FMの標準と規程とは?仕事の品質をそろえる仕組み|第5章⑥

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FMの標準と規程は、施設や担当者が変わっても、仕事の品質や判断の公平性を保つための仕組みです。

標準は、目標とする水準や仕事の進め方を示す「共通のものさし」です。規程は、誰が判断し、どのような手続きで仕事を進めるのかを定めた「組織のルール」です。

ただし、一度決めた内容を、ずっと変えずに守ればよいわけではありません。

働き方、技術、法令、利用者のニーズなどの変化に合わせて、実際の業務で試し、評価し、見直し続けることが大切です。

前回は、FMに必要なデータを集め、関連づけ、計画や経営判断に活かす仕組みを学びました。

今回は、そのデータを使って公平に判断し、安定した品質で仕事を進めるための、FMの標準と規程について見ていきましょう。

📏 仕事の進め方は一度決めたら変えない?

🐥ぴよまる:標準や規程をつくったら、みんながずっと同じように守ればいいの?

🐔にわのとりさん:同じ方向へ進むためには必要じゃが、変化に合わせて見直すことも大切なのじゃ。まずはクイズで考えてみよう。

Q.FMの標準と規程を運用するとき、最も大切なことはどれでしょう?

  • A.一度決めた内容は、どのような変化があっても変えない
  • B.共通のものさしとして使い、評価しながら改善する
  • C.分厚い規程集をつくり、鍵のかかる棚へ大切にしまう

😸うちのねこさん:Cなら、だれにも破られずに保存できるニャ。

🐥:でも、読めなかったら仕事には使えないよね。ぼくはBだと思うな。

🐶うらのいぬさん:正解はBです。

標準や規程は、つくることや保管することが目的ではありません。

実際の業務で使い、うまく機能しているかを確かめ、必要に応じて改善するためのものです。

一度決めた内容を変えないままにすると、働き方や技術の変化に合わなくなり、かえって仕事を進めにくくすることがあります。

🧭 FMの標準と規程、基準は何が違う?

似た言葉ですが、FMでは役割を分けて考えると理解しやすくなります。

言葉 主な役割 例
標準 目標とする水準や、仕事の進め方をそろえる 1人当たりの面積、サービス品質、点検方法
基準 法令などによって求められる最低限の条件や、判断のよりどころを示す 安全、衛生、防災などに関する法令上の基準
規程 組織内で仕事を進めるための権限、責任、手続きを定める 承認規程、契約規程

標準は「どの水準を目指すか」

標準は、FM戦略や計画を立てたり、結果を評価したりするときの目安となります。

数値で示すものだけではありません。

  • 1人当たりのオフィス面積
  • 面積当たりのファシリティコスト
  • 清掃や警備に求めるサービス品質
  • 点検や修繕の手順
  • オフィスづくりのガイドライン
  • 家具や備品の仕様

