ファシリティマネジャーの役割は、施設で起きている変化に気づき、FMの目標との差を確かめ、改善の方向を考えることです。評価の数字だけでは見えにくい、利用者の困りごとも大切な手がかりになります。
第10章①では、評価で分かった課題から改善方針を立てる流れを見ました。では、その課題を日ごろから見つけ、次の計画へ届けるのは誰なのでしょうか。
🐥ぴよまる:建物は「ここが使いにくいよ」って、自分では教えてくれないもんね。
🐔にわのとりさん:そうじゃな。建物の状態と、そこで過ごす人の声の両方に耳を澄ます人が必要なんじゃ。
🐥 まずは3択クイズ!小さな困りごとを聞いたら?
ある職場で、利用者から「最近、この場所は仕事に集中しにくい」という声が出ました。ファシリティマネジャーが、改善に向けてまず行うこととして適切なのはどれでしょう?
A.声を聞いたその日に、部屋の配置変更を決める。
B.状況やほかの利用者の声を確かめ、目標との違いを整理する。
C.評価の時期まで、その声は扱わない。
😸うちのねこさん:オレなら、まず「集中できないのは何時ごろ?」って聞くニャ。……あれ、これも調査になるのかニャ?
🐥❓:たしかに、原因が分からないまま机を動かしても、解決するとは限らないよね。
🐶うらのいぬさん:正解はBです。利用者の声は大切ですが、一つの声だけで原因や対策を決めることはできません。いつ、どこで、何が起きているのかを確かめ、FMの目標との差を整理することが改善の出発点です。
👂 日常の変化が、改善の手がかりになる
公式ガイドでは、ファシリティマネジャーはFMの目標と実際の状況との差を常に検討し、改善課題を明らかにして、改善の方向性を考える役割を担うと説明しています。
その手がかりは、定期的な評価の結果だけではありません。日々の運営維持では、利用者の働き方や要望の変化、施設の不具合などが見えてきます。事業の進め方が変われば、以前は使いやすかった場所が合わなくなることもあります。
🐥❓:でも、「集中しにくい」って、空調が原因かもしれないし、周りの音かもしれないよね。
🐔にわのとりさん:うむ。だから、声を聞いたら「何を変えるか」へすぐ飛ばず、「何が起きているか」を確かめるんじゃ。
🐶💡:利用者の話に加えて、使われ方や設備の状況なども確認します。そうすると、評価のときにも課題を具体的に捉えやすくなります。
😼:一人が困っているように見えて、実はみんな同じことを我慢しているかもしれないニャ。
🐥💡:あっ、小さな声を聞くことが、まだ見えていない課題を見つける入口になるんだね。
🧭 気づいたことを「改善課題」に育てる
困りごとを見つけるだけでは、次の計画にはつながりません。ファシリティマネジャーは、現在のFM目標と実態を比べ、どこに差があるのかを整理します。そして、対応が必要な課題を明らかにし、どの方向で改善するかを考えます。
たとえば、集中しにくい場所について調べた結果、利用者が増えて会話と作業が同じ空間に集中していると分かったとします。その場合、「机を動かす」という一つの方法を先に決めるのではなく、働き方に合った空間の使い分けを検討する、という改善の方向が見えてきます。
🐥:なるほど。「困っている」から一歩進んで、「今の場所と使い方が、働き方に合っているか」を考えるんだ。
🐔✨:そのとおりじゃ。課題の輪郭が見えれば、次の計画で何を検討すべきかも伝えやすくなる。
🔗 現場の気づきを、計画や経営へ届ける
改善方針を考える際には、利用者だけでなく、施設の運営や保全に関わる人たちの情報も役立ちます。必要に応じて担当部門や専門家と協力しながら、品質・財務・供給の視点から課題を検討します。
検討した改善方針は、通常、次のFM戦略・計画へつなぎます。一方、施設の使い方だけでは解決できず、組織全体の働き方などに関わる課題なら、経営に向けた提案が必要になる場合もあります。その二つの行き先は、次回の記事で詳しく見ていきます。
😼うちのねこさん:でも、場所を変えるだけで解決しないなら、誰に話を届けるかも大事だニャ。
🐥❓:あっ。気づいた人だけが頑張っても、職場全体の働き方は変えられないもんね。
🐶うらのいぬさん:そのとおりです。ファシリティマネジャーは、すべてを一人で決めて実行する人ではありません。課題を整理し、関係する人たちが次の判断をできるようにつなぐ役割も担います。
📚 ポイントまとめ
- ファシリティマネジャーは、FMの目標と実際の状況との差を捉え、改善課題を明らかにする。
- 日々の利用者の声、事業の変化、施設の不具合は、課題を見つける手がかりになる。
- 課題を整理して改善の方向を考え、FM戦略・計画や、必要に応じて経営への提案につなぐ。
☀️ 今日のまとめ
建物は、自分から困りごとを話してくれません。でも、そこを使う人の声や日々の変化に目を向ければ、改善につながる手がかりが見えてきます。
ファシリティマネジャーは、その手がかりを拾い、確かめ、次の判断へ届ける人。元記事の言葉を借りれば、建物の「声なき声」に耳を澄ます役割です。
🐥✨:ぼくにも、いつもの場所をちょっと違う目で見られそう。小さな「どうして?」を大事にしたいな。
😸:じゃあオレも、一つ見つけたら話してみるニャ。聞いてもらえると分かれば、声にしやすいし。
🎮 次回予告
見つけた課題の改善方針は、どこへ届ければよいのでしょうか。次回は、経営戦略とFM戦略・計画、二つの行き先を整理します。
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📖 参考資料・関連情報
公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会編『公式ガイド ファシリティマネジメント』第10章「改善」
- 10.1「改善とは」
- 10.1.2「ファシリティマネジャーの役割」
この記事では、公式ガイドに示された、FMの目標と実態との差を捉える役割、日常業務から変化や不具合を把握すること、改善方針を次の計画や経営へつなぐことを確認しました。
集中しにくい職場を題材にした3択クイズや、ファシリティマネジャーを建物の「声なき声」に耳を澄ます人として描く説明は、初心者が役割を思い浮かべやすいように加えた独自の再構成です。
本記事は公式ガイドの内容を参考にしていますが、原文の文章・図表を引用したものではなく、筆者が独自に再構成した解説です。
- 公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会
日本におけるFMの普及と、ファシリティマネジャーの育成を行っている公式団体です。