金利が上がると聞いたとき、私たちが最初に思い浮かべるのは、住宅ローンや預金金利かもしれません。
けれど、金利上昇の影響を受けるのは、家計や企業だけではありません。
国にも、たくさんの借金があります。そして国の借金にも、私たちのローンと同じように利息がかかります。
財務省が2026年8月28日に公表した2027年度概算要求では、国債の元本の償還や利払いなどに充てる「国債費」として、過去最大となる36兆6,386億円が計上されました。
2026年度当初予算より、5兆3,628億円、率にして17.1%の増加です。
でも、ここで気になることがあります。
金利が少し上がっただけなのに、なぜ国の支払いは何兆円も増えるのでしょう?
今回は、金利が上がると国の借金に何が起きるのか、国債費36.6兆円という数字から考えてみます。
国債費36.6兆円って、全部が利息なの?
🐥:大変、大変!
🐔:どうしたんじゃ、ぴよまる。
🐥:国債費が36兆6,386億円だって!
国の借金の利息だけで、36兆円も払うの!?
🐱:36兆円……。
ちゅ~るなら、何本買えるニャ?
🐶:国家予算をちゅ~るに換算しないでほしいんだわん。
🐱:大きな数字は、身近なものに置き換えると分かりやすいニャ。
🐔:置き換えた結果、余計に分からなくなっておるぞ。
🐶:それに、国債費36.6兆円が、すべて利息というわけではないんだわん。
🐥:えっ、違うの?
🐶:2027年度概算要求の国債費36兆6,386億円の内訳は、主に次のようになっています。
債務償還費:20兆25億円
利子及割引料:16兆5,888億円
国債事務取扱費:473億円
国債費の半分以上を占めるのは、国債の元本を償還するための財源などに充てられる債務償還費です。
🐥:じゃあ、36.6兆円全部が利息じゃないんだ!
🐔:そうじゃ。まず覚えておきたいのは、これじゃな。
① 国債費=利息だけではない。
半分以上は、元本の償還に備える債務償還費。
🐱:半分は元本、半分は利息……。
半分ずつなら、きれいに分けられるニャ。
🐶:きっちり半分ではないんだわん。
🐱:細かいことは、犬さんに任せるニャ。
🐥:でも、利払いだけでも約16.6兆円あるんだよね。
どうして金利が少し上がっただけで、そんなに大きな金額になるの?
🐶:国債の残高が巨大で、新しい国債だけでなく、満期を迎えた国債を借り換えるための借換債も毎年たくさん発行しているからなんだわん。
過去の固定利付国債の金利が、ある日突然変わるわけではありません。
金利上昇の影響は、新しく発行する国債や借換債から少しずつ入り込み、何年もかけて国全体の利払い費へ広がります。
🐔:二つ目は、これじゃ。
② 金利上昇の影響は、新規国債と借換債の発行を通じて、徐々に積み上がる。
🐱:古い箱を一つずつ、新しい箱に取り替えるようなものニャ?
🐶:そう考えると分かりやすいんだわん。
🐱:箱が空いたら入るニャ。
🐥:国債の箱に入らないで。
それから、想定金利3.8%っていうのは?
国債の金利が全部3.8%になるんじゃないの?
🐶:それも違うんだわん。
想定金利3.8%は、日本国債全体の平均金利ではありません。
これから発行するすべての国債に、3.8%の金利が付くという意味でもありません。
将来、金利が上昇しても利払い予算が不足しないよう、国債費を計算するために置かれた予算上の金利です。
🐔:いわば、金利上昇に備えた安全マージンを含む数字じゃな。
③ 想定金利は、国債費を計算するための予算上の数字。
国債全体の平均金利や、実際の市場金利とは異なる。
🐱:余裕を持って多めに見ておく。
旅行のとき、おやつを多めに持っていくのと同じニャ。
🐶:考え方としては近いんだわん。
🐱:使わなかったおやつは、帰りに食べるニャ。
🐔:予算の話が、ずいぶん遠くへ旅立ったのう。
🐥:でも、三つ分かったよ。
国債費は全部が利息ではない。
金利上昇の影響は、新規国債と借換債から徐々に広がる。
想定金利は、実際の国債金利とは違う。
🐶:そう。この三つを頭の片隅に置いて、国債費36.6兆円の中身を見ていくんだわん。
🐱:ぼくは、おやつを頭の片隅に置いて読むニャ。
そもそも、国債費とは?