このように、数値、仕様、手順、ガイドライン、マニュアルなど、さまざまな形があります。

基準は「最低限満たすべき条件」

安全、衛生、防災などについては、法令に基づく基準が定められています。

FMの標準を決めるときは、まずこうした基準を満たす必要があります。そのうえで、企業の目的や働き方に合わせ、より高い水準を標準として設定することもあります。

つまり、法令上の基準を満たしていることを前提に、自社が目指す品質や成果をFMの標準として定めます。

規程は「誰が、どの手続きで進めるか」

規程は、会社の中で仕事を進めるためのルールです。

誰に決定権があるのか、どの段階で承認を得るのか、契約をどのような手続きで進めるのかなどを定めます。

🐥:標準は仕事のものさしで、規程は仕事を進める道筋なんだね。

🐔:うむ。そして基準は、安全などを守るための土台になるものなのじゃ。

🌟 FMを標準化する4つの効果

FMの仕事を標準化すると、次のような効果が期待できます。

1.判断や対応を早くする

必要な面積や家具の数量などを検討するとき、あらかじめ標準があれば、一から条件を考え直す必要がありません。

たとえば、1人当たりの面積や標準的な家具の仕様が決まっていれば、組織変更や移転の際にも、必要なスペースや費用をすばやく見積もれます。

2.公平な対応と品質を保つ

部門や施設によって、サービスの内容や品質に大きな差があると、不公平感が生まれます。

共通の標準を定めることで、どの施設でも一定の品質を保ちやすくなります。

3.仕事を正確にし、無駄を減らす

業務の手順や確認項目をガイドラインやマニュアルにすれば、作業漏れや担当者によるばらつきを減らせます。

担当者が交代したときにも、仕事の進め方を引き継ぎやすくなります。

4.調達を効率化する

家具や備品、サービスの標準仕様が決まっていれば、必要な品質を確保しながら、まとめて調達しやすくなります。

仕様をそろえることで、価格や性能も比較しやすくなります。

😸:毎回ゼロから考えていたら、同じところを何度も歩くことになるニャ。

🐶:標準は、これまでの経験を次の仕事に活かすための道しるべでもあるのですね。

⚠️ 標準化しすぎると仕事が固まってしまう

標準化には多くの利点がありますが、細かく決めすぎると、業務が硬直することがあります。

たとえば、以前の働き方に合わせて決めた面積標準を、そのまま新しいワークプレイスへ当てはめると、フリーアドレスや在宅勤務などに対応できない場合があります。

また、すべての施設に同じ標準を機械的に当てはめると、利用目的、立地、建物の規模などの違いを無視してしまうことがあります。

そのため、標準には、一定の幅や例外を認める考え方も必要です。

  • 標準値に一定の許容範囲を設ける
  • 施設の用途や規模に応じて適用方法を変える
  • 例外を認める条件と承認手続きを決める
  • 定期的に標準を評価し、見直す

標準は、全員を同じ形に押し込む型ではありません。

迷ったときの出発点をそろえ、合理的な判断を助けるためのものです。

🏢 FMにはどのような標準がある?

