FM組織の運営とは?業務をつなぎ学び続ける仕組み|第5章③

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FM組織の運営とは、FMに関わるさまざまな業務をつなぎ、組織全体で継続的な改善を進めることです。

前回は、FM組織に必要な権限と責任、組織体制のつくり方を学びました。しかし、組織はつくっただけでは動きません。

今回は、FMの各業務をどのようにつなぎ、組織そのものをどのように成長させていくのかを見ていきましょう。

⚙️ FM組織を動かすために必要なことは?

🐥ぴよまる:FM組織ができたら、あとはそれぞれの担当者が仕事をすればいいの?

🐔にわのとりさん:それだけでは、仕事がばらばらに進んでしまうかもしれんのう。まずはクイズで考えてみよう。

Q.FM組織を継続的に成長させるために、最も大切なことはどれでしょう?

  • A.各担当者が自分の仕事だけに集中する
  • B.各業務をつなぎ、評価と改善を次の計画へ反映する
  • C.会議のたびに、ねこさんの寝床を増やす

😸うちのねこさん:Cなら、会議に参加する意欲が高まるニャ。

🐥:ねこさんだけの意欲だよね。ぼくはBだと思うな。

🐶うらのいぬさん:正解はBです。

FMには、戦略・計画、プロジェクト管理、運用・サービス、維持保全、評価、改善など、多くの業務があります。

FM組織の運営では、それぞれの仕事を個別に進めるだけでなく、全体を見渡してつなぎ、評価で見つかった課題を改善や次の計画へ反映することが大切です。

🧭 FM組織の運営とは?

FM組織の運営には、大きく二つの役割があります。

  1. FMの各業務を俯瞰して統括する
  2. FM組織を自己評価し、学習・成長を進める

一つ目は、FMの各業務が同じ目的に向かって進むように、全体を見渡して調整することです。

二つ目は、FM組織自身の仕事を振り返り、課題を見つけ、知識や能力を高めながら組織を改善することです。

つまり、仕事を動かすだけでなく、仕事を動かす組織そのものも育てていくのがFM組織の運営です。

🐥:建物や設備を改善するだけではなく、FM組織も自分自身を改善するんだね。

🐔:うむ。よい仕組みを長く動かすには、組織も学び続ける必要があるのじゃ。

🔭 FMの各業務を俯瞰してつなぐ

FMの現場では、さまざまな業務が同時に動いています。

たとえば、運用・サービスの担当者が、利用者から「会議室が足りない」という声を受け取ったとします。

その場で予約方法を工夫すれば、一時的に解決できるかもしれません。しかし、会議室不足が続いているなら、日々の運営だけで完結させず、FM戦略・計画の課題として検討する必要があります。

利用状況を調べ、必要な面積や部屋数を考え、レイアウト変更や改修を行うなら、プロジェクト管理にもつながります。実施後は効果を評価し、必要なら再び改善します。

このように、一つの課題が複数の業務にまたがる場合、統括マネジメントが全体を見渡し、適切な業務へ橋を架けます。

🔄 FMの業務をPDCAでつなぐ

FM組織は、次のような流れで業務をつなぎます。

  • 経営方針や課題を踏まえて戦略・計画を立てる
  • プロジェクト管理や運営維持によって実行する
  • 品質・財務・供給の視点から結果を評価する
  • 見つかった課題を改善し、次の計画へ反映する

評価や改善を、その場限りの対応で終わらせないことが重要です。

FM組織全体の課題として共有し、必要に応じて戦略や計画までさかのぼることで、PDCAが一周して次のサイクルへつながります。

📍 節目で現在地を確かめる

FMの計画には、短期間で終わるものもあれば、数年かけて進めるものもあります。

長い計画では、最後まで進んでから結果を確認するのでは遅すぎることがあります。そこで、年度や半期などの節目を設け、計画がどこまで進んでいるのかを確認します。

確認するのは、数字だけではありません。

  • 目標へ向かって予定どおり進んでいるか
  • 利用者や現場に新しい課題が生じていないか
  • 予算と実績に大きな差がないか
  • 改善すべき業務がないか
  • 経営環境や働き方に変化がないか

こうした情報を整理して経営者へ報告し、大きな課題があれば改善方針を提案します。

🐶:節目で確認すれば、道を間違えていても早めに修正できますね。

🐔:そうじゃ。現在地を確かめずに歩き続けては、目的地から遠ざかっていても気づけんからのう。

🌱 FM組織の運営では自己評価も大切

FMでは、施設やサービスの品質だけでなく、FM組織自身の仕事も評価します。

たとえば、次のような点を振り返ります。

  • FM戦略や計画は経営方針と結びついているか
  • 各業務の連携は十分か
  • 必要な情報が共有されているか
  • 利用者の声を改善へ反映できているか
  • 外部委託先を適切に管理・評価できているか
  • FMを担う人材の知識や能力は足りているか

