本記事では、改善提案が思いつかないときに、「本当の問題」を見つけるための具体的なステップを紹介します。 ブレインストーミングやKJ法を使いながら、どこから改善を考えればいいのかを、一緒にたどってみましょう。
「業務改善のアイデアを募集します」
会社で、こんなお知らせが回ってくることがあります。
良い提案は表彰します。
採用されたアイデアは、実際の業務に生かします。
それはいい。
でも――。
🐥ぴよまる:改善提案……何かすごいアイデアを考えなくちゃ。
🐶うらのいぬさん:急に「自由に考えて」って言われると、かえって何も出てこないわん。
😸うちのねこさん:会社に昼寝部屋を作る。
🐥:それは改善なの?
🐔にわのとりさん:まあまあ。今日は、改善案を考える前の話から始めようかの。
改善提案というと、つい「何か新しい仕組みを考えなくては」と思ってしまいます。
でも、いきなり答えを探さなくてもいいのです。
その前に、
「そもそも、何に困っているんだろう?」
そこから探してみましょう。
🔍 改善提案の前に、「本当の問題」を見つける
たとえば、
「仕事が忙しい」
という悩みがあったとします。
では、問題は本当に「仕事が忙しいこと」なのでしょうか。
少しだけ掘ってみましょう。
仕事量そのものが多いのかもしれません。
でも、こんなことはないでしょうか。
- 必要なファイルを探すのに時間がかかる
- 同じ数字を何度も入力している
- 承認や確認を待つ時間が長い
- 担当者しか分からない仕事がある
- 会議や資料作成に時間を取られている
- やり方が人によって違う
一つひとつは、小さなことです。
普段なら「まあ、仕方ないか」と通り過ぎてしまうかもしれません。
でも、こうした小さなことが積み重なって、「忙しい」という状態をつくっている可能性もあります。
🐥:じゃあ、「忙しいから人を増やしてください!」って、すぐ考えない方がいいのかな。
🐔:それも解決策の一つかもしれん。じゃが、その前に何が忙しさを生んでいるのかを見てみる価値はありそうじゃ。
目の前に見えているものだけでなく、その奥に何があるのか。
改善提案を考えるなら、まずここからです。
💡 改善提案の種を見つけるために、問題を外へ出す
そこで使える方法の一つが、ブレインストーミングです。
名前は少し難しそうですが、やることはシンプル。
一つのテーマについて、思いついたことをどんどん出していきます。
大切なのは、最初から「良い意見」を出そうとしないことです。
ブレインストーミングの4つのルール
① 何を話してもいい
小さなことでも、ちょっとズレていると思うことでも、まずは出してみます。
② 否定・批判をしない
「それは無理」「関係ない」と途中で切り捨てません。
③ 他の人のアイデアをヒントにする
誰かの発言から「それなら、これも」と思いついたら、どんどん乗っかります。
④ 質より量
最初から正解を狙わず、まず数を出します。
🐥:つまり、「こんなこと言ったら変かな?」って考えなくていいんだ。
🐶:最初はね。整理するのはあとでいいんだわん。
😸:何を言ってもよい、と。
🐶:ねこさんだけは少し考えてからでもいい気がします。
🐔:否定してはいかんぞ。
🐶:もう始まってたの!?
💯 目標は100個。でも、まず10個からでいい
「では、問題を100個書き出してください」
そう言われたら、
100個!?
