FMの目標とは、ファシリティマネジメントが目指す到達点を、具体的に示したものです。
前回は、FMの仕事を8つのユニットに分け、計画から実行、評価、改善へとつながる流れを学びました。
けれども、そのサイクルは、ただ回せばよいわけではありません。「どこを目指して進むのか」という目標が必要です。
今回は、FMの目標を考えるときの3つの柱、「品質」「財務」「供給」を見ていきましょう。
🎯 FMの目標とは、何を目指して決めるもの?
🐥ぴよまる:FMの仕事にも、ゴールがあるんだよね。「みんなが快適に使える建物にする」でいいのかな?
🐔にわのとりさん:それも大切じゃ。ただし、実際に仕事を進めるには、もう少し具体的な目標にする必要があるのじゃよ。
ここでクイズです。
FMの目標を考えるときの、3つの柱はどれでしょうか?
- A.設計・建設・解体
- B.品質・財務・供給
- C.食事・昼寝・日向ぼっこ
🐥:Cは、ねこさんの一日の目標じゃないかな。ぼくはBだと思うよ。
😸うちのねこさん:Cも暮らしの品質を高める、大切な三本柱だニャ。
🐶うらのいぬさん:正解は、B.品質・財務・供給です。
FMでは、施設やサービスの状態だけでなく、かかる費用や資産の状況、必要な施設やサービスが適切に用意されているかも考えます。
この3つを総合的に見ながら目標を決めることが重要です。
🧭 FMの目標と目的はどう違う?
「目的」と「目標」は似た言葉ですが、FMでは少し役割が異なります。
FMの目的は、長期的で、目指す方向を示すものです。
例えば、「働く人が力を発揮できる環境をつくる」「ファシリティを通じて経営に貢献する」といった、長い目で見た方向性が目的に当たります。
一方、FMの目標は、その目的を実現するために、一定の期間内に目指す具体的な到達点です。
例えば、次のように表します。
- 利用者満足度を高める
- エネルギー使用量を減らす
- 使われていないスペースを減らす
- 修繕費や運営費を適正な水準にする
🐥:目的が「どんな未来にしたいか」で、目標が「そこへ近づくために、どこまで進むか」なんだね。
🐔:うむ。目標には、期限や数値を加えると、達成できたかどうかを確かめやすくなるのじゃ。
🏢 FMの目標①「品質目標」とは?
FMの品質目標は、施設やサービスが、利用する人や社会にとって、どのような状態であるべきかを示すものです。
公式ガイドでは、品質を次の7つの視点に分けています。
1.品格性
建物が地域の景観に合っているか、組織のイメージやブランドを表現できているかを見る視点です。
2.快適性
室温、明るさ、空気環境、使いやすさなど、利用する人が健康で快適に過ごせるかを見る視点です。
3.生産性
仕事や活動を効率よく進められるか、必要な場所や設備を便利に利用できるかを見る視点です。
働き方や組織の変化に、柔軟かつ素早く対応できることも含まれます。
4.安全性
災害、事故、犯罪などに備え、安全を守れるかを見る視点です。非常時にも必要な機能を続けられるかという機能継続性も含まれます。
5.耐用性
建物や設備を長く使えるか、用途の変化や修繕、更新に対応しやすいかを見る視点です。
6.環境性能
省エネルギーや、建物の一生を通した環境負荷などを考える視点です。
7.満足度
施設を利用する人が、その環境やサービスをどのように感じているかを見る視点です。
🐥:品質って、きれいさや新しさだけではないんだね。
🐶:はい。安全、使いやすさ、環境への配慮、利用者の満足など、いくつもの面から捉えます。
💰 FMの目標②「財務目標」とは?
