統括マネジメントは、ファシリティマネジメントに関わるさまざまな仕事をつなぎ、FM全体を動かす司令塔です。
ファシリティマネジメントには、戦略を立てる仕事、建物や設備を整える仕事、サービスを提供する仕事など、さまざまな業務があります。
では、それぞれの仕事が別々の方向へ進まないように、全体をつないでいるのは誰なのでしょうか。
今回は、経営の目的に向かってFM全体を導く、統括マネジメントの役割を学びます。
🎬 FM全体を動かす司令塔はどれ?
🐥ぴよまる:前の章で、統括マネジメントはPDCA全体を支える役割だと習ったよね。実際には、どんな仕事をするの?
🐔にわのとりさん:うむ。まずはクイズで考えてみようかのう。
Q.統括マネジメントの役割として、最も適切なものはどれでしょう?
- A.建物の修理だけを専門に行う
- B.FMに関わる業務をつなぎ、全体最適へ導く
- C.いちばん居心地のよい場所を選び、お昼寝する
😸うちのねこさん:Cニャ。快適な場所を見つけるのは、オレに選ばれた者としての大切な任務ニャ。
🐥:ねこさんには重要そうだけど、会社全体の仕事ではないような……。ぼくはBかな?
🐶うらのいぬさん:正解はBです。
統括マネジメントは、FMに関わるさまざまな業務をまとめ、ファシリティ全体を経営に役立つ方向へ導く仕事です。
建物の修理だけを担当する仕事でも、一つの施設だけを見る仕事でもありません。組織、計画、予算、情報、ルールなどを横につなぎ、FM全体が一つの方向へ進むように支えます。
🧭 統括マネジメントとは?
統括マネジメントとは、経営資源であるファシリティの全体像を把握し、総合的な経営活動としてFMを進めるための業務です。
土地、建物、設備、備品、ワークプレイス、サービスなどは、それぞれ別々に存在しているわけではありません。
たとえば、働き方が変われば、必要なオフィス面積も変わります。オフィスを移転すれば、費用だけでなく、設備、契約、働く人へのサービス、データの更新などにも影響が広がります。
こうした関係を見渡し、部分ごとの都合ではなく、会社全体にとってよりよい状態へ導くのが統括マネジメントです。
🐥:一つの建物を管理するだけではなく、いろいろな仕事のつながりを見るんだね。
🐔:そのとおりじゃ。目の前の建物だけでなく、経営の目的や将来の変化まで見ながら進む必要があるのじゃよ。
🎯 なぜ「司令塔」が必要なの?
FMの仕事には、戦略・計画、プロジェクト管理、運用・サービス、維持保全、評価、改善などがあります。
しかし、それぞれの担当者が自分の仕事だけを見ていると、組織全体としては不都合が起こることがあります。
たとえば、ある部署が費用だけを優先して設備の更新を先送りすると、故障の増加やサービスの低下を招くかもしれません。反対に、高品質を求めすぎれば、必要以上に費用が膨らむこともあります。
そこで統括マネジメントが、品質・財務・供給のバランスを見ながら、各業務をつなぎます。
統括マネジメントは、一人ですべての仕事をする「何でも屋」ではありません。関係する人や部門が同じ目的に向かって動けるように、全体を整える司令塔なのです。
🧩 統括マネジメントを支える5つの仕事
公式ガイドでは、統括マネジメントの仕事を、次の5つに整理しています。
1.権限と責任をもつFM組織体制の構築
誰が何を決め、誰が責任をもつのかを明らかにし、FMを実行できる組織をつくります。
権限がなければ、必要な改善に気づいても動き出せません。責任の所在が曖昧であれば、判断が遅れたり、仕事の抜け落ちが起きたりします。
2.各業務を統括し、PDCAを回すFM組織の運営
FM戦略・計画、プロジェクト管理、運営維持、評価、改善といった業務をつなぎ、PDCAを回します。
計画を実行して終わりではなく、結果を評価し、見つかった課題を次の計画へつなげます。
3.FMの財務管理
FMに必要な予算を立て、実績を確認し、ファシリティコストや施設資産を管理します。
費用を削ることだけが目的ではありません。経営に必要な効果を得るために、限られたお金をどこへ、どのように使うかを考えます。
4.一元的なデータ管理
建物、設備、面積、利用状況、コスト、修繕履歴など、FMに関する情報をまとめて管理し、必要な判断に活用します。
古い情報や部門ごとに食い違う情報では、正しい判断ができません。FMのデータは、司令塔が現在地を知るための地図になります。
5.標準と規程の策定・運用
仕事の進め方や判断の基準となる、標準や規程を整えます。
一定の品質を保ち、業務を効率よく進めるために必要ですが、一度決めたら終わりではありません。環境や働き方の変化に合わせて、定期的に見直すことも大切です。
🐥:組織をつくるだけじゃないんだ。お金もデータもルールも、全部つながっているんだね。
🐶:はい。この5つがそろうことで、FMの各業務を継続的に動かせるようになります。
😸:オレの食事の時間、寝床の位置、おやつの在庫も、一元管理すると完璧ニャ。
🐔:ねこさんの暮らしではなく、まずは会社のファシリティからじゃな。
🔄 第4章の「統括マネジメント」と何が違うの?
