FMの財務管理とは?予算・コスト・施設資産をつなぐ|第5章④

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FMの財務管理とは、ファシリティに関わる予算、コスト、施設資産などのお金の情報を一元的に把握・分析し、予算計画や投資判断、施設の改善へつなげる仕事です。

予算と実績を比べる「予実管理」も、その大切な一部です。しかし、数字を集計し、予定どおりだったかを確認するだけではありません。

数字の裏側で何が起きたのかを読み解き、限られたお金をいつ、どこへ、どのように使うべきかを考え、経営判断に必要な情報を示すところまでが、FMの財務管理です。

💸 FMのお金を管理する目的は?

🐥ぴよまる:いよいよ財務管理だって。数字がいっぱい出てくるのかな?

🐔にわのとりさん:数字は出てくるが、計算だけの話ではないぞ。まずはクイズで考えてみよう。

Q.FMの財務管理で、最も大切なことはどれでしょう?

  • A.予算と実績が違っていたら、すぐに失敗と決める
  • B.予算、コスト、施設資産の情報から背景を読み、次の判断へつなげる
  • C.ねこさんのおやつ代を最優先で確保する

😸うちのねこさん:Cは福利厚生として検討する価値があるニャ。

🐥:ねこさんだけが対象の福利厚生だよね。ぼくはBだと思うな。

🐶うらのいぬさん:正解はBです。

予算と実績に差があっても、必ずしも無駄遣いや失敗とは限りません。災害への対応、設備の故障、物価の上昇など、必要な理由があって支出が増えることもあります。

大切なのは、数字を比べるだけでなく、差が生じた理由を確かめ、今後の計画や改善に生かすことです。

🧭 FMの財務管理とは?

公式ガイドでは、FMの財務管理を大きく次の三つに整理しています。

  1. FM組織における予算管理
  2. ファシリティコストと施設資産の管理
  3. 社内課金の仕組みづくりと、関係部門への財務データ提供

これらの数字を集めること自体が目的ではありません。

予算と実績の差、施設ごとのコスト、資産の状態などを分析し、中長期の計画や予算配分、修繕・更新・投資の判断へつなげることが、FMの財務管理の役割です。

🐥:予算を見るだけじゃなくて、建物や設備そのものの価値も管理するんだね。

🐔:うむ。毎年使うお金と、長く使う資産の両方を見る必要があるのじゃよ。

📊 FMの予算は中長期実行計画からつくる

FMの予算管理で重要なのは、中長期実行計画と毎年度の予算を連動させることです。

建物や設備は、何年、何十年という長い期間にわたって使用します。大規模改修や設備更新も、計画を立ててから実施するまでに複数年かかることがあります。

そのため、FMの予算を単年度だけで考えると、将来必要になる修繕や更新を見落としたり、特定の年度に大きな支出が集中したりするおそれがあります。

まず中長期実行計画で、今後どの施設を維持し、いつ修繕・更新し、どこへ投資するのかという道筋を描きます。そのうえで、計画を実行するために、その年度に必要な仕事と金額を予算へ落とし込みます。

つまり、毎年度の予算は、中長期実行計画から切り離された一年分のお金ではありません。将来の計画を、その年に実行できる形へ具体化したものです。

FMの予算には、たとえば次のようなものがあります。

  • 新築、移転、大規模改修などのプロジェクト予算
  • 光熱費、賃借料、清掃、警備などのファシリティコスト
  • 点検、修繕、設備更新などの維持保全予算
  • FMに関するデータ管理や情報システムの予算
  • FM組織を運営するための予算

予算を立てたあとは、実績や施設の状態、経営環境の変化を確認します。計画とのずれが生じた場合は、当年度の対応を考えるだけでなく、中長期実行計画への影響も確認します。

たとえば、設備更新を一年延期すれば、今年度の支出は減ります。しかし、その間の故障リスクや修繕費が増え、翌年度以降の計画に影響するかもしれません。

反対に、更新を前倒しすれば、当年度の支出は増えても、将来の修繕費やエネルギーコストを抑えられる可能性があります。

FMの予算管理では、目の前の一年だけでなく、施設の将来まで見渡して判断することが大切です。

🐥:一年分の予算だけを見るのではなく、もっと長い計画の中で今年の役割を考えるんだね。

🐔:うむ。予算は未来への手紙じゃ。そして中長期実行計画は、その手紙をどこへ届けるのかを示す地図なのじゃよ。

🔍 予実管理とは?