自己評価によって、現在も維持すべきよい点と、改善が必要な点を分けて考えます。

評価は誰かを責めるために行うものではありません。組織の現在地を知り、次にどこを伸ばすかを考えるために行います。

🎯 BSCで組織を多面的に見る

FM組織の自己評価には、**BSC(バランス・スコアカード)**という考え方を活用できます。

BSCは、ビジョンや戦略を具体的な目標や行動へつなげ、組織の成果を複数の視点から評価するための枠組みです。

主に、次の四つの視点を使います。

1.財務の視点

予算やコストなど、お金の面から成果を確認します。

FMでは、ファシリティコストの適正化や、予算と実績の差などが対象になります。

2.顧客の視点

顧客や施設利用者から、どのように評価されているかを確認します。

利用者満足度、快適性、サービスへの評価などが対象になります。

3.業務プロセスの視点

仕事の進め方や品質、効率に問題がないかを確認します。

修繕への対応時間、業務の正確さ、部門間の連携などが対象になります。

4.学習・成長の視点

組織や人材が、将来に向けて成長できているかを確認します。

研修、資格取得、知識の共有、改善提案、チームの能力向上などが対象になります。

一つの視点だけで組織を評価すると、偏りが生じます。

たとえば、コスト削減だけを追えば、サービス品質や利用者満足度が下がるかもしれません。反対に、満足度だけを高めようとすれば、費用が膨らむ可能性があります。

BSCは、複数の視点を組み合わせて、組織をバランスよく見るための枠組みなのです。

📏 KPIと目標値は何が違うの?

組織の進み具合を測るときには、**KPI(重要業績評価指標)**を設定することがあります。

KPIは、目標へ向かってどの程度進んでいるかを確認するための重要な指標です。

たとえば、電力使用量を減らしたい場合は、次のように分けます。

  • 目的:環境負荷とエネルギーコストを減らす
  • KPI:毎月の電力使用量、前年同月比
  • 目標値:前年同月比で5%削減する

問い合わせ対応を改善したい場合は、次のように考えられます。

  • 目的:利用者への対応を迅速にする
  • KPI:問い合わせへの平均回答時間
  • 目標値:平均1営業日以内に回答する

KPIは「何を測るか」、目標値は「どの水準を目指すか」です。

BSCを使う場合は、四つの視点ごとに目標を考え、その進み具合を確認する指標としてKPIを活用できます。

ただし、数字を集めること自体が目的ではありません。測った結果から課題を見つけ、行動を改善することが大切です。

📚 FM組織が学び、成長するために

自己評価で課題を見つけたら、改善するための学習や人材育成につなげます。

たとえば、次のような方法があります。

  • 社内研修や外部研修を行う
  • 専門家を招いて学ぶ
  • 他の施設や企業を見学する
  • 業務で得た知識や失敗事例を共有する
  • マニュアルや標準を見直す
  • 新しい技術や制度について学ぶ

FM業務を外部委託している場合も、自社の担当者だけが学べばよいわけではありません。

委託先のスタッフとも課題や目標を共有し、一緒に改善へ取り組める環境をつくることが大切です。

学習と成長は、研修を受けた回数だけで測るものではありません。学んだことが実際の業務改善やサービス向上につながっているかまで確認します。

🐥:評価で見つけた課題を、次の勉強や改善につなげるんだね。

🐶:はい。できなかったことを数えるだけではなく、次にできるようにするところまでが組織の成長です。

🐔:学んだことが仕事を変え、仕事から得た経験が次の学びになる。その循環が組織を育てるのじゃよ。


🎁 BSCとKPIはどう違う?【ミニミニ劇場】をひらく

本編では、FM組織の自己評価に活用できるBSCと、進み具合を測るKPIについて学びました。

まだ少し難しいと感じたら、ぴよまるたちと一緒に、作戦ボードをのぞいてみましょう。

🔹 BSCってなに?――チームの作戦ボードをつくろう!~

🐥ぴよまる:ねぇねぇ、BSCってなに?ベスト・スイーツ・コレクションの略?おいしいやつ?

😸うちのねこさん:それはぜひ開催してほしいニャ。だが今回のBSCは、おやつではないらしいニャ。

🐶うらのいぬさん:BSCは、バランス・スコアカードのことです。戦略を具体的な目標や行動へつなげ、組織を複数の視点から見るための枠組みです。

🐔にわのとりさん:経営やFMの戦略を、実際に歩ける地図へ描き直すようなものじゃな。

🐥:地図には、どんな道が描かれているの?