となりますよね。
でも、最初から100個出そうとしなくても大丈夫です。
まずは10個、20個と書き出してみましょう。
一つ書くと、「そういえば、これもあった」と次を思い出すことがあります。
誰かと一緒にやれば、「あ、それならこんなことも」と、他の人の発言から連想が広がることもあります。
そして、ここでは重複しても構いません。
同じようなことが何度も出てくる。
それ自体が、あとで整理するときの手掛かりになるかもしれないからです。
目標は100個。
でも、100という数字を達成することが目的ではありません。
いつもなら「大したことじゃない」と捨ててしまう小さな違和感まで、できるだけ外に出してみる。
そのために「量を出してみよう」と考えるわけです。
ひとりで始めても、みんなでやってもOK
ここで少し補足です。
問題を書き出す作業は、必ずしも最初からチームでやる必要はありません。
まずは一人で、今日感じた「面倒」「困った」「なんで?」をノートに10個書き出してみる。 それだけでも立派なスタートです。
一方、何人かでブレインストーミングをすると、誰かの「これが困る」から、 別の人の「それなら、これも」が生まれやすくなります。
一人なら、自分のモヤモヤをじっくり拾える。
みんななら、お互いの発言から連想を広げられる。
どちらが正解ということではありません。 まず一人で始めて、少し材料が集まったら同僚と広げてみるのもよさそうです。
🧩 出したものを、似たもの同士で集めてみる
たくさん出したら、ここで初めて整理します。
たとえば、
- ファイルを探す
- 過去のメールを探す
- 必要な数字を探す
- 担当者を探す
これらを近くに置いてみると、
「探す」
という共通点が見えてきます。
別のところには、
- 承認待ち
- 確認待ち
- 返事待ち
が集まるかもしれません。
こちらは「待つ」でしょうか。
さらに、
- 同じ数字を二度入力する
- 別の様式にも転記する
- 紙にも同じ内容を書く
なら、「重複作業」という名前を付けられそうです。
似たものを集めてグループにし、それぞれに名前を付けながら整理していく方法として、KJ法がよく知られています。
KJ法とは、たくさんの情報や意見をカードや付箋などに書き出し、似たものをグループにまとめながら、全体の構造や関係を見つけていく整理方法です。
バラバラだった「困った」が、少しずつ意味のあるまとまりに変わっていきます。
💡 うまく分類できなくても大丈夫
ここで一つ、覚えておきたいことがあります。
たくさん書き出したあと、それをグループに分ける作業は、思った以上に頭を使います。
付箋を前にして、
「……これ、どう分ければいいの?」
となっても大丈夫です。
最初から完璧な分類を作ろうとしなくても構いません。
まずは目についたものから、
- 「探す」
- 「待つ」
- 「聞く」
- 「やり直す」
といった分かりやすい動詞を手掛かりに、3〜4個の小さな「島」を作るくらいから始めてみましょう。
どこに置けばいいか迷う付箋は、無理にどこかへ入れなくても大丈夫。 あとで動かしてもいいし、新しいグループを作っても構いません。
最初から正しく分類することより、並べ替えながら「何か似ているな」を見つけること。
そのくらいの気持ちで眺めてみると、少し取り組みやすくなります。
🗺️ グループ同士の「つながり」を眺めてみる
ここでもう一歩進みます。
できあがったグループを眺めて、
「なぜ、こうなっているんだろう?」
と考えてみます。
たとえば、「探す」が多い。
なぜ?
→ 情報の置き場所が決まっていない。
「人に聞く」が多い。
なぜ?
→ 担当者しか分からない情報がある。
「待つ」が多い。
なぜ?
→ 確認や承認の方法が整理されていない。
こうして一つひとつの関係を眺めていくと、
「情報や業務のルールが十分に整理・共有されていないのでは?」
という、もう一段大きな問題が浮かんでくるかもしれません。
👾 最初に見えていたものは「中ボス」だった?
ここで、最初に戻ってみます。
出発点は、「仕事が忙しい」でした。
でも、小さな障害をたくさん書き出して整理してみると、
「仕事そのものが多い」だけではなく、
探す。
待つ。
聞く。
やり直す。
同じことを何度もする。
そんなことに時間を使っている可能性が見えてきました。
🐥:ぼく、「忙しい」が一番の問題だと思ってた。
😸:中ボスだったな。
🐶:じゃあラスボスは?