第4章では、統括マネジメントをFMの標準業務の一つとして学びました。
そこでは、統括マネジメントがPDCAの一段階ではなく、FM全体をつなぎ、サイクルを動かし続ける役割であることを確認しました。
第5章では、その司令塔が実際に何をするのかを詳しく見ていきます。
つまり、第4章で見たのはFM全体の地図、第5章で見ていくのは司令塔の部屋の中です。
📚 ポイントまとめ
- 統括マネジメントは、ファシリティ全体を経営に役立つ方向へ導く司令塔
- 一つの建物や一つの業務だけでなく、FM全体のつながりを見る
- 品質・財務・供給のバランスを考え、部分最適ではなく全体最適を目指す
- 統括マネジメントは、一人ですべてを行う仕事ではなく、人や部門をつなぐ仕事
- 統括マネジメントを支えるのは、組織体制、組織運営、財務、データ、標準と規程という5つの仕事
🌱 今日のまとめ
統括マネジメントは、建物や設備を直接管理するだけの仕事ではありません。
FMに関わる人、仕事、お金、情報、ルールをつなぎ、経営の目的に向かって全体を動かす仕事です。
司令塔があるからこそ、FMの各業務はばらばらの点ではなく、一つの道としてつながります。そして、評価と改善を重ねながら、組織は少しずつ、よりよい未来へ進んでいけるのです。
🐥:統括マネジメントは、みんなに命令する人ではなく、みんなが同じ方向へ進めるようにする仕事なんだね。
🐔:うむ。よい司令塔とは、上から号令をかけるだけではない。現在地と目的地を確かめ、進む道をみんなに示す存在なのじゃ。
🎮 次回予告:第5章②「FM組織体制とは?権限と責任を明確にするチームづくり」
統括マネジメントを実行するためには、誰が決め、誰が動き、誰が責任をもつのかを明らかにする必要があります。
次回は、FMを動かすための組織体制について学びましょう。
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📖 参考資料・関連情報
参考資料
- 公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会編『公式ガイド ファシリティマネジメント』
- 第5章「統括マネジメント」
- 5.1「統括マネジメントとは」(86~87ページ)
- 図表5.1.1「FMの統括マネジメント業務」
この記事では、上記の内容をもとに、統括マネジメントの役割と、統括マネジメントを支える5つの業務の全体像を初心者向けに整理しています。
5つの業務の詳しい内容は、公式ガイドの次の箇所で説明されています。
- 5.2「FM組織体制の構築」
- 5.3「FM組織の運営」
- 5.4「FMの財務管理」
- 5.5「一元的なデータ管理」
- 5.6「標準と規程の策定と運用」
これらについては、第5章②以降の記事で順番に取り上げます。
関連情報
- 公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会
日本におけるFMの普及と、ファシリティマネジャーの育成を行っている公式団体です。同協会もFMを経営基盤に関わる活動として扱っています。