FMの効果はどう測る?やさしく学ぶFM入門|第2章⑤

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オフィスの空調を見直したり、会議室の使い方を変えたりしたとき、FMの効果はどのように確かめればよいのでしょうか。

実施しただけで、「FMの取り組みは成功した」といえるのでしょうか。

費用が下がった、使いやすくなった、故障が減った――。FMの効果には、数字で測りやすいものもあれば、利用者の声を聞かなければ分からないものもあります。

今回は、ファシリティマネジメントの効果をどのように確かめ、企業経営へつなげるのかを考えます。

まずは3択クイズ

【問題】オフィスの空調を見直したあと、FMの効果を確かめる方法として最も適切なのはどれでしょう?

  1. 電気料金が下がったかだけを確認する
  2. 利用者から好意的な声が一つあれば成功とする
  3. 目的に合う複数の指標を、実施前後の条件も確認しながら評価する

少し考えてから、ぴよまると一緒に答えを選んでみましょう。

🐥ぴよまる:ぼくは「1番」かな。電気料金が下がれば、効果が数字ではっきり分かるもの。

🐶うらのいぬさん:正解は、3番です。費用も大切ですが、一つの数字だけでは効果の全体像は分かりません。判断のポイントは、取り組みの目的に合った指標を組み合わせているかです。

では、なぜ3番が最も適切なのでしょう。FMの効果を測る考え方から見ていきましょう。

FMの効果は「何を目指したか」で決まる

🐥:電気料金が下がっただけでは、成功とはいえないの?

🐔にわのとりさん:省エネルギーが目的なら、重要な成果の一つじゃ。ただし、料金が下がった理由がFMの取り組みだけとは限らんのじゃよ。

電気料金は、設備の使い方だけで決まるものではありません。

たとえば、次のような条件にも左右されます。

  • 電気料金の単価
  • 夏や冬の気温
  • 建物を利用した人数
  • 稼働時間や出社日数
  • 設備の増減
  • 事業活動の変化

そのため、「料金が下がった」という結果だけを見て、FM施策の効果だと決めつけることはできません。

まず必要なのは、取り組みの目的を明確にすることです。

たとえば空調の見直しでも、目的によって確認する指標が変わります。

取り組みの目的 確認したい指標の例
エネルギー使用量を減らす 電力使用量、使用時間、床面積当たりの使用量
費用を適正化する 光熱費、保守費、修繕費
快適性を改善する 室温・湿度、利用者アンケート、苦情件数
故障を減らす 故障件数、停止時間、修理頻度
業務への影響を減らす 設備停止による中断時間、復旧までの時間

🐥:先に目的を決めてから、「何を見ればよいか」を考えるんだね。

🐔:そうじゃ。数字を集めること自体が目的ではない。目指した状態に近づいたかを確かめるために、指標を選ぶんじゃよ。

数字で測る効果と、利用者の声から分かる効果

FMの効果には、数値で表しやすい「定量的な効果」と、利用者の評価や使い心地などから判断する「定性的な効果」があります。

定量的な効果

数字で把握しやすい効果です。

  • 光熱費や維持管理費
  • エネルギー使用量
  • CO₂排出量
  • 故障や不具合の件数
  • 設備の停止時間
  • スペースの利用率
  • 修繕や問い合わせへの対応時間

定性的な効果

数字だけでは捉えにくい効果です。

  • 職場の使いやすさ
  • 温熱環境や照明への満足度
  • 安心して施設を利用できる感覚
  • 部署間の連携のしやすさ
  • 施設に対する利用者の要望
  • 企業や施設の印象

🐥:働きやすさも、アンケートなら数字にできるんじゃない?

🐶:アンケート結果を点数で表すことはできます。ただし、その点数は利用者の感じ方を一定の方法で整理したものです。電力使用量のような測定値とは性質が違うため、質問内容や対象者、実施時期も確認する必要があります。

