財務目標の改善とは、施設への投資、使い続ける費用、保有する資産の変化を踏まえ、これからのお金の目標を見直すことです。
前回までに、施設の広さや用途を考える「供給目標」と、安全性や使いやすさを考える「品質目標」の改善を見ました。施設を変える計画は、お金の計画ともつながっています。今回は、その関係を一緒にたどりましょう。
🐥ぴよまる:会議室を増やすなら工事費が必要だよね。でも、お金の話はそれで終わりなのかな?
🐔にわのとりさん:増やした部屋は、その後も使い続けるじゃろう。最初にかかるお金と、使い続けるお金の両方を見たいのう。
🐥 まずは3択クイズ!増床するとき、何を見る?
働く人が増える見込みとなり、会社はオフィスの増床を検討しています。財務目標の改善を考えるとき、適切なのはどれでしょう?
- A.増床に必要な工事費だけを見込む。
- B.工事費に加え、増床後の光熱費や維持管理費なども見込む。
- C.増床が正式に決まるまで、お金のことは考えない。
😸うちのねこさん:部屋が増えたら、掃除する場所も明かりをつける場所も増えるニャ。
🐥❓:あっ、完成した後にも費用がかかるんだ。
🐶うらのいぬさん:正解はBです。増床には施設投資が関わり、その後のファシリティコストも変わります。供給目標を見直すなら、財務目標にもその変化を反映させます。
💰 施設のお金を、三つの角度から見る
第9章の財務評価では、ファシリティコスト、施設資産、施設投資などを確かめました。ここでは、その項目を身近な問いに置き換えてみます。
| お金を見る角度 | 考えること | 公式ガイドで扱う項目 |
|---|---|---|
| 始めるとき | 増床や改修に、いくら必要? | 施設投資 |
| 使い続けるとき | 光熱費や維持管理費はどう変わる? | ファシリティコスト |
| 施設を保有するとき | 土地や建物をどう保有し、活用する? | 施設資産 |
これは三つの項目を理解するための整理です。一つの計画が複数の項目に関わることもあります。
🐥:最初の費用だけじゃなく、その後の費用と、持っている施設のことも見るんだね。
🐔✨:うむ。建物を変える判断には、時間の広がりがあるんじゃよ。
🧮 増床の費用を、簡単な数字で考えてみよう
たとえば、オフィスの増床について、次の費用を見込むとします。
| いつかかる? | 費用の例 | 仮の金額 |
|---|---|---|
| 始めるとき | 工事・移転費用 | 合計1,000万円 |
| 使い続けるとき | 追加の賃料・光熱費・維持管理費 | 年120万円 |
最初の5年間に追加でかかる支出の例
1,000万円 + 120万円 × 5年 = 1,600万円
初期費用だけを見る場合と、使い始めてからの費用まで見る場合では、計画の見え方が変わります。さらに、将来の修繕費がどれくらい必要かも確かめたいところです。
これは考え方をつかむための仮の数字です。年120万円には表に示した継続費用をまとめて含めており、二重に足しません。実際の計画では、契約条件や修繕の時期、施設を使う期間などを確認します。
😼うちのねこさん:最初の値札だけ見ていたら、後から届く請求書にびっくりするニャ。
🐥💡:数字を未来まで並べてみると、判断の材料が増えるんだね。
🔗 供給・品質・財務は、どうつながる?
公式ガイドでは、財務目標の改善は、供給目標や品質目標の改善に伴うプロジェクトと連動する場合が多いと説明しています。関係を簡単に並べると、次のようになります。
| 考える順番 | 問い | 増床する場合 |
|---|---|---|
| ① 供給 | どれだけの場所が必要? | 人数と使い方から、必要な面積を考える。 |
| ② 品質 | どんな状態で使いたい? | 安全性や働きやすさの条件を考える。 |
| ③ 財務 | どう支え続ける? | 初期費用と、その後の費用を見込む。 |
三つは一度決めたら終わりではありません。費用の見通しを受けて面積や方法を再検討し、必要な品質を保てるか確かめながら、計画を整えていきます。
🐥❓:じゃあ、「部屋を増やしたい」と思っても、お金の見通しを見て方法を考え直すことがあるんだ?
🐶💡:はい。反対に、安全のために必要な改修なら、費用が増えることも踏まえて実現方法を考えます。財務目標の改善は、何でも安くするという意味ではありません。
😼:お金の話が、場所の話に戻ってくるんだニャ。
🧭 評価で見えた変化を、次の財務計画へ
財務評価で課題が見つかったときや、施設の供給・品質を変える方針が立ったときには、財務目標の見直しを検討します。改善方針はFM戦略・計画へ引き継がれ、中長期実行計画の財務計画として具体化されます。
たとえば使わなくなった施設を売却する場合、売却による収入だけを見ればよいわけではありません。施設資産の変化、売却に伴う費用、それまでかかっていた維持費なども整理します。具体的な金額や会計処理は、経理・会計部門などの専門担当者と連携して確認します。
🐥:FMが一人でお金の答えを出すんじゃなくて、施設の状況を整理して、判断につなげるんだね。
🐔:そうじゃ。何のために施設を変え、その後どう使うのか。その道筋と数字を結び付けるんじゃよ。
📚 ポイントまとめ
- 財務目標の改善では、ファシリティコスト、施設資産、施設投資の変化を踏まえて目標を見直す。
- 施設を増やすときは、初期費用だけでなく、使い続ける費用も考える。
- 供給や品質の改善は財務と連動し、お金の見通しも施策の検討に役立つ。
- 改善方針はFM戦略・計画へ引き継ぎ、中長期実行計画の財務計画として具体化する。
☀️ 今日のまとめ
施設を変えると、お金の流れも変わります。最初にかかる費用、使い続ける費用、持っている施設への影響を見渡すと、計画の輪郭がはっきりします。
財務目標の改善は、数字を小さくするためだけの仕事ではありません。必要な場所と品質を、これからも支えられる計画へつなぐ仕事です。
🐥✨:ぼく、増床の1,000万円だけを見ていたよ。その後の5年間も考えると、選び方が変わりそうだね。
😸:使い始めた後のことまで考えてこそ、未来の地図になるニャ。
🎮 次回予告
品質・財務・供給の目標を見直しても、それを支えるFMの仕事の仕組みに課題があったらどうでしょう。次回は、統括マネジメントにおける改善と内部監査を見ていきます。
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📖 参考資料・関連情報
公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会編『公式ガイド ファシリティマネジメント』第10章「改善」
- 10.3.3「財務目標における改善方針の立案」
この記事では、公式ガイドに示されたファシリティコスト・施設資産・施設投資に関わる財務目標の見直しと、供給・品質の改善に伴う投資や費用の変化を確認しました。
増床費用の仮の数値例と、供給・品質・財務の関係を示した表は、初心者が三つの目標のつながりをつかめるように加えた独自の再構成です。
本記事は公式ガイドの内容を参考にしていますが、原文の文章・図表を引用したものではなく、筆者が独自に再構成した解説です。
- 公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会
日本におけるFMの普及と、ファシリティマネジャーの育成を行っている公式団体です。