🐔:まだ決めつけてはいかん。「ラスボス候補が見えてきた」くらいじゃな。
ここは大切です。
整理したからといって、「これが絶対に本当の原因だ」と決めつける必要はありません。
でも、
次に何を調べればいいのか。
誰に話を聞けばいいのか。
どこから改善を考えればいいのか。
その糸口は、かなり見えやすくなります。
🌱 ここまで来て、初めて改善策を考える
💡 たとえば、こんな改善提案につながるかも
問題の背景が少しずつ見えてきたら、そこから具体的な改善策を考えていきます。
たとえば、こんな小さな改善です。
- ファイル名のルール統一
- 承認フローの見える化
- 二重入力の削減
- 共有フォルダの整理
- 担当者情報の一覧化
- 会議の目的と終了条件を明確化
- マニュアルの更新ルールを決める
- 共有フォルダの階層を整理す
どれも、会社全体をひっくり返すような大改革ではありません。
でも、毎日の「探す」「待つ」「聞く」「やり直す」を少し減らせるなら、それも立派な業務改善です。
🐾 改善提案は「答え」から考えなくてもいい
改善提案が思いつかないときは、いきなり答えを探すのではなく、
小さな違和感を拾う
↓
とにかくたくさん出す
↓
似たものを集める
↓
グループに名前を付ける
↓
グループ同士の関係を見る
↓
本当に取り組むべき課題を探す
↓
そこで初めて改善策を考える
こんな順番で考えてみる方法があります。
改善の種は、会議室で突然ひらめくものだけではありません。
いつもの仕事の中にある、
「面倒だな」
「なんで毎回こうするんだろう?」
「またこれか」
そんな小さな違和感も、立派な入口です。
🐥:つまり、「すごいアイデアを思いつかなくちゃ!」から始めなくていいんだね。
🐶:まずは、自分たちが何に困っているのかを見つけることですね。
🐔:答えを考える前に、問いを見つけるということじゃな。
😸:ではオレは、「なぜ会議のお菓子はいつも一種類なのか」から始める。
🐶:それは自分で考えるんだわん。
🎁 おまけ劇場「ぴよまるたちも、実際にやってみた」
🐥 100個出せる?「仕事が忙しい」の正体を探してみた
ここまで読んで、
「理屈は分かった。でも、本当にそんなに出てくる?」
と思った人もいるかもしれません。
そこで、ぴよまるたちにも実際にやってもらいました。
今日のお題は――
「どうして仕事がこんなに忙しいの?」
🐔:では、仕事を邪魔していると思うものを、できるだけたくさん出してみよう。
🐥:目標は?
🐔:100個!
🐥:ひゃ、100個!?
🐶:まず10個くらいから始めましょう。
😸:一つ目。会社に昼寝部屋がない。
🐶:それ、仕事に関係なさそうだわん?
🐔:こらこら。
🐶:え?
🐔:今日の約束を忘れたかの。否定しない。
🐶:あっ。
🐔:一見すると「冗談かな?」と思うような意見でも、すぐには捨てないことじゃ。
たとえば「昼寝部屋がほしい」の奥に、「午後になると集中力が落ちる」「休憩の取り方に困っている」という別の問題が隠れているかもしれん。
🐥:ああ! 「昼寝部屋を作ろう」が答えじゃなくて、そこから「なんで欲しいんだろう?」って考えるんだ。
🐔:そういうことじゃ。突飛な意見も、別の問題に気づく入口になることがある。
😸:つまり、昼寝部屋の可能性はまだ消えていない。
🐶:諦めない心、大切だわん。
🐥:メールが多い!
🐶:会議が多い。
😸:会議が長い。
🐥:会議資料を作るのに時間がかかる!
🐶:資料に使う数字を探す。
😸:ファイルを探す。
🐥:最新版がどれか分からない!
🐶:同じ名前のファイルがいっぱいある。
😸:「最終版」。
🐥:「最終版2」。
🐶:「最終版・修正済」。
😸:「最終版・修正済・本当の最終版」。
🐥:あるー!
🐔:よしよし。どんどんいこう。
🐥:担当者が分からない!
🐶:担当者が休み。
😸:担当者に聞いたら「前任者しか分からない」。
🐥:引き継ぎ資料がない!
🐶:マニュアルが古い。
😸:マニュアルはあるが、誰もその通りにやっていない。
🐥:それ困る!
🐶:同じ数字を二回入力してる。
🐥:同じ内容を違う様式にも書いてる!
😸:そして紙にも書く。
🐶:入力したあと、別の人が確認する。
🐥:確認をお願いした人から返事が来ない!
😸:承認者が会議中。
🐶:承認者が出張中。
🐥:承認されたと思ったら差し戻された!
😸:理由が分からない。
🐥:……もう疲れてきた。
🐔:まだまだいけるぞ。
🐥:ひぃ。
しばらくすると、ぴよまるが手を止めました。
🐥:ねえ。「ファイルを探す」って、さっきも出なかった?
🐶:「数字を探す」もありましたね。
🐥:似てるから消す?
🐔:いや。そのまま残してみよう。
🐥:どうして?
🐔:似たものが何度も出てくること自体が、あとで手掛かりになるかもしれんからの。
🐶:あ! 「探す」なら、過去のメールを探すのもあるんだわん。
🐥:担当者を探す!
😸:空いている会議室を探す。
🐶:そうそう。会議室探しも時間かかる!