一つの指標だけに頼ると、別のところで起きた変化を見落とすことがあります。

たとえば、省エネルギーのために空調の運転を減らした結果、電力使用量は下がっても、暑さや寒さへの不満が増えるかもしれません。

反対に、快適性を優先して設備を増やせば、エネルギー使用量や費用が増える可能性があります。

FMでは、費用、品質、利用状況、環境、安全性などを組み合わせ、全体のバランスを見ながら評価します。

😸うちのねこさん:つまり、電気代が下がっても、オレの昼寝場所が寒くなったら満点ではないニャ。

🐔:ねこさんの昼寝だけで会社全体は評価できんが、費用と快適性の両方を見るという考え方は合っておるぞ。

😸:オレの意見も定性的なデータとして記録するニャ。

数字が変わっても、すぐにFMの効果とは限らない

取り組みの前後で数字が変わっても、その変化がすべてFM施策によるものとは限りません。

たとえば、オフィスの改修後に離職率が下がったとします。

働きやすい職場環境が影響した可能性はありますが、次のような要因も考えられます。

  • 給与や人事制度が変わった
  • 上司やチームの構成が変わった
  • 業務量が減った
  • 景気や雇用環境が変化した
  • テレワーク制度が導入された

そのため、「オフィスを改善したから離職率が下がった」と一足飛びに結論づけるのは適切ではありません。

🐥:一緒に変わったからといって、片方が全部の原因とは限らないんだね。

🐶:そうです。FMの効果を確かめるときは、少なくとも次の点を確認します。

  1. 取り組みの目的は何だったか
  2. 実施前の状態を記録しているか
  3. 実施後も同じ条件で比較できるか
  4. 季節や人数など、ほかの条件が変わっていないか
  5. 期待した効果以外に悪影響が出ていないか
  6. 一時的な変化ではなく、効果が続いているか

このように条件を確かめることで、数字の変化を経営判断に使いやすくなります。

FMの効果は経営判断の材料になる

🐥:効果を測ったあとは、結果を報告して終わり?

🐔:そこからが大切なんじゃ。評価の結果は、次の計画や予算、改善の優先順位を決める材料になるんじゃよ。

FMの効果を見えるようにする目的は、取り組みの手柄を証明することだけではありません。

経営側が、限られた人員や予算をどこへ配分するか判断するために使います。

たとえば、評価結果から次のような判断につながります。

  • 効果が確認できた施策を、ほかの拠点にも広げる
  • 十分な効果が出なかった原因を調べる
  • 老朽設備を修理するか、更新するかを検討する
  • 使われていないスペースの用途を見直す
  • 安全性に関わる改善を優先する
  • 中長期の修繕・更新計画へ反映する

ただし、経営にとって価値があるのは、数字が良く見えることではありません。

組織が目指す方向と照らし合わせ、何を続け、何を改め、次にどこへ資源を配分するかを判断できることです。

🐥:FMの数字は、成績表というより、次の道を決める地図なんだね。

🐔:うむ。測って終わるのではなく、次の計画へつなげてこそ、FMの評価が生きるんじゃよ。

今日のまとめ

冒頭のクイズの正解は、

3.目的に合う複数の指標を、実施前後の条件も確認しながら評価する

でした。

FMの効果には、費用やエネルギー使用量のように数字で測りやすいものと、使いやすさや満足度のように利用者の評価から分かるものがあります。

どちらか一方だけでは、効果の全体像を捉えられない場合があります。

試験や実務で迷ったときは、次の順番で考えてみましょう。

何を目指したのか
↓
何を測れば確かめられるのか
↓
比較する条件はそろっているか
↓
ほかの要因はなかったか
↓
結果を次の判断へどう生かすか

FMの効果は、派手な一つの数字だけに現れるものではありません。

建物、人、費用、環境、リスクの変化を確かめながら、会社が次に進むための地図を少しずつ描いていく。それが、企業経営からFMの効果を見るということなのです。

次回予告:第2章⑥ FMが企業にもたらす経営効果のまとめ

次回は、人口減少、ICT、環境、災害、経営課題、効果の測定まで、第2章で学んだ内容をクイズとともに振り返ります。

参考資料・関連情報

🔗『公式ガイド ファシリティマネジメント』第2章「ファシリティマネジメントの効果」2.2「企業経営から見たFMの効果」

🔗 公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会「書籍紹介」
『公式ガイド ファシリティマネジメント』の全体構成と、第2章が「ファシリティマネジメントの効果」を扱うことを確認できます。

※本記事は、FMの効果を評価する基本的な考え方を初心者向けに整理したものです。実際の評価指標は、組織の目的、施設の用途、保有形態などによって異なります。資格試験の出題範囲や用語の定義は、受験年度の公式案内・公式教材もあわせてご確認ください。

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