FMの目標管理とは、組織の目標を定め、そのための施策を実行し、進み具合や達成状況を確かめることです。
前回は、FMの目標を「品質」「財務」「供給」の3つの視点から考えました。
けれども、目標は立てただけでは実現しません。何を、いつまでに、どのように行うのかを決め、実行した結果を評価し、次の改善へつなげる必要があります。
今回は、目標を行動へ変えるための「FMの目標管理」を見ていきましょう。
🎯 FMの目標管理では何をするの?
🐥ぴよまる:目標を決めたら、あとはみんなで頑張れば達成できるのかな?
🐔にわのとりさん:頑張る気持ちは大切じゃ。しかし、それだけでは途中で道に迷ってしまうかもしれん。目標までの道筋を決め、進み具合を確かめる必要があるのじゃ。
ここでクイズです。
FMの目標管理について、最も適切な説明はどれでしょうか?
- A.目標を決めたら、達成するまで変更しない
- B.目標と計画を定め、実行・評価・改善を続ける
- C.達成しやすい目標だけを選び、すべて成功にする
🐥:予定どおりに進まないこともあるから、ぼくはBだと思うな。
😸うちのねこさん:Cなら「一日に3回昼寝する」という、確実に達成できる目標を提案するニャ。
🐶うらのいぬさん:正解は、B.目標と計画を定め、実行・評価・改善を続けるです。
目標管理では、目標を決めるだけでなく、施策を実行し、その進み具合や結果を確認します。達成できなかった場合は原因を考え、目標や計画を見直して、もう一度取り組みます。
🧭 MBOは「目標による管理」という考え方
FMの目標管理には、MBO(Management by Objectives)という考え方が用いられています。日本語では「目標による管理」と訳されます。
MBOは、経営計画にもとづいて組織の目標を設定し、その目標を実現するための施策と達成状況を管理する考え方です。
FMでは、組織の経営戦略を受けて、品質・財務・供給の目標を設定します。そして、具体的な施策を実行し、どこまで達成できたかを確かめます。
🐥:建物だけを見て、FM部門が好きな目標を決めるわけではないんだね。
🐔:そのとおりじゃ。経営がどこへ向かおうとしているのかを踏まえて、ファシリティが何を支えるべきかを考えるのじゃよ。
🪜 FMの目標管理を進める6つの手順
公式ガイドでは、目標管理の基本的なプロセスを、次の6つに整理しています。
- 目的を明らかにする
- 事実をつかむ
- 計画案を立て、対策を検討する
- 計画を決め、目標を設定する
- 計画を実施する
- 計画を評価し、改善方針を立てる
それぞれの役割を見てみましょう。
1.目的を明らかにする
最初に、「何のために取り組むのか」を明らかにします。
例えば、会議室の使い方を改善する場合でも、目的が分からなければ、会議室を増やすべきなのか、予約方法を変えるべきなのか判断できません。
「必要なときに会議室を使える環境をつくり、仕事を円滑に進める」といった、取り組む理由を確認します。
2.事実をつかむ
次に、現在どのような状態になっているのかを調べます。
このときに役立つのが、次の視点です。
- Why:なぜ問題になっているのか
- What:何が起きているのか
- Where:どこで起きているのか
- When:いつ起きているのか
- Who:誰に影響しているのか
- How:どのような状態なのか
- How much:量や費用はどのくらいか
会議室であれば、予約率、実際の利用率、利用が集中する時間帯、空予約の件数などを調べます。
🐥:「会議室が足りない気がする」だけで、すぐ増やしてはいけないんだね。
🐶:はい。事実を調べると、部屋数ではなく予約方法に問題があると分かるかもしれません。
3.計画案を立て、対策を検討する
集めた事実をもとに、どのような方法で問題を解決できるかを考えます。
会議室の例なら、次のような案が考えられます。
- 予約ルールを見直す
- 利用開始時のチェックインを導入する
- 一定時間使われない予約を自動で取り消す
- 大きな会議室を分割して使えるようにする
- オンライン会議用の小さな場所を増やす
一つの案に飛びつかず、効果、費用、実施しやすさなどを比較します。
4.計画を決め、目標を設定する
検討した案から実施する方法を選び、具体的な目標を設定します。
例えば、次のように表します。
3か月以内に予約ルールを見直し、予約されたまま使われない会議室を半分に減らす。
「何を」「いつまでに」「どのくらい」実現するのかを決めると、達成状況を確かめやすくなります。
5.計画を実施する
決めた計画を、実際の行動に移します。
