知識を生む職場とは?暗黙知と集中できる環境を考える|第11章④

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知識を生む職場には、情報を保存する仕組みだけでなく、人が経験を伝え合い、自分で考えられる環境も必要です。マニュアルを読んでも分からなかったことが、先輩の手元を見た瞬間に「なるほど」とつながることはありませんか。

今回は、公式ガイドの「知識創造に関連する知識」から、暗黙知と、周囲の刺激の受け止め方の違いを取り上げます。相談する場所と集中する場所が、仕事の学びをどう支えるか考えてみましょう。

🐥 まずは3択クイズ!

🐥ぴよまる:教わったとおりにやっているつもりなのに、先輩みたいにうまくできないんだ。手順は同じはずなんだけど。

😸うちのねこさん:先輩の手元を見てみたら? 「ここでちょっと待つ」が、手順書から抜けているかもしれないな。

🐥❓:経験から身につけたコツを職場で伝える方法として、最も適切なのはどれ?

  • A.すべて文章にできるはずなので、手順書だけで伝える。
  • B.文章に加えて、実演や対話、一緒に試す機会もつくる。
  • C.コツは本人だけのものなので、ほかの人には伝えられない。

🐶うらのいぬさん:正解はBです。言葉や数字で伝えられる部分もあれば、動きや判断のタイミングなど、説明だけでは伝わりにくい部分もあります。実演や対話を組み合わせると、学ぶ手がかりを増やせます。

🐔にわのとりさん:そこで出てくるのが「暗黙知」じゃ。まずは、その意味から見ていこう。

👐 暗黙知とは?言葉だけでは伝えきれない知

公式ガイドでは、知識の背景には、言葉として意識しきれていない知の働きがあるという考え方を紹介しています。哲学者マイケル・ポランニーが論じた暗黙知です。

たとえば、自転車に乗れる人でも、バランスを保つ動きをすべて言葉で説明するのは難しいでしょう。仕事でも、相手の反応を見ながら説明を変えることや、道具を扱う力加減などに、言葉だけでは伝えきれない知が関わります。

ここでいう「暗黙」は、情報を隠すという意味ではありません。本人ができることの中にも、細かく説明しようとすると言葉にしにくい部分がある、ということです。

🐥:できることと、全部説明できることは違うんだね。

😸💡:オレも、顔を見分けるコツを聞かれたら困るな。「いつもの顔だから」では、説明にならないし。

🐔:うむ。知っていることのすべてが、説明文の形で頭に入っているわけではないんじゃ。

🔄 手順書と、見て学ぶ機会をつなぐ

暗黙知に目を向けると、知識の共有を「資料を置けば完了」とは考えにくくなります。

もちろん、手順や基準を文章にすることは大切です。言葉や数字、図などで表せる知識は形式知と呼ばれます。そこに、実際の作業を見たり、疑問を聞いたり、自分で試したりする機会を組み合わせます。

学ぶ方法 捉えやすくなることの例
手順書や図を読む 作業の順序、確認項目、判断基準
実際の作業を見る 手の動き、道具の扱い方、作業の間合い
その場で質問する なぜその方法を選んだのか、何に注意したのか
一緒に試して振り返る 自分の理解と実際の作業の違い

この表は、学び方を考えるための記事独自の整理です。実演を一度見ればすべて伝わるわけでも、あらゆる知を文章に変えられるわけでもありません。方法を組み合わせ、理解を確かめながら進めます。

🏢 FMは、知識を生む職場をどう支える?

公式ガイドでは、知識創造を支えるワークプレイスを考えるうえで、暗黙知への理解を取り上げています。

FMは、仕事のコツそのものをすべて教える役割を担うわけではありません。見せる、聞く、試す、考えるといった活動がしやすい場所や道具を、利用者と一緒に整えます。

  • 資料や作業の様子を、一緒に見ながら話せる。
  • 短い相談や実演が、周囲の仕事を妨げずにできる。
  • 学んだことを、一人で整理する場所も使える。

🐥💡:相談できる場所だけでなく、その後に自分で考える場所も必要なんだね。

🐶:そうですね。話し合いと集中の両方ができるか、実際の仕事に沿って確かめたいところです。

🎧 知識を生む職場では、集中しやすさの違いにも目を向ける

公式ガイドは、環境からの刺激の受け止め方を考える視点として、スクリーナーとノンスクリーナーを紹介しています。

周囲の刺激を選別し、影響を受けにくい傾向をスクリーナー、刺激の影響を受けやすい傾向をノンスクリーナーとして説明しています。ただし、完全に二つに分かれるものではなく、中間的な人もいます。

たとえば、周りで会話があっても読書を続けられる人もいれば、内容が耳に入って集中しにくい人もいます。これは、どちらが優れているかを示す分類ではありません。

🐥:ぼく、話の続きが聞こえると、つい気になっちゃうんだ。集中力が足りないのかなって思っていたよ。

🐔:その一言で片付けず、環境との関係も考えたいのう。周囲の刺激の受け止め方には、違いがあるんじゃ。

😸:オレには平気な音でも、隣の人には仕事の割り込みになるかもしれないんだな。

🧭 人を分類するより、選べる環境を考える

この考え方を使うとき、職場で「あの人はこのタイプ」と決めつける必要はありません。利用者の声を聞き、活動に合う場所を使えるか確かめることが大切です。

たとえば、話し合う場所と静かに作業する場所を分ける、席の配置を工夫する、場所の使い方を共有するなどの方法が考えられます。広いオフィスを新設しなくても、今ある場所の運用から見直せることもあります。

第8章で学んだワークプレイスの運用管理が「働く環境をどう整え続けるか」を扱うのに対し、今回は、その判断の手がかりとなる人の知の働きと、環境への反応の違いを見ています。

🐥💡:一緒に学べることと、一人で考えられること。両方を支える場所を考えればいいんだね。

🐶:はい。交流スペースを設けた数だけでなく、必要な人が使えているかまで確かめましょう。

📚 ポイントまとめ

  • 暗黙知には、言葉だけでは伝えきれない知の働きが関わる。
  • 資料に加えて、実演、対話、一緒に試す機会を組み合わせると、学ぶ手がかりが増える。
  • スクリーナーとノンスクリーナーは、刺激の受け止め方の違いを考える視点であり、優劣を示すものではない。
  • FMは、交流と集中など、活動に合う環境を支える。

☀️ 今日のまとめ

知識が育つ場所には、誰かと学ぶ時間と、自分で考える時間の両方を用意しよう。

➡️ 次回予告

次回は、エルゴノミクス(人間工学)です。机や椅子を使うとき、「人が家具に合わせる」ことばかりになっていないでしょうか。身体と作業環境の関係を考えます。

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📖 参考資料・関連情報

公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会編『公式ガイド ファシリティマネジメント』第11章「人間性関連の知識」

  • 11.3「知識創造に関連する知識」
  • a.「暗黙知(意識を超えた人間の能力)」
  • b.「スクリーナーとノンスクリーナー」

この記事では、暗黙知と形式知、周囲の刺激への反応の個人差、これらをワークプレイスづくりの手がかりにする考え方を確認しました。

手順書と実演を組み合わせる例、学び方を示す表、クイズ、キャラクターの会話、環境の運用例は、初学者向けに独自に再構成したものです。

本記事は公式ガイドの内容を参考にしていますが、原文の文章・図表を引用したものではなく、筆者が独自に再構成した解説です。

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