🐥:あ、本当だ。次々出てくる。
🐔:誰かの一言から、別の人が次を思いつく。これもブレインストーミングの面白いところじゃ。
😸:つまりオレの昼寝部屋から、画期的なアイデアが生まれる可能性もある。
🐶:確かに可能性は否定できないですね。
そして、ずいぶん付箋が増えてきました。
🐥:最初は10個も大変だと思ったけど、意外と出てきたね。
🐶:誰かが言うと、「あ、それもある」って思い出もんだね。
😸:そして、似たものもいっぱいある。
🐔:では、そろそろ並べてみようかの。
🧩 似たものを集めてみる
🐥:これはこっちかな。
ファイルを探す
メールを探す
数字を探す
担当者を探す
🐥:この島は……「探す」!
🐶:こっちは、
承認待ち
確認待ち
返事待ち
担当者待ち
🐶:だから、「待つ」ですね。
😸:こちらは、
二重入力
別様式へ転記
紙にも記入
似た資料を何度も作る
🐥:「同じことを何度もする」?
🐔:よい名前じゃ。
ほかにも、
「やり方が人によって違う」
「情報が共有されていない」
「会議」
「問い合わせ」
いくつもの島ができてきました。
🐥:……あれ?
🐶:どうしたわん?
🐥:ぼく、最初は「仕事が多すぎるから忙しい」と思ってた。
🐶:うん。
🐥:でも、これを見ると……。
少し考えて、ぴよまるが言いました。
🐥:ぼくら、仕事そのものじゃないことに、ずいぶん時間を使ってない?
🐶:……あ。
😸:出たな。
🐥:何が?
😸:ラスボス。
🐔:まだ決めつけてはいかん。
😸:では、ラスボス候補。
🐔:それくらいにしておこうかの。
最初から、「本当の問題はこれです」と答えが分かったわけではありません。
でも、頭の中にあったモヤモヤを外へ出して、似たものを集めて眺めたことで、
「次にどこを調べればいいのか」
が見えてきました。
🐥:なるほど。100個出すことそのものがゴールじゃないんだ。
🐶:いっぱい出してみるから、あとで「同じようなものが多いな」って気づけるんですね。
🐔:うむ。そこから「なぜ?」を考えていけばよい。
😸:そしてもう一つ分かったことがある。
🐥:なに?
😸:長時間のブレインストーミングには、お菓子が必要だ。
🐶:それは問題じゃなくて、ねこさんの要望です。
🌱 まずは今日、3つだけ拾ってみよう
ここまで読んで、
「ちょっとやってみようかな」
と思ったら、いきなり100個を目指す必要はありません。
まずは、小さな一歩から始めてみてください。
① 今日の仕事で「面倒だな」と思ったことを3つ書く
「ファイルを探した」
「また同じ数字を入力した」
「誰に確認すればいいか分からなかった」
そのくらいで十分です。
解決策は、まだ考えなくても構いません。
まずは「引っかかったことを拾う」だけです。
② 明日、同僚と5分だけブレインストーミングしてみる
もし声をかけられる人がいたら、
「最近、仕事でちょっと面倒だと思うことって何かある?」
と聞いてみるのもいいでしょう。
5分だけ。
このときは、解決策を決めなくても大丈夫です。
否定せず、結論を急がず、まずは出してみます。
一人の「そういえば」から、別の人の「それなら、これも」が始まるかもしれません。
③ 似たものをまとめてみる
いくつか集まったら、似たものを近くに置いてみます。
付箋を使ってもいい。
ノートに書いて丸で囲んでもいい。
Excelなどに並べてもいい。
机に付箋を並べたなら、スマートフォンで写真を撮って残しておくのも一つの方法です。
そして、まとまりが見えてきたら、
「つまり、これは何の問題なんだろう?」
と考えてみます。
🐥:3つなら、今日からできそう。
🐶:5分なら、誰かにも声をかけやすいですね。
🐔:最初から立派な改善提案を完成させようとしなくてよいんじゃ。
😸:では今日の「面倒」を三つ。仕事、お片づけ、お風呂。
🐶:仕事の中から探しましょう。
改善の種は、案外、いつもの仕事の途中に落ちています。
今日、3つ拾ってみる。
明日、誰かと5分だけ広げてみる。
そして、似たものを集めて眺めてみる。
そこで、
「あれ? これって同じところで引っかかってない?」
が見つかったら、
改善提案への一歩は、もう始まっています。
🔗 主な参考資料
ブレインストーミングをはじめ、アイデアを広げる方法にはさまざまなものがあります。 中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21でも、アイデアを発想するときの考え方や手法が紹介されています。