新しい予約ルールを周知し、システムを設定し、利用者が困らないよう案内します。担当者、日程、予算なども確認しながら進めます。
6.計画を評価し、改善方針を立てる
計画を実行したあと、目標を達成できたか評価します。
達成できなかった場合は、予算や期間、対策の内容などを見直し、新しい目標や計画を設定します。
達成できた場合も、そこで終わりではありません。さらに高い目標を設定できないかを考え、次の成長へつなげます。
📊 KPIは進み具合を確かめる道具
FMの目標管理では、目標の達成状況を確かめるために、KPIが使われることがあります。
KPIは、目標そのものというよりも、目標に向かって順調に進んでいるかを測るための指標です。
例えば、FMでは次のような数値が考えられます。
- エネルギー使用量
- ファシリティコスト
- 会議室や座席の利用率
- 不具合の発生件数
- 修繕の完了率
- 苦情件数や対応時間
- 利用者満足度
- CO₂排出量
ただし、測りやすい数字なら何でもよいわけではありません。目標とのつながりがあり、次の判断や改善に役立つ指標を選ぶことが大切です。
😸:昼寝時間を測っても、会議室の改善には役立たないということニャ。
🐶:ねこさんの健康管理には使えるかもしれませんが、今回のKPIにはなりませんね。
🔄 FMの目標管理とPDCAの関係
FMの目標管理は、PDCAとも深くつながっています。
| PDCA | 目標管理で行うこと |
|---|---|
| Plan | 目的と現状を確認し、目標と計画を決める |
| Do | 決めた施策を実行する |
| Check | 進み具合と達成状況を評価する |
| Act | 原因を振り返り、改善方針を決める |
評価によって見つかった課題は、次のFM戦略や中長期実行計画へ反映されます。
重要な経営課題に関わる場合は、FM部門から経営側へ改善方針を提案し、経営戦略の見直しにつながることもあります。
🐥:FMは経営から目標を受け取るだけでなく、現場で分かったことを経営へ返すこともあるんだね。
🐔:うむ。上から下へ一方通行で流れるのではなく、評価と改善を通して、情報が行き来するのじゃ。
🌀 スパイラルアップは「次の高さへ進むこと」
PDCAを繰り返す目的は、同じことを何度も行うことではありません。
評価から学び、次の計画をよりよいものにすることで、前回よりも高い水準を目指します。このように、改善を重ねながら段階的に成長することを「スパイラルアップ」といいます。
目標を達成できなかったときも、すべてが失敗になるわけではありません。
なぜ達成できなかったのかを調べ、目標や方法を見直すための材料にできれば、次の一歩につながります。
このように、FMの目標管理は、評価と改善を次の計画へつなげながら進みます。
🐥:目標管理って、できた人に丸、できなかった人にバツをつけるためのものではないんだね。
🐔:そうじゃ。現在地を確かめ、次にどの道を進むかを決めるための仕組みなのじゃよ。
📚 ポイントまとめ
- FMの目標管理は、組織の目標と施策を定め、進み具合や達成状況を管理すること
- MBOは「目標による管理」という考え方
- 目標管理は、目的の確認から評価・改善までの6つの手順で進める
- KPIは、目標に向かう進み具合を測るための指標
- 評価結果は、次のFM戦略や中長期実行計画へ反映する
- 改善を重ねて、さらに高い目標へ進むことがスパイラルアップ
🌱 今日のまとめ
FMの目標管理は、数字を掲げて人を急がせるための仕組みではありません。
経営が目指す方向をFMの目標へ落とし込み、具体的な施策を実行し、その結果から学んで次の改善へつなげる仕組みです。
第4章では、FMの標準業務を5つの大きな仕事として捉え、8ユニットに分け、品質・財務・供給の目標を定め、その達成状況を管理するところまで学びました。
ばらばらに見えたFMの仕事が、ここで一つの循環としてつながりました。
次回は、第4章で学んだ内容をクイズで振り返ります。
🎮 次回予告:第4章まとめ
FM入門・第4章まとめ|4つの基本をクイズでおさらい
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📖 参考資料・関連情報
- 『公式ガイド ファシリティマネジメント』第4章「FMの体系」4.3「FMの目標管理」
- 同 4.3.1「目標管理の考え方」
- 同 4.3.2「FMの目標管理」
- 公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会
日本におけるFMの普及と、ファシリティマネジャーの育成を行っている公式団体です。同協会もFMを経営基盤に関わる活動として扱っています。