設計段階のFMでは、建物が完成した後の使いやすさや管理のしやすさを、まだ建物が形になる前から考えます。
建物は、完成した日から突然始まるものではありません。
何のために必要なのかを考え、どのような建物にするかを計画し、設計して建てる。その後も、毎日使いながら点検や修繕を行い、ときには新しい使い方へ変えていきます。
このような建物の一生を見渡すことも、ファシリティマネジメント(FM)の大切な役割です。
今回は、建物がまだ形になる前に、FMが何を考えるのかを見ていきましょう。
🐥ぴよまる:FMって、完成した建物を管理する仕事だと思っていたよ。
🐔にわのとりさん:そう思われやすいが、実は建物を造ろうと考え始めたときから、FMの出番は始まっておるのじゃ。
🏗️ クイズ:FMはいつから建物に関わる?
会社が、新しい建物を造ることになりました。
FMの視点を取り入れるなら、いつから関わるのがよいでしょうか。
- A.建物を造ろうと考え始めたとき
- B.建物が完成し、利用が始まったとき
- C.設備が故障し、修理が必要になったとき
🐥:管理する建物ができてからだから、Bかな?
😸うちのねこさん:オレ専用の日当たりのよい場所を決めるときからニャ。つまり、いちばん最初から参加するニャ。
🐶うらのいぬさん:正解は、**Aの「建物を造ろうと考え始めたとき」**です。
建物の目的や利用する人、完成後の管理方法まで考えておくと、その内容を設計に反映できます。
建物が完成してからでは、簡単に直せないこともあります。だからこそ、FMは建てる前から未来を考えるのです。
😸:オレの答えも、ほぼ正解だったニャ。
🧭 建物にも「一生」がある
建物にも、始まりから終わりまでの長い時間があります。
おおまかには、次のような段階をたどります。
- 必要な建物について考える
- 計画・設計する
- 建設する
- 完成した建物を使う
- 点検・清掃・修繕を行う
- 改修したり、使い方を変えたりする
- 役目を終えた建物を解体・処分する
この一連の流れを、建物のライフサイクルといいます。
🐥:建物ができるまでだけじゃなくて、使い始めてからもずっと続くんだね。
🐔:うむ。建物は完成した瞬間がゴールではない。むしろ、そこから長い時間を人と一緒に過ごすのじゃ。
FMでは、今の建物を管理するだけでなく、このライフサイクル全体を見渡します。
長く安全に使えるか。手入れを続けられるか。仕事や暮らしの変化に対応できるか。最後に役目を終えるとき、環境へ大きな負担を残さないか。
建物の未来を考えると、建てる前に決めておきたいことが見えてきます。
📚 ポイントまとめ
- 建物には、計画から解体・処分までのライフサイクルがある
- FMは、完成後の管理だけを行うものではない
- 建物の一生を見渡し、将来を考えることがFMの役割である
📝 最初に考えるのは「なぜ建てるのか」
新しい建物を造ると聞くと、外観や間取りを思い浮かべるかもしれません。
しかし、その前に整理したいのが、何のために建てるのかという目的です。
たとえば、新しいオフィスを計画するときには、次のようなことを考えます。
- どのような仕事をする場所なのか
- 何人くらいが利用するのか
- 来客や地域の人も利用するのか
- 部門間の交流を増やしたいのか
- 集中して働く場所も必要なのか
- 災害時にも仕事を続ける必要があるのか
- 将来、人数や働き方が変わる可能性はあるか
必要な建物の姿は、その組織の目的や活動によって変わります。
「立派な建物を造ること」そのものが目的ではありません。そこで働く人や利用する人が活動しやすく、組織の目標を支えられる建物にすることが大切です。
🐥:最初に形を決めるんじゃなくて、建物の役割から考えるんだね。
🐶:はい。目的がはっきりすれば、必要な広さや設備、場所の使い方も考えやすくなります。
🤝 設計段階のFMは「使う人の視点」を届ける
建物の設計は、建築や設備の専門家が行います。
それでは、FMは何をするのでしょうか。
設計段階のFMが担う役割の一つは、経営者や利用者、建物を管理する人などの要望を整理し、使う側・運営する側の視点を設計へ届けることです。
たとえば、完成後の建物では、次のような仕事が続いていきます。
- 床や窓を清掃する
- 空調や照明を点検する
- 配管や設備を修理する
- 古くなった設備を交換する
- 利用人数の変化に合わせて部屋の使い方を変える
設計段階でこうした場面を想像しておけば、点検しやすい設備配置や、安全に作業できる通路、変更しやすい間取りなどを検討できます。
反対に、完成してから問題に気づいても、壁や天井を壊さなければ修理できないことや、大がかりな工事が必要になることがあります。
🐥:建てる前なら図面を直せるけど、完成してから直すのは大変なんだね。
🐔:その通りじゃ。未来の管理を想像し、設計へ伝えておく。それが建物を長く生かすことにつながるのじゃ。
🧩 設計段階のFMで考える「よい建物」とは?
