FMとICT|グローバル化で施設管理はどう変わる?|第2章②

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海外にも拠点を持つ企業では、国や地域を越えて施設を管理する必要があります。

そこで重要になるのが、FMとICTのつながりです。ICTを活用すれば、遠く離れた建物の状態を確認したり、複数の施設のデータをまとめて比べたりできます。

けれども、すべての施設を同じ方法で管理すればよいわけではありません。

今回は、グローバル化がFMに与える影響と、ICTを施設の管理や改善にどう生かすのかを考えてみましょう。

グローバル化とFMをクイズで考えよう

🐶うらのいぬさん:それでは問題です。日本、タイ、フランスにオフィスを持つ会社が、施設の管理方法を見直すことになりました。FMの考え方として、最も適切なのはどれでしょう?

A.日本本社の管理方法を、そのまますべての拠点に適用する
B.各拠点へ完全に任せ、会社全体では情報を共有しない
C.共通の方針や確認項目を設け、各地域の法令や文化にも合わせる

🐥ぴよまる:国が違えば、法律や気候も違いそうだよね。でも、全部ばらばらだと会社全体の様子が分からないし……。ぼくはCだと思う!

🐶:正解は、Cの「共通の方針や確認項目を設け、各地域の法令や文化にも合わせる」です。

会社全体で安全や品質に関する方針を共有することは大切です。

一方、法令、気候、災害、働き方、建物の使われ方などは、国や地域によって異なります。

共通化する部分と、地域に合わせる部分を分けて考えることが必要です。

グローバル化でFMの仕事はどう変わる?

🐥ぴよまる:グローバル化って、外国の人と一緒に働くこと?

🐔にわのとりさん:それも一つじゃが、もう少し広い意味があるぞ。企業の拠点、取引先、人、情報などが、国境を越えてつながることも含まれるのじゃ。

企業が複数の国や地域で活動すると、FMが扱う施設も広い範囲に分かれます。

本社、支社、工場、物流拠点、研究所など、それぞれの施設には異なる役割があります。気候や法令、災害リスク、建築設備、働く人の文化や言語も同じではありません。

そこでFMには、会社全体の目的を踏まえながら、複数の施設を見渡す視点が必要になります。

たとえば、次のようなことを考えます。

  • 安全や品質について、どこまで共通の方針を設けるか
  • 各国・各地域の法令や商習慣へどう対応するか
  • 施設の面積、費用、利用状況をどのように比較するか
  • 災害や感染症、供給網の混乱にどう備えるか
  • 言語や文化、働き方の違いにどう配慮するか
  • 現地のFM担当者や委託先と、どのように情報を共有するか

🐥:全部を同じにするのが、グローバルな管理じゃないんだね。

🐔:うむ。共通のものさしを持ちながら、地域の違いも尊重する。それが大切なのじゃ。

国際規格は「共通の答え」ではなく「共通の枠組み」

複数の国や組織が協力するときには、同じ言葉で話すための枠組みが役立ちます。

FMのマネジメントシステムに関する国際規格として、ISO 41001があります。

ISO 41001は、FMを通じて組織の目的を支え、関係者のニーズや適用される要求事項へ継続的に対応するための仕組みを示しています。公共・民間を問わず、規模や所在地の異なる組織への適用を想定した規格です。

ただし、ISO 41001が世界中の施設について、一つの管理方法を指定しているわけではありません。

組織が目的や責任を明確にし、計画を立て、実行し、評価し、改善するための共通の枠組みです。

🐶うらのいぬさん:国際規格は、世界共通の正解集というより、違う組織どうしが話し合うための共通言語に近いものです。

FMとICTはどうつながる?

🐥ぴよまる:遠くにある施設をまとめて見るには、やっぱりパソコンやインターネットを使うの?

🐔:そのとおりじゃ。そこで役立つのがICTなのじゃよ。

ICTは「Information and Communication Technology」の略で、日本語では「情報通信技術」と呼ばれます。

FMでは、建物や設備に関する情報を集め、保存し、共有し、分析するためにICTが使われます。

たとえば、次のような活用方法があります。

  • 空調や照明の運転状況を確認する
  • 温度、湿度、電力使用量などをセンサーで測る
  • 点検や修理の記録を一か所にまとめる
  • 会議室や座席の利用状況を把握する
  • 複数拠点の維持費やエネルギー使用量を比較する
  • 不具合の連絡や作業の進み具合を共有する

🐥:建物の中で起きていることを、データにして見えるようにするんだね。

🐔:うむ。ただ集めるだけでは足りんぞ。データから何を読み取り、どう改善するかまで考えて、初めてFMに役立つのじゃ。

「建物がしゃべる」とはどういうこと?

