FM組織体制とは、誰が何を担当し、どこまで判断でき、誰が責任をもつのかを明らかにして、FMを実際に動かせるチームをつくる仕組みです。
FMのすべての業務を、自社だけで担当する必要はありません。大切なのは、自社と外部の役割を整理し、全体を動かせる体制を整えることです。
前回は、統括マネジメントがFM全体をつなぐ司令塔であることを学びました。今回は、その司令塔が働くための組織体制について見ていきましょう。
🧩 FMを動かせるチームはどれ?
🐥ぴよまる:FMの担当者を集めれば、組織体制は完成するの?
🐔にわのとりさん:人を集めるだけでは、まだチームとはいえんのう。まずはクイズで考えてみよう。
Q.FM組織体制をつくるうえで、最も大切なことはどれでしょう?
- A.担当者の人数をできるだけ増やす
- B.業務の範囲と権限、責任を明確にする
- C.いちばん快適な席をねこさんに用意する
😸うちのねこさん:Cなら、組織への満足度が大きく上がるニャ。
🐥:ねこさんの満足度だけは上がりそうだけど……。ぼくはBだと思うな。
🐶うらのいぬさん:正解はBです。
担当者がいても、判断する権限がなければ仕事を前へ進められません。また、誰が責任をもつのか分からなければ、問題が起きたときに対応が遅れてしまいます。
FM組織体制では、担当する業務だけでなく、権限と責任を一緒に定めることが大切です。
🛠️ FM組織体制で明確にすること
FM組織体制とは、ファシリティに関する仕事を進めるために、業務の範囲、役割分担、権限、責任、指示や報告の流れを整えた仕組みです。
FMは、建物や設備を管理するだけの仕事ではありません。
経営者、財務部門、人事部門、情報システム部門、施設を利用する各部門、外部の専門会社など、多くの人や組織が関わります。
そのため、次のようなことを明確にする必要があります。
- 誰が方針を決めるのか
- 誰が予算を管理するのか
- 誰がプロジェクトを進めるのか
- 誰が日々の運用や維持保全を担当するのか
- 誰が結果を評価し、改善につなげるのか
- 誰に報告し、誰から承認を得るのか
🐥:名簿や組織図をつくるだけではないんだね。
🐔:うむ。実際に判断し、行動できるところまで仕組みにして、初めて組織体制ができたといえるのじゃ。
🔑 権限と責任はなぜセットなの?
FMを経営に役立てるためには、FM組織に仕事を任せるだけでなく、仕事を実行するための権限も必要です。
たとえば、建物をもっと有効に使う方法を考えても、必要な情報を集められず、関係部門と調整する権限もなければ、計画を進めることはできません。
一方で、大きな権限を与えるなら、その判断や結果に対する責任も明確にする必要があります。
権限だけがあって責任がなければ、判断が独り歩きするおそれがあります。責任だけを負わせて権限を与えなければ、担当者は動きたくても動けません。
権限と責任は、FM組織を動かす両輪なのです。
🏢 FM組織に必要な5つの統括権限
公式ガイドでは、ファシリティの企画・管理・活用に関する主な権限と責任を、次の5つに整理しています。
1.土地や建物など、施設資産を統括する
自社で保有する施設だけでなく、賃借して使用する施設も含めて、全体を把握します。
個々の建物を別々に見るのではなく、保有するか借りるか、どの施設をどう使うかを会社全体で考えます。
2.ワークプレイスを企画・管理・活用する
働く場所を、単に机や部屋の集まりとしてではなく、人が力を発揮し、情報を共有し、仕事を進めるための経営資源として考えます。
働き方や組織の変化に合わせて、必要な場所や使い方を整えます。
3.ファシリティコストを一元的に管理する
建物や設備にどれだけ費用がかかっているのかを、まとめて把握します。