🐔:BSCでは、主に四つの視点から考えるのじゃ。
📚 BSCの4つの視点(にわのとりさんの簡単まとめ)

  • 財務の視点:予算やコストなど、お金の面
  • 顧客の視点:利用者の満足度やサービスへの評価
  • 業務プロセスの視点:仕事の品質、効率、進め方
  • 学習と成長の視点:人材や組織の知識、能力、成長

😸:RPGの能力表なら、「お金」「人気」「仕事の腕前」「レベルアップ」という感じニャ。

🐶:少し大胆な訳ですが、四つをバランスよく見るという点は合っています。

🐥:一つだけ強くするんじゃなくて、チーム全体を育てるんだね。

🔹 KPIってどう使うの?――進み具合を測るものさし

🐥:ところでKPIって、キラキラ・ぴよぴよ・いちばん?

😸:かわいいから採用したいニャ。

🐔:残念ながら違うのう。KPIは「重要業績評価指標」のことじゃ。目標へ向かう途中の進み具合を確かめる、大切なものさしなのじゃよ。

🐶:たとえば、電力使用量を減らす取り組みなら、「毎月の電力使用量」や「前年同月比」がKPIになります。

🐥:じゃあ、「前年より5%減らす」がKPIなんだね!

🐶:そこが大切なところです。「前年同月比」がKPIで、「5%削減」が目標値です。

🐥:KPIは何を測るか、目標値はどこまで進むか、なんだね。

🐔:そのとおりじゃ。BSCで戦略を多面的に整理し、KPIで進み具合を測り、目標値と比べて評価するのじゃ。

📚 ミニミニ劇場のポイントまとめ

  • BSC(バランス・スコアカード)戦略を四つの視点から整理し、具体的な目標や行動へつなげる枠組み
  • KPI(重要業績評価指標)目標へ向かう進み具合を確認するための重要な指標
  • 目標値は、KPIをどの水準まで到達させるかを示したもの
  • 測った結果を評価し、次の改善や学習へつなげることが大切

🐥:よし。ぼくのKPIは「一日のおやつを3つまでにする」!

🐶:惜しいです。「一日に食べたおやつの数」がKPIで、「3つまで」が目標値ですね。

😸:オレのKPIは、お皿に残ったおやつの数ニャ。いつもゼロだから成績優秀ニャ。

🐔:それは進捗ではなく、完食の報告じゃな。


📚 ポイントまとめ

  • FM組織の運営では、各業務を俯瞰してつなぎ、PDCAを継続的に回す
  • 日常業務で見つかった課題を、その場限りにせず、戦略や計画、改善へつなげる
  • 年度や半期などの節目で現在地を確認し、経営者へ報告・提案する
  • FM組織自身も評価し、維持すべき点と改善すべき点を明らかにする
  • BSCを活用すると、財務、顧客、業務プロセス、学習・成長の四つの視点から組織を評価できる
  • KPIで進み具合を測り、目標値と比べて、改善や学習へつなげる
  • 自社の担当者と委託先が一緒に学び、成長できる環境をつくる

🌱 今日のまとめ

FM組織は、つくっただけでは十分に働きません。

戦略・計画、プロジェクト管理、運営維持、評価、改善などの業務をつなぎ、組織全体でPDCAを回すことで、初めて一つのチームとして動きます。

そして、施設やサービスだけでなく、FM組織自身も評価し、学び、成長し続ける必要があります。

評価で現在地を知り、学習によって次の一歩をつくる。その繰り返しが、FM組織を少しずつ強くしていくのです。

🐥:チームを動かすことと、チームを育てること。その両方がFM組織の運営なんだね。

🐔:うむ。今日より少しよい明日をつくるために、仕事と学びをつないでいくのじゃ。


🎮 次回予告:第5章④「FMの財務管理とは?予算とコストを経営につなげる」

FMの計画を実行するには、お金の流れを把握し、必要なところへ適切に配分することが欠かせません。

次回は、予算と実績、ファシリティコスト、施設資産をどのように管理するのかを学びましょう。

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📖 参考資料・関連情報

参考資料

  • 公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会編『公式ガイド ファシリティマネジメント』
    • 第5章「統括マネジメント」
    • 5.3「FM組織の運営」(93~94ページ)
    • 5.3.1「各業務を俯瞰する統括業務」
    • 5.3.2「FM組織の自己評価と学習・成長の推進」
    • 図表5.3.1「バランススコアカードによる目標管理」

この記事では、上記の内容をもとに、FMの各業務をつなぐ統括業務、組織の自己評価、BSCによる多面的な評価、学習・成長の進め方を初心者向けに整理しています。

KPIと目標値については、BSCの理解を助けるための実務上の補足として紹介しています。

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