管理職にならないという選択肢|会社員のキャリアは一本道じゃない

仕事・働き方

会社で長く働いていると、いつかは管理職になる。

以前は、そんな道筋を自然に思い浮かべる人も多かったかもしれません。

でも今は、働き方も、仕事に求めるものも、人それぞれです。

🐥ぴよまる:会社でずっと働いていたら、いつかは管理職になるものなの?

🐔にわのとりさん:必ずしもそうとは限らんよ。そもそも「どこへ向かって働くか」が、人によって違うからの。

管理職になる。

専門性を磨く。

研究や技術を深める。

転職して新しい仕事に挑戦する。

起業する。

一つの会社で安定して働く。

家庭や介護など、自分の生活と両立できる働き方を選ぶ。

まだ決めずに、働きながら考える。

どれも、その人のキャリアです。

それなのに、なぜ「管理職になりたくない」という言葉は、ときどき問題のように語られるのでしょう。

今回は、「管理職になりたいか、なりたくないか」だけではなく、もう少し広いところから会社員のキャリアを眺めてみます。

この記事は2026年10月時点で確認できる情報をもとにしています。


「若者は管理職になりたくない」は本当?

「最近の若い人は管理職になりたがらない」

そんな話を聞くことがあります。

実際、パーソル総合研究所が20~30代の正社員を対象に行った調査では、管理職になることに消極的な人が約半数を占めました。

理由として特に多かったのは、**「責任が重くなるから」**です。

ほかにも、

  • 仕事量が増えそう
  • 自分には向いていないと思う
  • 報酬と負担が見合わない
  • ワーク・ライフ・バランスを保ちにくそう
  • 管理職より専門性を高めたい

といった理由があります。

これだけを見ると、

🐥💦:やっぱり若い人は管理職になりたくないんだ……。

と思ってしまいそうです。

でも、別の調査を見ると違う景色もあります。

東京商工会議所が2025年度の新入社員を対象に行った調査では、59.0%が「管理職を目指したい」と回答しています。

🐥❓:あれ? 話が逆じゃない?

🐶うらのいぬさん:調査対象が違います。20~30代の正社員を対象にした調査と、新入社員を対象にした調査なので、そのまま比べて「若者の意識が変わった」とは言えません。

つまり、

「若者は管理職になりたくない」

と一括りにすること自体が、少し乱暴なのです。

なりたい人もいる。

なりたくない人もいる。

まだ分からない人もいる。

まずはそこから考えたほうがよさそうです。


以前は「管理職」が分かりやすい節目だった

では、なぜ「管理職になりたくない」という話が気になるのでしょう。

その背景には、日本企業で長く続いてきたキャリアのイメージもありそうです。

一つの会社に入り、経験を積む。

後輩ができる。

主任や係長になり、やがて課長になる。

もちろん、昔から全員がこの道を歩いたわけではありません。

それでも、一つの会社で長く働くことを前提にすると、昇進は「会社の中で前へ進んでいる」と分かりやすく感じられる節目でした。

😸うちのねこさん:一本の道に、途中の標識が立ってた感じかニャ。

🐔:そうじゃな。「次はここ」という場所が見えやすかったのかもしれん。

ところが、今はその道だけではありません。


転職も「会社を辞める」だけではなくなった

厚生労働省の「令和6年雇用動向調査」によると、2024年の転職入職者は約331万人。

3年連続で増加しました。

転職する理由もさまざまです。

もちろん、人間関係や会社への不満から職場を離れる人もいます。

一方で、よりよい条件や、自分がやりたい仕事、身につけたい経験を求めて職場を変える人もいます。

新入社員の意識にも、その変化が少し見えます。

東京商工会議所の2025年度調査では、

「チャンスがあれば転職」25.7%

に対して、

「定年まで勤務」24.4%

でした。

10年前の2015年度調査では、

「定年まで勤務」が36.3%、

「チャンスがあれば転職」が11.6%でした。

もちろん、この数字だけで「若者は転職する時代になった」と断定することはできません。

ただ、一つの会社の中だけでキャリアを考えるとは限らなくなっていることは見えてきます。


そもそも、みんな同じゴールを目指していない

ここで一度、「キャリア」という言葉を広げてみましょう。

たとえば、仕事が好きで、もっと専門知識を深めたい人がいます。

研究や技術開発に向いている人もいるでしょう。

人をまとめるより、自分の専門分野で力を発揮したい人もいます。

いつか起業したい人もいる。

一方で、

🐥:ぼくは、大きな会社で安心して長く働きたい、でもいいの?