部門ごとにデータが分かれていると、会社全体のファシリティコストが見えません。予算管理や改善のためには、必要なコスト情報を集める権限が必要です。
4.FMに関わるプロジェクトを一元的に管理する
新築、改修、移転などのプロジェクトを、ばらばらに進めないように管理します。
利用部門の要望、設計条件、予算、スケジュール、発注などをつなぎ、会社の方針に合ったプロジェクトにします。
5.運用・サービスと維持保全を統括する
清掃、警備、受付などの運用・サービスや、点検、修繕などの維持保全を統括します。
部門や施設ごとのばらつきを抑え、必要な品質を保ちながら、継続的な改善につなげます。
🐶:FM組織には、施設だけでなく、働く場所、費用、プロジェクト、日々の運営まで横につなぐ権限が必要なのですね。
🐔:そうじゃ。部門ごとの部分最適ではなく、会社全体の最適化を目指すための権限なのじゃよ。
🧭 FM組織は経営基盤を支え、人と事業をつなぐ
FM組織体制は、建物や設備を管理するためだけの仕組みではありません。
人事、ICT、財務などと同じように、複数の事業部門を横断して支えるマネジメント活動の一つであり、会社の経営基盤を強くする役割を担います。
企業の事業活動は、人だけでは続けられません。働く場所、設備、情報環境、安全性、必要なサービスなどが整って、初めて安定して仕事を進められます。
FM組織は、こうしたファシリティの現状、コスト、利用状況、将来の課題などを把握し、経営者の意思決定に必要な情報を提供します。
たとえば、施設を保有し続けるのか、借りるのか、改修するのか、移転するのか。どの設備を更新し、どこへ予算を配分するのか。こうした判断には、ファシリティを会社全体で見渡した情報が欠かせません。
FM組織が経営者の判断を支え、その判断を具体的な計画やプロジェクトへつなげることで、事業活動を継続的に支えることができます。
一方で、経営者の方針だけを現場へ伝えればよいわけではありません。
施設を実際に使う部門と話し合い、働き方の変化、使いにくい場所、必要な設備やサービスなど、データだけでは見えにくい課題を把握することも必要です。
そこで得た情報を経営者へ伝え、FM戦略や改善計画へ反映します。
🐥:FM組織は、経営者と利用部門の間で話を伝えるだけではないんだね。
🐶:はい。ファシリティの情報を集めて経営判断を支え、その判断を実際の仕事へつなげます。事業を続けられる環境を整えることも、大切な役割です。
🐔:経営と現場の間に立ち、両方の情報をつないで会社の土台を強くする。それがFM組織なのじゃよ。
👥 FM組織には3つの業務機能がある
企業の規模や事業内容によって、FM組織の形は異なります。すべての会社に共通する一つの正解があるわけではありません。
ただし、FMの業務機能は、大きく次の3つに分けて考えられます。
1.計画・管理の業務
統括マネジメント、FM戦略・計画、評価、改善などを担当します。
会社全体の方針を踏まえて計画を立て、予算を管理し、結果を評価して次の改善へつなげる、FM組織の中核となる機能です。
2.プロジェクト管理の業務
新築、改修、移転などのプロジェクトを実行します。
要求条件、予算、スケジュール、品質などを管理し、計画を具体的な形にします。
3.運営維持の業務
運用・サービスと維持保全を担当します。
建物や設備を安全で快適に使える状態に保ち、利用者に必要なサービスを提供します。
この3つをどのような組織で担当するかは、会社の事情に合わせて決めます。一つの部門にすべての人を集める場合もあれば、複数の部門や外部企業が分担する場合もあります。
🔄 インソースとアウトソースをどう選ぶ?