国は、税金などの収入だけで必要な支出をまかなえないとき、国債を発行してお金を調達します。
国債とは、簡単にいえば、国が発行する借用証書のようなものです。国債を買った人や金融機関などは、国へお金を貸したことになります。その代わり、国は決められた利息を払い、満期になれば元本を償還します。
🐥:国が「お金を貸してください」とお願いするの?
🐔:かなり大ざっぱに言えば、そうじゃな。
🐱:貸してあげてもいいニャ。
🐶:ねこさんの全財産は、棚の下に落ちている5円玉なんだわん。
🐱:長期投資ニャ。
家庭にたとえるなら、国債費は住宅ローンの「元本返済と利息」に少し似ています。
ただし、国は満期を迎えた国債の一部を、新しい国債で借り換えます。家計の住宅ローンと国債は、まったく同じ仕組みではありません。あくまで「元本と利息がある」という部分を借りたたとえです。
国債費の半分以上は「利息」ではない
2027年度概算要求の内訳を、もう一度分けて見てみましょう。
| 2027年度概算要求金額主な内容 | ||
|---|---|---|
| 債務償還費 | 20兆25億円 | 国債の元本を償還するための財源など |
| 利子及割引料 | 16兆5,888億円 | 国債などの利払い |
| 国債事務取扱費 | 473億円 | 国債の発行や償還に必要な事務費 |
| 合計 | 36兆6,386億円 |
国債費のうち、債務償還費は約54.6%。半分以上を占めます。
したがって、
国債費36.6兆円=国が支払う利息36.6兆円
ではありません。利払いなどに充てる予算は約16.6兆円です。
🐥:それでも、利息だけで16兆円を超えるの!?
🐔:そうじゃ。しかも2026年度当初予算と比べると、利子及割引料は約3兆5,500億円、率にして27.2%増えておる。
🐶:金利が上がると、これまで目立ちにくかった国の利息が、急に大きな存在になってくるんだわん。
債務償還費20兆円なら、借金が20兆円減るの?
🐥:国債の元本を返すために20兆円使うなら、国の借金も20兆円減るの?
🐶:そこは、少し仕組みを分けて考える必要があるんだわん。
2027年度概算要求の債務償還費20兆25億円は、満期を迎えた国債20兆円分を、そのまま現金で返すという意味ではありません。
このお金は、国債の償還を行うための国債整理基金特別会計へ繰り入れられ、国債を計画的に償還するための財源として使われます。
🐥:国債を返すためのお金を、専用のお財布へ移しておくの?
🐶:そう考えると分かりやすいんだわん。
一般会計から国債整理基金特別会計へ、毎年一定のルールに基づいて償還財源を繰り入れます。
ただし、満期を迎える国債の金額は、この債務償還費よりもずっと大きくなることがあります。
そこで実際の償還では、
一般会計から繰り入れる債務償還費などの財源
+
新たに借換債を発行して調達するお金
を組み合わせて、満期を迎えた国債へ対応します。
🐥:全部を現金で返すのではなく、一部は用意してきた償還財源で返して、残りは借換債でつなぐんだね。
🐔:そうじゃ。
日本では、建設国債や特例国債について、全体として60年かけて償還する「60年償還ルール」が採られておる。
たとえば、600億円の国債をすべて10年国債で発行した場合、10年後の満期に600億円すべてを現金で返すわけではない。
財務省の説明では、100億円を現金で償還し、残る500億円は借換債を発行してつなぐことになるんじゃ。
🐱:600億円の請求書が来ても、500億円分は新しい請求書に引っ越すニャ?