きれいで印象的な外観も、建物の大切な魅力です。
けれども、FMは完成した日の姿だけではなく、その先の時間も見ています。
FMの視点から考えるよい建物には、大きく三つの見方があります。
1.使う人にとってよい建物
建物の目的に合っていて、安全で快適に利用できることが基本です。
移動しやすいか、必要な場所へ行きやすいか、室内の明るさや温度は適切かなど、実際に過ごす人の視点から考えます。
2.管理する人にとってよい建物
建物は、完成後も清掃、点検、修理、設備交換などを繰り返します。
設備が確認しやすい場所にあるか、安全に作業できるか、部品を運び込めるかなど、管理する人の動きまで考えておくことが大切です。
3.未来にとってよい建物
組織の人数や働き方、建物の用途は、年月とともに変わることがあります。
間取りや設備を変更しやすくしておけば、建物をすぐに壊さなくても、新しい使い方へ対応できる可能性が広がります。
省エネルギーや資源の有効活用など、環境への負担を小さくする視点も欠かせません。
😸:季節に合わせて、昼寝場所を変更できる建物がよい建物ニャ。
🐥:ねこさんの場合は、どんな建物でも快適な場所を見つけそうだけどね。
📚 ポイントまとめ
FMの視点で考えるよい建物とは、次のような建物です。
- 利用する人にとって安全で使いやすい
- 点検、清掃、修理を行いやすい
- 将来の変化に対応しやすい
- エネルギーや資源の無駄が少ない
- 組織の活動や目標を支えられる
💰 設計段階のFMが建設費だけを見ない理由
建物には、建てるとき以外にも多くの費用がかかります。
完成後には、電気や水道などの費用、清掃費、点検費、修繕費、設備の更新費などが発生します。最後には、解体や処分にも費用が必要です。
このように、建物の企画から設計、建設、運用、修繕、解体までにかかる費用を、ライフサイクルコストといいます。
建設費を安く抑えられても、完成後の電気代や修繕費が高くなれば、建物の一生を通した負担は大きくなるかもしれません。
一方、建設時に少し費用をかけても、省エネルギー性能が高く、点検や修理をしやすい建物なら、長い目で見た負担を抑えられる場合があります。
🐥:最初に安く建てれば、いつでもお得とは限らないんだね。
🐔:うむ。今日支払う金額だけでなく、これから何十年も続く費用や使いやすさを一緒に考える。それがFMの目なのじゃ。
📚 ポイントまとめ
- 建物の費用は、建設時だけに発生するものではない
- 運用、点検、修繕、設備更新、解体にも費用がかかる
- 最初の価格だけでなく、建物の一生を通して判断する
✨ 今日のまとめ
設計段階のFMは、建物の目的、利用する人、管理方法、将来の変化、環境への影響、長期的な費用などを考えます。
そして、使う側・運営する側の視点を、設計や建設に関わる人たちへ届けます。
🐥:建物が生まれてから世話をするだけじゃなくて、どんな建物として生まれるかも一緒に考えるんだね。
🐶:はい。最初に未来を想像しておくことが、完成後の使いやすさや管理のしやすさにつながります。
🐔:建物の一生を見渡し、最初の一歩を整える。それもFMの大切な役割なのじゃ。
😸:オレの昼寝場所も、最初の図面に入れておいてほしいニャ。
建物は、完成した瞬間がゴールではありません。
人がそこで活動し、長い時間を重ねていくための出発点です。FMは、その長い旅を見越して、建物がまだ形になる前から伴走を始めます。
🎮 次回予告:第3章② 建物を安全・快適に使うには?
~FMが支える建物の日常~
次回は、完成した建物を安全で快適に使い続けるために、FMが日々行っている運用・維持管理の仕事を見ていきます。
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📖 参考資料・関連情報
- 『公式ガイド ファシリティマネジメント』第3章「経営環境とファシリティマネジメント」3.1.1「地球環境保全」b「地球環境保全とFM」(2)「建物関連の環境負荷低減」
この講座は『公式ガイド ファシリティマネジメント』を主な参考資料としながら、FMを初めて学ぶ方が理解しやすいように、テーマの順序や章立てを独自に再構成しています。
🔗 公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会
日本におけるFMの普及と、ファシリティマネジャーの育成を行っている公式団体です。同協会もFMを経営基盤に関わる活動として扱っています。