FMと災害対策を考えるとき、建物の強さだけを見ればよいわけではありません。
建物を使い続けるには、毎日の電気や水だけでなく、修理や設備の更新にも資源が必要です。
さらに、地震、台風、豪雨などが起きたときには、人の安全を守り、必要な機能をできるだけ保たなければなりません。
環境への負荷を抑える「サステナビリティ」と、変化や災害に耐えて回復する「レジリエンス」。この二つの視点から、施設管理にできることを考えてみましょう。
環境と災害への備えをクイズで考えよう
🐶うらのいぬさん:それでは問題です。古くなったオフィスの空調設備を更新することになりました。FMの考え方として、最も適切なのはどれでしょう?
A.購入価格が最も安い設備を選ぶ
B.最も大きくて高性能な設備を選ぶ
C.必要な能力、省エネ性能、安全性、維持費、非常時の運用などを比べて選ぶ
🐥ぴよまる:高性能なら安心だからBかな? でも、大きすぎると電気をたくさん使いそうだね。ぼくはCにする!
🐶:正解は、Cの「必要な能力、省エネ性能、安全性、維持費、非常時の運用などを比べて選ぶ」です。
購入価格が安くても、電気代や修理費が多くかかれば、長い目で見た負担は大きくなります。
一方、性能が高ければ高いほどよいとも限りません。施設の広さや使い方に合わない設備は、十分な効果を発揮できないことがあります。
導入するときの費用だけでなく、運転、点検、修理、更新まで考えることが大切です。
FMと地球環境にはどんな関係がある?
🐥ぴよまる:建物を管理することが、どうして地球環境につながるの?
🐔にわのとりさん:建物は、空調、照明、給湯、エレベーターなどを動かすために、毎日エネルギーを使っておるからじゃよ。
施設の運用では、電気、ガス、水などを継続的に使用します。
また、建物を建てるときには、建材の製造や運搬、工事にもエネルギーが必要です。改修、設備更新、解体、廃棄の段階でも環境への負荷が生じます。
そのため、環境負荷を考えるときは、建物を使っている期間だけでなく、計画から建設、運用、改修、解体までのライフサイクル全体を見る必要があります。
国土交通省も、建築物について、運用時の省エネルギーだけでなく、計画から解体までのライフサイクル全体で排出されるCO₂を算定・評価する取組を進めています。
🐥:電気を消すことだけが、建物の環境対策じゃないんだね。
🐔:そうじゃ。長く使えるように手入れすることや、改修するときの材料を考えることも、環境への取組につながるのじゃよ。
サステナブルな施設にするための視点
サステナブルは「持続可能な」という意味です。
FMでは、施設を使う人の安全や快適性を守りながら、資源やエネルギーを無理なく使い続けられる状態を目指します。
代表的な取組には、次のようなものがあります。
- エネルギーや水の使用量を把握する
- 空調や照明の運転時間を利用状況に合わせる
- 断熱性能や設備の効率を改善する
- LED照明や高効率設備へ計画的に更新する
- 太陽光などの再生可能エネルギーを検討する
- 修理や予防保全によって建物や設備を長く使う
- 改修や廃棄の際に資源の再利用や廃棄物削減を考える
- 実施後に効果を測り、運用方法を改善する
🐥:省エネって、暑さや寒さを我慢することだと思っていたよ。
🐶うらのいぬさん:我慢だけに頼ると、快適性や健康、仕事のしやすさを損なうことがあります。設備や建物の性能、利用時間、人数などを確かめながら調整することが大切です。
😸うちのねこさん:環境への配慮と、オレの快適な昼寝は両立できるということニャ。
🐔:ねこさんのためだけではないが、利用者の快適性も確認項目の一つじゃな。
省エネ設備を導入しただけで成功と判断することもできません。
導入後のエネルギー使用量だけでなく、室温、利用者の声、設備の不具合、維持費なども確認します。ある数字が改善しても、別のところへ負担が移っていないかを見ることが重要です。
レジリエンスは「被害を防ぐ」だけではない
レジリエンスは、災害や事故などが起きたときに、被害を抑え、重要な機能をできるだけ保ち、状況に応じて回復する力を表す言葉です。
単に頑丈な建物をつくることだけではありません。
- 危険を事前に知る
- 被害を減らす
- 人の命と安全を守る
- 必要な機能を継続する
- 中断した機能を適切な順番で回復する
- 経験を次の改善へつなげる
こうした一連の力がレジリエンスにつながります。
🐥:壊れないようにするだけではなく、もしものときにどう動くかも含まれるんだね。
🐔:うむ。どのような災害でも被害を完全に防げるとは限らん。だからこそ、起きたあとの行動まで考えておく必要があるのじゃ。
FMと災害対策はどうつながる?
FMは、施設や設備に関する情報を整理し、組織の防災や事業継続を支えます。
たとえば、次のような取組があります。
災害が起きる前
- ハザードマップや被害想定を確認する
- 建物や設備の弱点を調べる
- 避難経路や非常口を確保する
- 防災設備や非常用電源を点検する
- 水、食料、衛生用品などの備蓄を管理する
- 重要設備や図面、連絡先を整理する
- 避難訓練や初動対応の訓練を行う
災害が起きた直後
- 人命と安全を最優先に行動する
- 建物や設備の被害状況を確認する
- 危険な区域への立入りを制限する
- 電気、ガス、水道などの状態を確認する
- 経営や防災担当などへ必要な情報を伝える
復旧するとき
- 安全を確認してから施設の使用を再開する
- 重要な業務に必要な機能から復旧する
- 仮設場所や代替設備の利用を検討する
- 被害や対応の記録を残す
- 計画や設備、訓練方法を見直す
🐶:災害後は「早く元どおりにする」ことだけが目標ではありません。安全確認を行い、重要な機能から順番に回復させることが大切です。
防災とBCPはどう違う?