🐶:ずいぶん大胆な表現だけど、古い国債が新しい借換債へ置き換わるという意味では近いんだわん。
🐥:だから、債務償還費として20兆円を計上しても、国債残高がそのまま20兆円減るとは限らないのか。
🐶:そのとおりだわん。
債務償還費は、国債の償還に必要な財源として使われます。
しかし同時に借換債も発行されるため、
債務償還費20兆円=国債残高が20兆円減る
という関係にはなりません。
大切なのは、次の二つを分けることです。
債務償還費
国債を計画的に償還するため、一般会計から国債整理基金特別会計へ繰り入れる財源など。借換債
満期を迎えた国債のうち、現金で償還しない部分を借り換えるために発行する新しい国債。
🐥:債務償還費だけで返すのではなく、債務償還費と借換債がセットで動いているんだね。
🐶:そうなんだわん。
国債の償還は、積み立ててきた償還財源などと、借換債で新たに調達するお金を組み合わせて行われます。債務償還費20兆円は償還のために使われますが、その分だけ国債残高が減るという意味ではありません。
🐱:一つのお財布だけではなく、二つのお財布から払うニャ。
🐔:ただし、借換債のお財布の中身も借りたお金じゃ。そこを忘れてはいかんぞ。
金利が少し上がっただけで、なぜ何兆円も増えるの?
🐥:日銀が金利を上げるといっても、0.何%の話でしょう?
それなのに、どうして国の利払いが何兆円も増えるの?
🐶:理由は、国の借金残高が大きいことだけではないんだわん。
金利上昇の影響を考えるには、三つの構造を見る必要があります。
理由1 国債の残高そのものが巨大だから
第一の理由は、国債の残高が大きいことです。
たとえば、100万円の借金なら、金利が0.1%上がったときの利息増加は、単純計算で年間1,000円です。
しかし、借金が1,000兆円なら、同じ0.1%でも単純計算では1兆円になります。
もちろん、実際には国債ごとに発行時期や利率、満期が違うため、国債残高全体へ一律に新しい金利を掛けるわけではありません。
それでも、
元になる借金が巨大なら、わずかな金利上昇でも、最終的な影響額は大きくなる
という基本的な構造は変わりません。
🐥:金利は小さな数字だけど、掛ける相手が巨大なんだね。
🐔:小さな雨粒でも、受け止める屋根が国土ほど広ければ、水の量は膨大になるということじゃな。
🐱:雨の日は寝るに限るニャ。
理由2 毎年、巨額の国債を借り換えているから
借換債とは、満期を迎えた国債を償還するために発行する「入れ替え用の新しい国債」です。
国債には、2年、5年、10年、20年など、それぞれ満期があります。
満期を迎えると、国は国債を持っている人へ元本を返さなければなりません。
🐥:満期になったら、国が税金から全部返すの?
🐶:すべてを、その年の税収などから現金で返しているわけではないんだわん。
満期を迎えた国債のうち、現金で償還しない部分については、新しい国債を発行して返済資金を調達します。
そのために発行するのが、借換債です。
🐥:古い国債を返すために、新しい国債を発行するの?
🐶:そうなんだわん。
借換債の発行によって、新しい政策に使うお金が増えるわけではありません。
借換債で調達したお金は、満期を迎えた過去の国債を償還するために使われます。
つまり、
満期を迎えた古い国債を、新しい国債へ入れ替える
ような仕組みです。
🐱:古い箱から、新しい箱へ中身を移すニャ?
🐶:そう考えると分かりやすいんだわん。
🐱:空いた古い箱は、ぼくがもらうニャ。
🐔:ねこさんにとっては、借換債より箱のほうが重要なようじゃ。
借換債が発行されると、どうなるの?
たとえば、過去に発行した100億円の国債が満期を迎えたとします。
そのうち20億円を現金で償還し、残る80億円を借換債で調達するなら、お金の流れは次のようになります。
過去の国債100億円が満期を迎える
↓
20億円を償還財源から現金で返す
↓
80億円分の借換債を新たに発行する
↓
調達した80億円を、過去の国債の償還に充てる
古い国債100億円はいったん償還されます。
しかし、そのうち80億円分は新しい借換債へ置き換わるため、国の借金としてその先へ引き継がれます。
🐥:古い国債はなくなるけれど、代わりに新しい国債が生まれるんだね。
🐶:そのとおりだわん。
だから、満期を迎えた国債を100億円償還しても、国の借金が必ず100億円減るわけではありません。
新たに80億円の借換債を発行したなら、単純化すると、実際に減るのは現金で償還した20億円分です。
借換債は「借金の踏み倒し」ではない
🐥:でも、新しい国債で古い国債を返しても大丈夫なの?