設備に取り付けたセンサーから、温度、振動、電力使用量などのデータを集めると、離れた場所から状態を確認できる場合があります。

いつもと違う振動や温度上昇などが見つかれば、設備に異常が起きている可能性を調べるきっかけになります。

🐥:建物が、そろそろ点検してって教えてくれるみたい!

😸うちのねこさん:オレも、お皿の前に座って空腹という重要データを送信しているニャ。

🐶:ねこさんのセンサーは、かなり高性能ですね。

こうしたデータを分析して、故障する前に点検や部品交換を行う考え方を「予知保全」または「予測保全」と呼ぶことがあります。

ただし、データがあれば必ず故障を予測できるわけではありません。

何を測るのか、正常な状態と異常な状態をどう区別するのか、通知を受けたあと誰が確認するのかまで決めておく必要があります。設備によっては、定期的な点検や人による現場確認も欠かせません。

ICTを導入するだけでは改善にならない

FMとICTを結びつけるときに大切なのは、新しいシステムを導入すること自体を目的にしないことです。

目的が曖昧なままでは、便利になるどころか、入力作業や確認項目だけが増えてしまうこともあります。

FMでICTを活用するときは、次の順番で考えることが大切です。

1.解決したい課題を決める

設備の故障を減らしたいのか、エネルギー使用量を把握したいのか、点検記録を共有したいのかを明確にします。

2.必要な情報を集める

目的に合ったデータを、無理なく継続して集められる方法を考えます。

3.見える形に整理する

集めたデータを、担当者が理解して判断できる形にします。

4.改善につなげる

設備の運転方法や点検計画、施設の使い方などを見直します。

5.効果を確かめる

安全性、快適性、費用、業務負担などが本当に改善したかを確認します。

🐶:ICTは目的ではなく、判断と改善を助ける道具です。導入しただけでFMが完成するわけではありません。

便利になるほど安全への備えも必要

設備がネットワークにつながると、遠隔監視やデータ共有がしやすくなります。

その一方で、不正アクセス、情報漏えい、システム停止などのリスクも考えなければなりません。

また、人の居場所や施設の利用状況を詳しく記録する場合は、個人情報やプライバシーへの配慮も必要です。

  • 誰がデータを見られるのか
  • どの情報を、何のために集めるのか
  • どのくらいの期間保存するのか
  • システムが停止したとき、どう対応するのか
  • 機器やソフトウェアをどのように更新するのか

こうした運用まで決めておくことが、安全なICT活用につながります。

ICTで海外の施設をどうつなぐ?

グローバル化によって施設が各地に広がると、離れた拠点の情報を適切に集め、共有する必要が生まれます。

ICTを活用すれば、各拠点の面積、費用、利用状況、エネルギー使用量、修繕履歴などを、共通の項目で確認しやすくなります。

しかし、数字だけを並べて単純に優劣を決めるのは危険です。

寒い地域と暑い地域では空調に必要なエネルギーが異なります。工場と事務所では、設備も利用時間も違います。

🐥:同じ数字でも、施設の条件が違えば意味も変わるんだね。

🐔:そのとおりじゃ。データは答えそのものではない。施設の背景を理解し、よりよい判断をするための材料なのじゃよ。

今日のまとめ

  • グローバル化では、複数の国や地域にある施設を全体で考える必要がある
  • 共通の方針と、地域の法令・気候・文化への対応を組み合わせる
  • 国際規格は、世界共通の答えではなく、FMを運営・改善するための共通の枠組み
  • ICTは、施設の情報を集め、共有し、分析して改善につなげる道具
  • 予測保全には、適切なデータと分析、現場での確認が必要
  • ICTの活用では、サイバーセキュリティやプライバシーにも配慮する
  • データは数字だけで判断せず、施設ごとの条件や背景と一緒に読む

🐥ぴよまる:世界中の施設を同じ形にするのではなく、共通の地図を持ちながら、それぞれの土地に合う道を選ぶんだね。

🐔にわのとりさん:うむ。そしてICTは、その地図へ現在地を書き込む道具の一つなのじゃ。

🐶うらのいぬさん:大切なのは、技術を導入することではなく、それを人や組織の目的にどう役立てるかです。

次回予告

次回は、地球環境の保全と災害への備えにFMがどう関わるのかを考えます。

環境への負荷を減らしながら、災害が起きても大切な機能を守り、立ち直れる施設にするには何が必要なのでしょうか。

次回:環境と災害にFMはどう備える?|第2章③

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参考資料

※ICTによって実現できる機能や効果は、対象となる施設・設備、導入するシステム、取得できるデータ、運用体制などによって異なります。

※海外拠点の施設管理では、各国・各地域の法令、契約、規格、商習慣などを個別に確認する必要があります。

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