予実管理とは、事前に立てた予算と、実際に発生した金額を比較し、その差と理由を確認することです。

たとえば、年間修繕費として1,000万円を見込んでいたのに、実績が1,200万円になったとします。

この場合、差額の200万円を確認するだけでは十分ではありません。

  • 想定していなかった故障が起きたのか
  • 工事費や資材価格が上昇したのか
  • 修繕する設備が計画より増えたのか
  • 工事内容や発注方法に改善点があるのか
  • 当初の予算そのものが現状に合っていたのか

こうした背景を調べることを、差異分析といいます。

予算を超えたら、すべて悪いの?

予算超過は、必ずしも悪いことではありません。

安全上必要な修繕を前倒しした場合や、災害への対応が必要になった場合など、支出が増えたことに合理的な理由があるケースもあります。

反対に、実績が予算を下回っていても、必要な点検や修繕を先送りした結果であれば、よい状態とはいえません。

差額だけで判断せず、なぜその数字になったのかを確かめることが重要です。

🐥:予算より少なければ、必ずよいわけでもないんだね。

🐶:はい。必要な仕事を行った結果なのか、行わなかった結果なのかで、数字の意味は変わります。

🌦️ 予算は社会や経済の変化にも動かされる

FMの予算は、社内の事情だけで決まるものではありません。

たとえば、次のような外部環境の変化から影響を受けます。

  • 建材や設備価格の上昇
  • 電気、ガス、燃料などの価格変動
  • 人件費や委託費の上昇
  • 為替レートの変化
  • 法律や基準の改正
  • 補助金や支援制度の変更
  • 災害や異常気象の発生

予算を立てた時点では想定できなかった変化が起これば、計画どおりに進まないこともあります。

そこで、予算を一度決めたら終わりにせず、実績や外部環境を確認し、必要に応じて計画や見通しを見直します。

🐔:予算は未来への手紙じゃ。だが、未来の天気まですべて書き当てることはできん。

🐥:だから、届く途中で地図を見直すんだね。

🏷️ ファシリティコストをまとめて把握する

ファシリティコストとは、土地、建物、設備、サービスなど、ファシリティを保有・賃借し、使用するためにかかる費用です。

しかし、ファシリティに関する費用は、光熱費、賃借料、修繕費、清掃費、警備費など、さまざまな勘定科目や部門に分かれていることがあります。

情報がばらばらのままでは、会社全体でいくらかかっているのか分かりません。

そこでFM組織は、財務部門と連携しながら、ファシリティコストを一元的に集めて管理します。

さらに、次のような単位で比較すると、改善点を見つけやすくなります。

  • 建物ごとのコスト
  • 部門ごとのコスト
  • 1平方メートル当たりのコスト
  • 利用者1人当たりのコスト
  • 前年度や他施設との比較

コストを下げることだけが目的ではありません。

必要な品質や安全性を保ちながら、経営にとって納得できる使い方になっているかを確認します。

長い時間軸で比べるLCC

ファシリティコストを考えるときは、単年度の費用だけでなく、LCC(ライフサイクルコスト)の視点も重要です。

LCCとは、建物や設備を取得してから、運用、点検、修繕、更新を経て、最終的に廃棄・解体するまでにかかる費用の総額です。

たとえば、二つの設備を比較したとき、購入価格が安い設備の方が一見すると有利に見えるかもしれません。

しかし、安い設備のエネルギー消費量が多く、故障しやすく、短い期間で交換が必要になるなら、長期的な総額は高くなる可能性があります。

反対に、購入時の価格が高くても、省エネルギー性能が高く、修繕が少なく、長く使える設備なら、LCCでは有利になることがあります。

LCCでは、主に次のような費用を含めて考えます。

  • 企画・設計・取得にかかる費用
  • 建設・購入・設置にかかる費用
  • 光熱費や運用サービスなどの費用
  • 点検・保守・修繕にかかる費用
  • 改修・更新にかかる費用
  • 廃棄・撤去・解体にかかる費用