公式ガイドでは、FMで用いられる主な標準を、次のように整理しています。

  1. ファシリティ標準
  2. 面積標準
  3. 運営維持標準
  4. 財務標準・調達標準
  5. その他の標準

それぞれの役割を見てみましょう。

🏗️ ファシリティ標準で施設と環境の品質をそろえる

ファシリティ標準には、施設標準と環境標準があります。

施設標準

土地、建物、機械、設備、ワークステーションなど、施設そのものに関する標準です。

たとえば、次のような内容を定めます。

  • 建物や設備に求める性能
  • 執務室や会議室の仕様
  • 家具や備品の仕様
  • ICT環境や電源の条件
  • バリアフリーや安全性への配慮

施設が複数ある企業では、一定の標準を設けることで、施設ごとの品質のばらつきを抑えられます。

環境標準

室内環境、アート、グリーン、防災、安全、健康など、施設を取り巻く環境に関する標準です。

たとえば、温度、明るさ、音、空気環境などについて目標とする水準を定めます。

これにより、施設や部門が変わっても、利用者が安全で働きやすい環境を保ちやすくなります。

📐 面積標準でスペースを公平に考える

面積標準は、施設の面積を一定の単位で表し、必要なスペースを計画・評価するための標準です。

基本的には、1人当たり何平方メートルかという形で表します。

公式ガイドでは、主に次の3つの見方が示されています。

1.施設全体の面積を見る

1人当たり有効面積=有効面積÷入居人数

建物全体で、入居者1人当たりにどれだけの有効面積があるかを表します。

自社で保有する施設と賃借している施設を比較したり、施設全体のスペース効率を評価したりするときに使います。

2.執務スペースの面積を見る

1人当たり執務室面積=執務室面積÷入居人数

デスクが並ぶ執務室について、1人当たりの面積を表します。

席や通路を含む執務空間が、人数に対して適切かを考えるための指標です。

3.業務を支える共用スペースを見る

1人当たり業務支援面積=業務支援面積÷入居人数

会議室など、業務を支える共用スペースが、入居人数に対してどれだけあるかを表します。

ただし、必要な会議室の広さや数は、働き方によって変わります。

フリーアドレスのオフィスでは、デスク数と入居人数が1対1ではない場合もあります。固定席を前提とした面積標準を、そのまま当てはめることはできません。

働き方や施設の用途などの条件を踏まえて、面積標準を設定・評価することが必要です。

🐥:数字が同じでも、働き方が違えば、必要な広さも変わるんだね。

🐶:はい。面積標準は答えを自動的に出すものではなく、条件をそろえて比較するためのものです。

🧹 運営維持標準でサービスと保全の品質を保つ

運営維持標準は、施設を使う段階で行う運用・サービスと維持保全を、一定の水準に保つための標準です。

運用・サービスの標準

清掃、警備、受付、メールサービス、オフィスレイアウトなどについて、求める内容や品質を定めます。

外部の会社へ委託する場合は、求めるサービス水準をSLA(サービスレベル合意書)などで明らかにします。

自社で行う場合も、同じようにサービスの内容、頻度、品質、報告方法などを決めておくことで、担当者や施設によるばらつきを抑えられます。

維持保全の標準

設備の点検、修繕、部品交換、故障対応などについて、実施方法や周期、記録方法などを定めます。

法令で定められた点検を確実に行うだけでなく、自社の設備や利用状況に合わせた保全水準を設定します。

💰 財務標準と調達標準で比較・判断しやすくする

財務標準

財務標準は、ファシリティコスト、施設資産、施設投資などを評価するための標準です。

たとえば、次のようなものがあります。

  • 面積当たりのファシリティコスト
  • 1人当たりのファシリティコスト
  • 施設を保有するかどうかを評価する条件
  • 投資プロジェクトを評価する項目や水準

同じ方法で継続的に測ることで、施設同士や年度ごとの比較がしやすくなります。

調達標準

調達標準は、購入する商品やサービスについて、仕様、品質、価格、環境性能などの条件を定めるものです。

たとえば、家具や備品について、寸法、規格、型番、価格、耐久性、リサイクル性などを標準化します。

購入頻度や数量が多いものは、仕様をそろえて調達先と調整することで、在庫や価格を管理しやすくなります。

また、環境に配慮した製品を選ぶことを、調達標準に含める場合もあります。

📘 FMの規程は仕事の権限と手続きを明らかにする

FMの規程とは、FMの業務を進めるために、企業内で定めるルールです。

FM組織の権限と責任を明確にする業務規程、決裁を得るための承認規程、契約を進めるための契約規程などがあります。

FMの規程は、会社全体の就業規則や社内規程を守ることを前提に定めます。

中でも重要なのが、承認規程と契約規程です。

✅ 承認規程で意思決定の流れを整える

承認規程は、FM組織が仕事を進める際に、どの段階で、誰の承認を得るのかを定めたものです。

FMでは、移転、改修、設備更新、施設の取得や処分など、大きな費用や経営判断に関わる仕事があります。

そのため、次のような内容を明確にします。

  • 誰が計画案を作成するのか
  • 誰が内容を確認するのか
  • 金額や重要度に応じて、誰が承認するのか
  • どのような資料を提出するのか
  • どの段階で経営者へ報告するのか

特に、ワークプレイスづくり、大規模改修、建物の取得・処分などでは、経営者の理解と承認が必要です。

予算額、計画の進み具合、リスクなどに応じて、承認の段階や方法を決めます。

承認を得ることは、印鑑や電子承認を集めるだけではありません。

ファシリティの現状、課題、解決案、費用、期待される効果を説明し、経営者が判断できる情報を示すことも、承認手続きの大切な役割です。

🤝 契約規程で外部との約束を明確にする

契約規程は、FMに関する契約を適切に進めるためのルールです。

外部へ業務を委託する場合には、次のような事項を定めます。

  • 委託する業務の範囲
  • 求めるサービス水準
  • 委託先の選定方法
  • 見積もりや提案の評価方法
  • 契約書の確認と承認の手続き
  • 契約後の評価方法
  • 契約変更や終了の手続き

運営維持業務では、SLAやKPIなどを使い、求める品質と評価方法を契約内容に反映します。

新たな委託先を選ぶ場合には、RFP(提案依頼書)を作成し、業務の目的、範囲、期待する成果、評価方法などを示すこともあります。

また、不動産の売買や賃貸借、設計、工事などの契約には、専門的な判断が必要です。

FM組織だけで判断せず、法務部門などの関係部門と調整しながら、契約内容を確認・承認する仕組みを整えます。

🔄 FMの標準と規程はPDCAで育てる

FMの標準は、最初から完璧な形で決められるとは限りません。

まずは仮の標準をつくり、実際の業務で使ってみます。

  1. 仮の標準をつくる
  2. 実際の業務で使う
  3. 結果や問題点を評価する
  4. 内容を改善する
  5. 正式な標準として決定する
  6. 決定後も定期的に見直す