🐶:古い国債を持っていた人には、満期になれば約束どおり元本が支払われるんだわん。
返済をしないのではなく、その返済資金の一部を、新しい国債の発行によって調達しています。
そのため、借換債は古い国債の返済を先送りして無視するものではありません。
一方で、借換債を発行した分だけ、国の借金は新しい国債として残ります。
🐔:古い約束は果たす。しかし、そのために新しい約束を結ぶということじゃな。
🐱:古い箱は返す。でも新しい箱をもらうニャ。
🐥:ねこさんだけ、ずっと箱の話をしてるね。
日本では、なぜ借換債が多いの?
日本では、建設国債や特例国債について、全体として60年で償還する「60年償還ルール」が採られています。
たとえば、600億円をすべて10年国債で調達した場合、10年後の満期に600億円すべてを現金で返すわけではありません。
財務省の説明では、100億円を現金で償還し、残る500億円は借換債を発行してつなぎます。
その後も一定のルールに基づいて現金償還と借り換えを繰り返し、全体として60年で償還していく考え方です。
2026年度の国債発行計画では、発行総額180.7兆円のうち、借換債は135.8兆円。国債発行額の約4分の3を借換債が占めています。
つまり、日本では新しい政策の財源を調達するための国債だけでなく、過去に発行した国債を入れ替えるためにも、毎年巨額の国債が発行されているのです。
ここだけ覚えておこう
借換債=満期を迎えた国債を償還するために発行する、入れ替え用の新しい国債。
古い国債は満期に償還されますが、借換債を発行した部分は、新しい国債として国の借金に残ります。
🐥:古い国債が、新しい国債へ選手交代するんだね。
🐶:そうなんだわん。そして借換債は新しく発行する国債だから、発行時点の市場金利の影響を受ける。
それが、金利上昇の影響が国の利払い費へ徐々に広がる理由につながるんだわん。
🐱:古い箱から、新しい箱へ選手交代ニャ。
🐔:箱は試合に出んぞ。
理由3 金利上昇の影響が、時間をかけて積み上がるから
国全体の利払い費は、
- 過去に発行され、まだ満期を迎えていない国債の利息
- 新たな財源を調達するために発行する国債の利息
- 過去の国債を置き換える借換債の利息
が積み重なって決まります。
市場金利が上昇しても、過去の低い固定金利で発行された国債の利息まで、ただちに上がるわけではありません。
まず、新しく発行する国債に高い金利が反映されます。そして、満期を迎えた国債が借り換えられるたびに、高い金利で発行された国債が少しずつ増えていきます。
日本国債の平均償還年限は長期化しており、2024年度末の残高ベースでは9.5年です。これは、金利上昇の影響が国債全体へ一気に及ぶのを和らげる働きをします。
ただし、平均償還年限が9.5年だからといって、9年半後まで何も起こらないわけではありません。
国債は発行時期も満期も異なるため、毎年どれかが満期を迎え、順番に借り換えられます。
1年目:新規国債と、その年に発行する借換債
2年目:新規国債と、翌年に発行する借換債
3年目:さらに次の借換債
というように、金利上昇の影響が少しずつ国債全体へ広がります。
🐶:低い金利の国債が満期を迎えるたびに、高い金利の借換債へ少しずつ置き換わっていくんだわん。
🐥:だから、金利が上がった直後よりも、何年かたったあとのほうが影響が大きくなることがあるんだね。
🐔:急激な直撃を、長く続く波へ変えておるともいえるのう。
🐱:波が来たら、高いところで寝るニャ。
金利上昇の影響は、過去の国債の金利が突然変わることで生じるのではありません。新規国債の発行と、満期を迎えた国債の借り換えを通じて、徐々に国全体の利払い費へ反映されます。
国の借金全部が、すぐ3.8%になるわけではない
ここで、とても大切な点を確認しておきましょう。
2027年度の国債費のうち、利払い費を予算計上するための計算には、3.8%の想定金利が用いられています。
しかし、これは、
国が抱えている国債すべての金利が、2027年度から一斉に3.8%になる
という意味ではありません。
🐥:市場金利が上がったら、すでに発行されている国債の金利も上がるんじゃないの?