FMの財務管理では、目の前の購入価格や当年度の予算だけで判断せず、LCCを使って、長期的にどの選択が経営にとって合理的かを比較します。

さらに、複数の修繕・更新・投資案件についてLCCを比較すれば、限られた予算をどこへ優先的に配分するかを検討できます。

このように、LCCは設備や施設の選択だけでなく、FMの予算配分や投資判断を経営者へ説明する根拠にもなります。

🐥:最初に安く買えたかどうかだけでは、ほんとうにお得か分からないんだね。

🐔:うむ。入口の値札だけでなく、使い終わるまでにかかるお金を見る。それがLCCの考え方なのじゃ。

🏢 施設資産を管理する

建物や設備には、日々の費用だけでなく、会社が保有する資産としての側面があります。

土地、建物、設備、内装、備品などについて、何を所有し、いつ取得し、現在どのような状態にあるのかを、FM組織と財務部門が連携して把握することが大切です。

大規模改修や設備更新、撤去などを行った場合、FM組織は、工事の内容、対象となる建物や設備、完成時期、取得・更新・撤去した資産など、現場でなければ分からない情報を整理し、財務部門へ提供します。

その情報をもとに、財務部門が会計上の判断を行い、必要に応じて固定資産台帳を更新します。

また、建物や設備は、使用や時間の経過とともに価値が減っていきます。この価値の減少を、決められた期間に分けて費用として計上する仕組みが減価償却です。減価償却を含む正式な会計処理は、財務・経理部門が担当します。

FM組織は会計処理そのものを行うのではなく、施設の実態と工事の内容を正確に伝え、現場の状態と帳簿上の情報が食い違わないように支えます。

🐥:FM組織が台帳を書き換えるのではなく、財務部門が正しく処理できるように、現場の情報を届けるんだね。

🐔:そのとおりじゃ。FM組織と財務部門が、それぞれの専門性を持ち寄って、施設の実態と会社の数字を結びつけるのじゃよ。

🔄 社内課金でFMコストを見える化する

社内課金とは、ファシリティを利用する部門に、使用面積や利用人数などに応じて費用を配分する仕組みです。

ここでいう課金は、社外の顧客へ請求書を発行することではありません。会社全体で発生したファシリティコストを、社内の各部門へどのような基準で振り分けるかという考え方です。

たとえば、オフィスの費用を次のような基準で配分します。

  • 使用している面積
  • 利用人数
  • 使用している設備やサービス
  • 実際に発生した費用

社内課金の目的は、単に費用を分けることではありません。

どの部門が、どのファシリティを、どれだけ利用し、そのためにどの程度のコストが生じているのかを見える化することにあります。

各部門が、自分たちの使用する場所やサービスのコストを把握できれば、「使っていないスペースはないか」「必要以上の設備やサービスを利用していないか」と考えるきっかけになります。

このように、社内課金には、利用部門のコスト意識を高め、ファシリティの使い方を見直す行動につなげる役割があります。

さらに、社内課金によって得られた部門別の使用面積、利用人数、コストなどのデータは、FM部門が予算を要求する際にも役立ちます。

利用実態とコストの関係が明らかになれば、翌年度にどれだけの予算が必要なのか、なぜ修繕や設備更新、レイアウト変更などを行う必要があるのかを、数字に基づいて説明できます。

つまり、社内課金は、FM部門の予算要求を単なる見込みや要望ではなく、実際の利用状況とコストに裏づけられたものにします。必要な予算の正当性を示す根拠にもなるのです。