防災は、人命を守り、建物や設備などの被害を防いだり減らしたりする取組です。
一方、BCPは「Business Continuity Plan」の略で、日本語では「事業継続計画」と呼ばれます。
内閣府はBCPについて、災害時に重要業務を中断させないことや、中断した場合にも目標とする時間内に重要な機能を再開させるための経営戦略として説明しています。
たとえば、次のようなことを決めます。
- 災害時にも続けなければならない重要業務
- その業務に必要な人、施設、設備、情報
- いつまでに、どの程度まで再開するか
- 本来の施設が使えない場合の代替場所
- 電源、通信、取引先などが途絶えた場合の対応
計画を作るだけでなく、訓練し、結果を確かめ、継続的に改善する取組はBCM(事業継続マネジメント)と呼ばれます。
🐥:非常食を用意するだけでは、仕事をどう続けるかまでは決まらないんだね。
🐔:そのとおりじゃ。防災と事業継続は重なる部分もあるが、目的や範囲が同じではないのじゃよ。
FM担当者だけで災害へ備えるわけではない
避難計画、安否確認、情報システムの復旧、取引先との連絡などは、施設だけで完結しません。
経営、人事、総務、情報システム、防災担当、利用部門、施設所有者、管理会社、設備業者などが役割を分担し、連携する必要があります。
FMはその中で、次のような情報を提供できます。
- 建物や設備の状態
- 電気、水、通信などの供給状況
- 非常用電源を使える時間や範囲
- 使用できる部屋や立入りできない区域
- 修理や復旧に必要な人員と時間
- 代替施設や仮設スペースの候補
🐶:FMはすべてを一人で背負う役割ではありません。施設に関する情報を整え、関係者と協力して、組織の判断を支える役割です。
サステナビリティとレジリエンスはつながっている
環境対策と災害対策は、別々に見えるかもしれません。
しかし、建物を適切に点検して長く使うことは、資源の消費を抑えるとともに、災害時の不具合を減らすことにもつながります。
太陽光発電や蓄電池も、通常時には環境負荷の軽減に役立ち、設計や運用の条件が整えば、停電時の電源として活用できる場合があります。
ただし、省エネ設備が自動的に災害対策になるわけではありません。停電時にどの設備へ電力を供給するのか、何時間使えるのか、安全に切り替えられるのかを、あらかじめ確認する必要があります。
🐥:一つの設備でも、普段と災害時では役割が変わるんだね。
🐔:うむ。日常と非常時の両方から施設を見ることが、これからのFMには求められるのじゃ。
FMと災害対策を結びつけることで、日常の施設管理が、非常時に人と事業を守る備えにもなります。
今日のまとめ
- FMの環境対策は、建物の運用だけでなくライフサイクル全体で考える
- 省エネは、安全性、快適性、健康、費用などとのバランスが大切
- サステナビリティでは、取組後の効果を測り、改善を続ける
- レジリエンスは、被害を抑え、重要機能を保ち、回復する力
- 災害後は、安全を確認してから重要な機能を順番に復旧する
- 防災とBCPは関係するが、目的や範囲が同じではない
- FMは施設情報を整理し、関係部門と協力して防災・事業継続を支える
🐥ぴよまる:地球にやさしい施設と災害に強い施設は、別々の話ではないんだね。
🐔にわのとりさん:そうじゃ。今日の環境を守りながら、明日の変化にも耐えられるようにする。その両方を考えることが大切なのじゃよ。
🐶うらのいぬさん:そして、計画や設備は作って終わりではありません。点検や訓練を通して、少しずつ強くしていきます。
😸うちのねこさん:つまり、日ごろの手入れと、いざというときの避難経路を確保することニャ。オレのキャリーケースも点検対象ニャ。
次回予告
次回は、企業や組織の活動を支える「経営基盤」とFMの関係を見ていきます。
人、ICT、財務、FMは、それぞれどのように経営を支えているのでしょうか。そして、FMは経営課題の解決にどう貢献できるのでしょうか。
次回:経営基盤をFMはどう支える?|第2章④
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参考資料
- 『公式ガイド ファシリティマネジメント』第2章「ファシリティマネジメントの効果」2.1.4「地球環境保全」、2.1.5「災害に対する強靱化」
- 国土交通省「建築物のライフサイクルカーボンの算定・評価等を促進する制度に関する検討会」
- 国土交通省「国土交通白書2022―住まい・建築物の脱炭素化に向けた取組み」
- 内閣府「事業継続―知る・計画する」
※施設に必要な防災設備、消防計画、点検、訓練などは、建物の用途や規模、所在地、関係法令によって異なります。実際の対応では、所管行政庁、消防機関、建築・設備の専門家などへ確認してください。
※BCPにおける重要業務、目標復旧時間、代替手段などは、組織の事業内容や社会的役割、利用できる人員・設備によって異なります。