もちろん、それも一つの選択です。

安定した会社で長く働きたい。

仕事だけでなく家庭も大切にしたい。

子育てや介護と両立したい。

趣味や地域活動など、仕事以外の時間も大切にしたい。

生活を支えるために、無理なく働き続けたい。

どれが上で、どれが下という話ではありません。

仕事に何を求めるかが違えば、目指す場所も違います。


「管理職にならない」=「成長しない」ではない

ここで気をつけたいのが、

昇進=成長

という見方です。

管理職になれば、仕事の範囲が広がります。

人材育成や予算、組織運営など、これまでとは違う経験もできます。

それは確かに一つの成長です。

でも、成長の方向はそれだけではありません。

技術を深める。

専門資格を取る。

新しい分野を学ぶ。

顧客との関係を築く。

後輩に技術を伝える。

異なる職種を経験する。

社外でも通用する力を身につける。

こうした成長もあります。

企業によっては、管理職とは別に、専門性を高めながら昇進していくキャリアコースを設けています。

たとえば、技術系の企業では、研究・開発・IT・設計などの分野で、高い専門性を持つ人を「プロフェッショナル」「スペシャリスト」などとして評価する制度があります。

旭化成グループでは、高い専門性を持つ人材を「高度専門職」として任命し、育成・処遇する制度を設けています。管理する立場になるだけでなく、専門分野を深めながら、研究開発や事業をリードしていく道です。

また、「デュアルラダー」と呼ばれる考え方もあります。

「ラダー」は、はしごのこと。

一つは、人や組織をマネジメントする道。

もう一つは、専門性を高めていく道。

二本のはしごを用意して、どちらからでもキャリアを上っていけるようにする仕組みです。

大日本印刷(DNP)では、中堅幹部層が「管理職コース」と「専門職コース」を自ら選べるデュアルラダー型の制度を導入しています。会社は、どちらを選んでも昇級・昇格の面で差がつかない仕組みと説明しています。

🐥💡:専門職って、「管理職にならなかった人」じゃないんだ。

🐶:そうですね。専門性を生かして会社に貢献することを、正式なキャリアとして位置づけている企業があります。

😸:はしごが一本しかなかったら、みんな同じところを登るしかないもんニャ。

🐔:二本あれば、「上へ進む」の意味そのものが変わってくるの。

もちろん、専門職制度の名称や評価、待遇、管理職との行き来ができるかどうかは企業によって異なります。

それでも、

「昇進するなら管理職になるしかない」

という一本の道だけではなく、

「人や組織を率いる道」と「専門性を深める道」

の両方を、会社がキャリアとして用意する例が出てきています。

🐥✨:上に行くだけじゃなくて、深く進んでもいいんだ。

🐔:キャリアを一本の「はしご」ではなく、いくつもの道として考えると分かりやすいかもしれんの。


でも会社には、管理する人も必要

ここまで読むと、

「それなら、みんな好きな道を選べばいいじゃない」

と思うかもしれません。

個人のキャリアだけを考えれば、それでよさそうです。

でも、会社側から見ると少し事情が違います。

誰かがチームの方向を決める。

仕事を調整する。

人を育てる。

判断する。

責任を持つ。

次のリーダーを育てる。

こうした役割は必要です。

🐥❓:じゃあ、やっぱり誰かが管理職にならないと困るんだ。

🐶:そうですね。ただし、「管理する機能が必要」ということと、「全員が管理職を目指すべき」ということは別です。

ここを分けて考えることが大切です。

では、会社側は「管理職」という役割をこれからどう考えているのでしょう。
海外企業では、管理階層そのものを減らし、組織をフラットにする動きも見られます。

🔗関連記事:管理職を減らす会社が増えている? BMW・Bayer・Amazonに見る「管理職の仕事」の変化


若手は「管理職」という言葉だけを見ているわけではない

管理職になりたい人を増やしたいなら、会社側にも考えることがあります。

若手社員は、「管理職」という肩書だけを見ているわけではありません。

実際に働いている上司を見ています。

朝から晩まで会議。

自分の仕事も抱えたまま部下の面倒を見る。

トラブルが起きれば対応する。

責任は増えたのに、待遇がどれだけ変わったのか分からない。

そんな姿を毎日見ていたら、

🐥💦:ぼくも、いつかああなりたい!

