長期実行計画」がPlanを担う
- 「プロジェクト管理」「運用・サービス」「維持保全」がDoを担う
- 「評価」がCheck、「改善」がActに当たる
- 「統括マネジメント」がFM全体をつなぎ、サイクルを支える
🌱 今日のまとめ
FMの8ユニットは、試験のために8つの名前を覚えるだけの分類ではありません。
経営の方向を受けて戦略と計画を立て、それを実行し、結果を評価して改善する。その仕事の流れを、役割ごとに見えるようにした地図です。
8つのユニットの位置関係が分かると、自分が担当している仕事がどこにあり、前後のどの仕事につながっているのかも見えやすくなります。
次回は、このサイクルが何を目指して動いているのか、FMの「品質・財務・供給」という3つの目標を見ていきましょう。
🎮 次回予告:第4章③
FMの目標とは?品質・財務・供給の3つを学ぼう
🔗 関連記事
- FMの標準業務とは?5つの仕事をPDCAでつなぐ|第4章①
- FMの目的と機能とは?やさしく学ぶFM入門|第1章②
- FMの業務はどう進む?やさしく学ぶFM入門|第1章⑤
- 建物の運用管理とは?FMが支える安全・快適な日常|第3章②
- 建物の予防保全とは?故障を未然に防ぐFM|第3章③
📖 参考資料・関連情報
- 『公式ガイド ファシリティマネジメント』第4章「FMの体系」4.1「FMの標準業務」
- 同 4.1.2「FMの標準業務の8ユニット」
- 公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会
日本におけるFMの普及と、ファシリティマネジャーの育成を行っている公式団体です。同協会もFMを経営基盤に関わる活動として扱っています。