😸:オレの寝床代も、使った面積で計算されるのかニャ。

🐶:ねこさんは複数の寝床を使っているので、利用実態の調査から始める必要がありそうですね。

🐥:社内課金は、お金を分けるだけではなく、使い方を見直したり、次の予算を考えたりするための仕組みなんだね。

🐔:そのとおりじゃ。コストを見えるようにすることで、初めて次の判断ができるのじゃよ。

🤝 財務部門などへデータを届ける

FM組織は、自分たちの業務に使うためだけに財務データを管理するのではありません。

施設に関する情報を、財務部門や経理部門など、必要とする部署へ提供する役割もあります。

たとえば、次のような情報です。

  • 建物や設備の取得、改修、廃棄に関する情報
  • ファシリティコストの内訳
  • 固定資産台帳の更新に必要な情報
  • 部門別の使用面積や利用人数
  • 社内課金に必要な配分データ
  • 将来の修繕や設備更新に必要な見通し

財務部門は会社全体のお金を管理していますが、建物の使われ方や工事の詳しい内容まで常に把握できるとは限りません。

一方、FM組織は施設の現状を把握していますが、正式な会計処理は財務部門が担当します。

両者が情報を持ち寄ることで、現場の実態と会社の数字を一致させることができます。

📚 ポイントまとめ

  • FMの財務管理は、予算、コスト、施設資産などの情報を把握・分析し、計画や経営判断へつなげる仕事
  • FMの年度予算は、中長期実行計画をその年度に実行できる形へ具体化したもの
  • 予実管理では、予算と実績の差だけでなく、その理由を分析する
  • 予算超過が必ず悪く、予算を下回れば必ずよいとは限らない
  • ファシリティコストを一元的に把握し、施設や部門ごとに比較する
  • 現場の建物や設備と、固定資産台帳などの情報を結びつける
  • 社内課金は、部門ごとの利用状況とFMコストを見える化し、利用部門のコスト意識を高めるとともに、FM予算や改善策を説明する根拠になる
  • 財務部門などへ必要なデータを提供し、現場と会社の数字をつなぐ

🌱 今日のまとめ

数字は、結果だけを記録した無表情な記号ではありません。

FMの財務管理では、中長期実行計画と毎年度の予算を結び、将来の改修や設備更新まで見通しながら、お金の使い方を考えます。

修繕費が増えた数字の裏には、設備の老朽化があるかもしれません。電気代が下がった数字の裏には、省エネルギーの工夫があるかもしれません。予算が使われなかった数字の裏には、必要な工事の先送りが隠れていることもあります。

FMの財務管理では、こうした数字の背景を読み解き、次の予算、施設の改善、経営判断へつなげます。

数字は誰かを責めるための材料ではなく、現在地を知り、次の一歩を考えるための手がかりなのです。

🐥:数字を見るって、建物や設備に何が起きたのかを読むことなんだね。

🐔:うむ。数字の向こうにある出来事を読み、未来の計画へつなぐ。それがFMの財務管理なのじゃよ。


🎮 次回予告:第5章⑤「FMのデータ管理とは?情報を一元化して判断に生かす」

FMには、建物、設備、コスト、利用状況、修繕履歴など、たくさんの情報があります。

次回は、ばらばらに存在する情報をどのようにまとめ、必要な判断へ生かすのかを学びましょう。

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📖 参考資料・関連情報

参考資料

  • 公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会編『公式ガイド ファシリティマネジメント』
    • 第5章「統括マネジメント」
    • 5.4「FMの財務管理」(94~96ページ)
    • a.「FMの財務管理とは」
    • a.(1)「FM組織における予算管理」
    • a.(2)「ファシリティコストと施設資産の管理」
    • b.「FM関連の財務データ提供」
    • b.(1)「社内課金の仕組みづくりとデータ提供」
    • b.(2)「財務部門など関係部門へのデータ提供」

この記事では、上記の内容をもとに、FMの予算管理、予実管理、ファシリティコスト、施設資産、社内課金、関係部門への財務データ提供について、初心者向けに整理しています。

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