これは、第4章で学んだPDCAそのものです。

標準を決めたあとも、業務の結果、利用者の声、コスト、品質、法令改正などを確認し、必要に応じて改定します。

規程についても、作成して終わりではありません。

  • 実際の業務で使われているか
  • 承認に時間がかかりすぎていないか
  • 権限と責任が分かりやすいか
  • 契約上のリスクを適切に管理できているか
  • 働き方や組織の変化に合っているか

こうした点を評価し、改善します。

🐥:標準や規程も、使いながら育てていくんだね。

🐔:うむ。昨日まで役立っていた地図でも、道が変われば描き直す必要があるのじゃよ。

🗂️ 規程を誰でも使える状態にする

規程は、紙のファイルにまとめて棚へ置くだけでは、日々の業務で活用しにくくなります。

データベースや社内システムなどを使い、FM組織や関係部門、必要に応じて委託先も、必要なときに確認できる状態にします。

ただし、すべての人が自由に変更できてよいわけではありません。

  • 最新版がどれか分かるようにする
  • 改定日と変更内容を記録する
  • 閲覧できる人と変更できる人を分ける
  • 廃止した規程を誤って使わないようにする
  • 関係者へ改定内容を周知する
  • 必要な教育や説明を行う

規程の作成や改定は、統括マネジメントが全体を管理します。ただし、実際の運用は、プロジェクト管理、運営維持、財務、調達など、それぞれの担当業務の中で行います。

標準や規程を仕事の中へ根づかせるには、文書をつくるだけでなく、関係者が内容を理解し、迷わず使える状態にすることが必要です。

😸:読めない場所にあるルールは、ないのとあまり変わらないニャ。

🐶:いつでも確認でき、変更があれば伝わる仕組みまで整えて、初めて運用できているといえますね。

📚 ポイントまとめ

  • FMの標準と規程は、仕事の品質、公平性、効率性を保つための仕組み
  • 標準は目標とする水準や仕事の進め方、規程は権限・責任・手続きを示す
  • 法令などによる基準を満たしたうえで、自社が目指す標準を定める
  • 標準化には、迅速な対応、公平な品質、業務の正確性、調達の効率化という効果がある
  • 標準を細かく決めすぎると業務が硬直するため、許容範囲や例外の考え方も必要
  • FMの主な標準には、ファシリティ標準、面積標準、運営維持標準、財務標準、調達標準などがある
  • 承認規程は意思決定の流れ、契約規程は外部との契約手続きを明らかにする
  • 標準と規程は、実際の業務で使い、PDCAを回しながら継続的に改善する
  • 最新版を共有し、関係者が必要なときに使える状態にしておく

🌱 今日のまとめ

標準や規程と聞くと、仕事を縛る堅いルールのように感じるかもしれません。

しかし、FMの標準と規程は、担当者や施設が変わっても、同じ方向を向き、必要な品質を保つための共通の地図です。

標準があれば、判断の出発点をそろえられます。規程があれば、誰が、どのような手続きで仕事を進めるのかが分かります。

大切なのは、一度つくった地図を棚へしまわないことです。

実際の業務で使い、結果を確かめ、変化に合わせて描き直すことで、標準と規程はFMを支える生きた仕組みになります。

🐥:標準と規程は、みんなを同じ形にするためではなく、安心して仕事を進めるためにあるんだね。

🐶:はい。共通のものさしと道筋があるからこそ、必要な場面では、理由を示して柔軟に判断できます。

😸:道が変わったのに昔の地図を守っていたら、壁の前で会議を始めることになるニャ。

🐔:ほっほっほ。それでは前へ進めんのう。地図を使い、確かめ、描き直す。それが標準と規程を運用するということなのじゃ。


🎮 次回予告:「FM入門・第5章まとめ|6つの基本をクイズでおさらい」

統括マネジメントは、組織をつくり、業務を動かし、財務とデータを管理し、標準と規程によって仕事の土台を整えます。

次回は、第5章で学んだ6つの基本を、ぴよまるたちと一緒にクイズで振り返りましょう。

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📖 参考資料・関連情報

参考資料

  • 公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会編『公式ガイド ファシリティマネジメント』
    • 第5章「統括マネジメント」
    • 5.6「標準と規程の策定と運用」(101~105ページ)
    • 5.6.1「FMの標準」
    • 5.6.2「FMの規程」
    • 5.6.3「FMの標準と規程の運用」

この記事では、上記の内容をもとに、FMにおける標準・基準・規程の違い、主な標準の種類、承認規程と契約規程、PDCAによる運用と改善を初心者向けに整理しています。

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