とは、なかなか思いにくいでしょう。

一方で、興味深いデータもあります。

パーソル総合研究所の調査では、40~50代の管理職は、同年代の非管理職と比べて、会社や人間関係、仕事内容への満足度が高い傾向がみられました。

つまり、

「管理職になる前に想像する管理職」と、「実際に管理職として働いて感じること」は、必ずしも同じではない

可能性があります。

管理職は大変そう。

でも、やりがいや裁量を感じている管理職もいる。

どちらか一方だけで語ることはできません。


「何でもできる人」が管理職でなくてもいい

管理職というと、

部下より仕事ができる。

何でも知っている。

困ったときには答えを出す。

そんな人物像を思い浮かべることがあります。

でも、チームの仕事が専門化・複雑化すれば、一人の管理職がすべてを知ることは難しくなります。

管理職自身が全部やるのではなく、

誰が何を得意としているかを見る。

仕事を任せる。

困っている人の話を聞く。

目標を共有する。

働きやすい仕組みをつくる。

必要なときに判断する。

そうした役割も、マネジメントです。

😸:一番魚を捕るねこが、必ずしも猫会議の進行役とは限らないニャ。

🐥:猫会議……。

🐔:まあ、たとえはともかくじゃ。

管理職という仕事のイメージそのものが変われば、

「自分には向いていない」

と思っていた人の中にも、

「それなら少し興味がある」

という人が出てくるかもしれません。


自分のキャリアを考える。でも、一人で考えなくていい

最近は「キャリア自律」という言葉も使われます。

自分のキャリアを会社任せにせず、自分自身で考える。

そんな考え方です。

でも、

「あなたの人生なんだから、あとは自分で考えて」

という意味ではありません。

厚生労働省も、企業が従業員のキャリア形成を支援する仕組みとして、キャリアコンサルティングや「セルフ・キャリアドック」を紹介しています。

本人が自分の道を考える。

会社は、学ぶ機会や相談する場所を用意する。

上司や周囲も一緒に考える。

その組み合わせが大切です。


「管理職になりたい?」の前に聞いてみたいこと

会社が次の管理職候補を探すとき、

「管理職になりたいですか?」

と聞くことがあります。

もちろん、それも大切な質問です。

でも、その前に、

「これから、どんなふうに働いていきたいですか?」

と聞いてみる。

専門性を高めたい。

人を育てる仕事に興味がある。

もっと大きな仕事を動かしてみたい。

家庭との時間を大切にしたい。

まだ分からない。

そんな答えの中から、その人に合った道が見えてくるかもしれません。

🐥:管理職になるか、ならないかを最初に決めなくてもいいんだ。

🐔:まず、自分がどこへ行きたいのかを考える。それから道を探しても遅くないのじゃ。


まとめ|会社員のキャリアは一本道じゃない

「管理職になりたくない人が増えている」

そんなニュースを見ると、

若い人の意欲がなくなった。

会社の将来が心配だ。

そう考えたくなることもあります。

でも、少し広いところから見ると、違う景色も見えてきます。

働く人が考えているのは、

「管理職になりたいか、なりたくないか」

だけではありません。

どんな仕事をしたいのか。

何を身につけたいのか。

どんな生活をしたいのか。

どこで働きたいのか。

仕事と、それ以外の時間をどう組み合わせたいのか。

その答えは、人によって違います。

🐥✨:管理職にならない道もある。でも、管理職になる道だってある。

😸:途中で道を変えてもいいニャ。

🐶:そして、まだ決めていないことも一つの状態です。

🐔:自分の道を、最初から一本に決める必要はないということじゃな。

道は一本ではありません。

今いる場所からは見えなくても、曲がり角の先には別の道が続いているかもしれません。

管理職になる人も、専門性を磨く人も、まだ迷っている人も。

自分で選んだと思える道なら、その一歩にはきっと意味があります。

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