FMの財務目標は、ファシリティにかかる費用や資産、投資を、経営の視点から適切に管理するための目標です。
主に、次の4つの視点があります。
1.ファシリティコスト
施設を保有し、運営し、維持するために、どのくらいの費用がかかっているかを把握します。
単に費用を減らすのではなく、必要な品質を保ちながら適正化することが重要です。
2.施設資産
土地や建物を所有し続けることが適切か、資産の価値を保てているかを考えます。
3.施設投資
新築、改修、設備更新などへの投資が、どのような効果を生むのかを考えます。
4.ライフサイクルコスト
建物をつくるときの費用だけでなく、運用、修繕、更新、解体までを含めた、生涯にかかる費用を考えます。
😸:節約すればよいのではなく、必要な快適さとの相談なのニャ。
🐔:そのとおりじゃ。目先の修繕費を惜しんで大きな故障を招けば、長い目では費用が増えることもあるからのう。
📦 FMの目標③「供給目標」とは?
FMの供給目標は、組織が必要とする施設やスペース、サービスを、需要に合わせて適切に用意するための目標です。
主に、次の3つの視点があります。
1.需給対応性
必要な施設面積に対して、余りすぎたり、不足したりしていないかを見ます。
社員数が減ったのに広すぎるオフィスを使い続ければ余剰が生まれ、反対に狭すぎれば働きにくくなります。
2.施設利用度
用意されている施設やスペースが、有効に使われているかを見ます。
例えば、ほとんど使われていない会議室や、常に満室で予約できない会議室がないかを調べます。
3.サービス供給
清掃、警備、受付などのサービスが、必要な質と量で提供されているかを見ます。
🐥:供給というのは、電気や水を止めないことだけではないんだね。
🐶:はい。必要な施設、面積、サービスが、需要に対して多すぎず少なすぎず、適切に用意されているかを考えます。
非常電源や機能を継続する備えは、供給にも関わる場合がありますが、公式ガイドの分類では、品質目標の「安全性」や「機能継続性」として捉えるほうが分かりやすいでしょう。
⚖️ FMの目標は3つのバランスで考える
品質、財務、供給は、別々に存在するものではありません。
例えば、利用者の満足度を高めようとして設備やサービスを増やしすぎれば、費用が膨らむ可能性があります。
反対に、費用を減らすことだけを優先すれば、必要な点検や修繕が不足し、安全性や快適性を損なうかもしれません。
また、広く快適なオフィスを用意しても、使われていないスペースが多ければ、施設を有効に活用できているとはいえません。
| 目標 | 主な問い |
|---|---|
| 品質 | 安全で快適に使え、必要な機能を果たしているか |
| 財務 | 費用・資産・投資は経営上適切か |
| 供給 | 必要な施設・面積・サービスを過不足なく用意できているか |
🐥:一つだけを最高にするのではなく、3つを見ながら、その組織に合う状態を探すんだね。
🐔:うむ。経営戦略や利用者のニーズ、社会の変化によって、適切なバランスも変わる。だから目標は、一度決めたら終わりではないのじゃ。
📚 ポイントまとめ
- FMの目標は、FMの目的を実現するための具体的な到達点
- FMの目標には「品質」「財務」「供給」の3つがある
- 品質目標は、安全性、快適性、生産性、環境性能、満足度などを扱う
- 財務目標は、コスト、施設資産、施設投資、ライフサイクルコストを扱う
- 供給目標は、需給対応性、施設利用度、サービスの質と量を扱う
- 3つの目標は互いに関係するため、総合的なバランスが大切
🌱 今日のまとめ
FMの目標は、単に「建物をきれいに保つ」「費用を安くする」といった一方向のものではありません。
品質、財務、供給という3つの視点から現在地を確かめ、組織が目指す未来に合った到達点を決めます。
目標という旗が立つことで、計画、実行、評価、改善というFMの仕事が、同じ方向へ進めるようになります。
では、その目標を、どのような手順で決め、達成状況を確かめていくのでしょうか。
次回は、目標を施策や行動につなげ、評価と改善を繰り返す「FMの目標管理」を学びます。
🎮 次回予告:第4章④
FMの目標管理とは?目標を行動と改善につなげよう
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📖 参考資料・関連情報
- 『公式ガイド ファシリティマネジメント』第4章「FMの体系」4.2「FMの目標」
- 同 4.2.1「FMの目標とは」
- 公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会
日本におけるFMの普及と、ファシリティマネジャーの育成を行っている公式団体です。同協会もFMを経営基盤に関わる活動として扱っています。