FMの仕事を進める方法には、自社の人材で行うインソースと、外部の会社へ委託するアウトソースがあります。
大切なのは、すべてを自社で行うか、すべてを外部へ任せるかという二者択一で考えないことです。
計画・管理、プロジェクト管理、運営維持という業務機能ごとに、次の点を検討します。
- 自社で判断すべきことは何か
- 社内に必要な知識や人材があるか
- 外部の専門性を活用した方がよい仕事は何か
- 必要な品質やコストをどのように管理するか
- 委託した仕事を誰が評価するか
特に、会社の方針を決めること、結果を評価すること、経営者へ報告すること、外部の会社へ指示することは、自社側に残す必要があります。
仕事を外部へ委託しても、FM組織の責任まで外部へ渡せるわけではありません。
📦 アウトソーシングとアウトタスキングの違い
外部委託は、外部へ任せる範囲によって、アウトソーシングとアウトタスキングに分けて考えることができます。
違いをひと言で表すと、次のようになります。
- アウトソーシング:業務のプロセス全体を、まとまりとして任せる
- アウトタスキング:業務の中から切り出した、個別のタスクを任せる
アウトソーシングは「プロセス全体」を任せる
アウトソーシングでは、決められた作業の実行だけでなく、企画、計画、運営、改善などを含む一連の業務を、まとまりとして外部へ委託します。
たとえば、建物の維持保全について、点検や修繕を実施するだけでなく、年間の保全計画を立て、業者を手配し、実施結果を評価して、次の改善案を考えるところまで任せる方法です。
外部の専門知識や運営能力を、業務のプロセス全体に活用できることが特徴です。
アウトタスキングは「個別の作業」を任せる
アウトタスキングでは、業務全体の企画や管理は自社で行い、その中にある特定の作業だけを外部へ委託します。
たとえば、年間の保全計画や実施方法は自社のFM組織が決め、その計画に基づく設備点検、清掃、警備などの個別作業を専門会社へ任せる方法です。
何を、いつ、どのように行うかという全体の管理は自社に残し、切り出したタスクの実行を外部の力で補います。
🐥:レストランにたとえると、献立づくりから調理、片づけまで厨房の運営をまとめて任せるのがアウトソーシングで、お皿洗いだけをお願いするのがアウトタスキング、という感じかな?
🐶:はい。そのように考えると、任せる範囲の違いが分かりやすいですね。
ただし、アウトソーシングでプロセス全体を委託しても、会社の目的や方針を決めることまで外部へ任せるわけではありません。
どのような成果を求めるのかを示し、委託先の仕事を確認・評価する最終的な責任は、自社のFM組織に残ります。
どちらの方法を選ぶ場合も、任せる業務の範囲、求める品質、報告方法、評価方法を明確にすることが大切です。
📚 ポイントまとめ
- FM組織体制とは、業務の範囲、役割、権限、責任、指示や報告の流れを整えること
- 権限と責任をセットにすることで、FM組織は実際に判断して行動できる
- FM組織には、施設資産、ワークプレイス、コスト、プロジェクト、運営維持を統括する権限が必要
- FM組織は経営基盤を支え、経営者の意思決定と事業活動の継続を支援するとともに、経営と利用部門をつなぐ
- FMの業務機能は、計画・管理、プロジェクト管理、運営維持の3つに分けて考えられる
- 業務ごとにインソースとアウトソースを選び、外部委託する範囲と自社に残す役割を明確にする
🌱 今日のまとめ
良いFM組織体制とは、立派な組織図をつくることではありません。
誰が判断し、誰が実行し、誰が結果に責任をもつのかを明らかにし、経営者、利用部門、専門家、外部企業が同じ目的へ向かえる仕組みをつくることです。
社内で業務を進める場合も外部の力を借りる場合も、目指す方向を定め、全体をつなぐ役割と最終的な責任は、自社のFM組織に残ります。
チームの強さは、人数の多さではなく、役割とつながりの確かさから生まれるのです。
🐥:みんなが自分の役割を知って、必要なときに相談できるチームなら、FMもきちんと動きそうだね。
🐔:そのとおりじゃ。権限と責任を明らかにし、人と仕事をつなぐ。それがFM組織体制の土台なのじゃよ。
🎮 次回予告:第5章③「FM組織の運営とは?PDCAで業務をつなぎ改善する仕組み」
チームの形ができたら、次はそのチームを実際に動かします。
次回は、FMの各業務を統括し、評価と改善を通して組織を成長させる方法を学びましょう。
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📖 参考資料・関連情報
参考資料
- 公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会編『公式ガイド ファシリティマネジメント』
- 第5章「統括マネジメント」
- 5.2「FM組織体制の構築」(88~92ページ)
- 5.2.1「FMの権限と責任の確立」
- 5.2.2「FMの組織体制の構築」
- 5.2.3「ソーシング戦略と体制」
- 図表5.2.1「FMの権限と責任」
- 図表5.2.2「経営基盤強化のマネジメントの課題」
- 図表5.2.3「FMの業務組織モデル」
この記事では、上記の内容をもとに、FM組織に必要な権限と責任、経営者や利用部門との連携、業務機能ごとの役割、インソースとアウトソースの考え方を初心者向けに整理しています。
関連情報
- 公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会
日本におけるFMの普及と、ファシリティマネジャーの育成を行っている公式団体です。同協会もFMを経営基盤に関わる活動として扱っています。