🐶:固定利付国債なら、途中で国が支払う利率が変わるわけではないんだわん。
財務省は、国債の金利について次のように説明しています。
「国債(変動利付債を除く)の金利(表面利率)は入札時の市場の実勢により決定され、償還まで変わりません。」
つまり、固定利付国債は、発行時に決まった利率が満期まで続きます。
たとえば、過去に金利0.5%で発行された固定利付国債は、市場金利が2%や3%へ上昇しても、その国債について国が支払う利率は、満期まで0.5%のままです。
🐥:世の中の金利が上がっても、契約済みの金利までは変わらないんだね。
🐶:そうなんだわん。
住宅ローンでいえば、全期間固定金利で借りた人の適用金利が、市場金利の上昇だけで翌日から変わるわけではないのと似ています。
変わるのは利率ではなく、市場で取引される価格
固定利付国債の表面利率は満期まで変わりませんが、すでに発行された国債が市場で売買される価格や利回りは変動します。
🐥:利率は変わらないのに、利回りは変わるの?
🐶:少しややこしいけれど、別のものなんだわん。
たとえば、金利0.5%の国債があるとき、新しく発行される国債の金利が2%になれば、投資家は同じ価格なら2%の国債を選びたくなります。
そこで、すでに発行されている0.5%の国債は、売買価格が下がることで、新しい国債と比べた利回りが調整されます。
ただし、市場で国債の価格が変わっても、その国債について国が支払う表面利率まで変わるわけではありません。
表面利率は満期まで変わらない。
市場価格と利回りは日々変動する。
この二つを分けて考える必要があります。
🐱:名前が似ているのに、別のもの。
「かつお」と「かつお節」みたいなものニャ?
🐶:加工されているかどうかの話ではないんだわん。
想定金利3.8%は、実際の国債金利ではない
2027年度の国債費のうち、利払い費を予算計上するための計算には、3.8%の想定金利が用いられています。
この数字を見ると、
日本国債の金利が3.8%になるの?
国の借金全部に3.8%の利息がかかるの?
と思うかもしれません。
しかし、想定金利3.8%は、日本国債全体の平均金利ではありません。
また、これから発行するすべての国債に、実際に3.8%の金利が付くという意味でもありません。
🐥:じゃあ、3.8%は何の金利なの?
🐶:国債の利払いに必要な予算を計算するために置く、予算上の金利なんだわん。
三つの「金利」を分けてみよう
国債のニュースに出てくる金利には、似ているようで役割の違うものがあります。
| 金利に関する言葉何を表す数字?変わり方 | ||
| 個々の国債の表面利率 | 国がその国債に実際に支払う利率 | 固定利付国債では発行時に決まり、償還まで変わらない |
| 市場金利・利回り | 国債が市場で売買される際の利回り | 国債価格や市場環境に応じて日々変動する |
| 想定金利3.8% | 国債の利払い予算を計算するための前提 | 予算編成時に、金利上昇への備えを含めて設定する |
🐥:同じ「金利」と呼んでいても、三つは別の数字なんだね。
🐶:そうなんだわん。
想定金利は市場金利の動向などを踏まえて設定されますが、市場で実際に成立している特定の国債の金利そのものではありません。
想定金利は「予算上の安全マージン」
国債の利払い予算を組む時点では、翌年度の市場金利がどのように動くか、正確には分かりません。
もし実際の金利が予算の見込みより上昇すれば、用意した利払い予算が不足する可能性があります。
そこで財務省は、金利上昇にも対応できるよう、一定の余裕を含んだ想定金利を置いて、利払い費を計算します。
つまり、想定金利は、
将来の国債金利を一点で言い当てる予想
というより、
金利が想定より上昇しても、利払い予算が不足しないようにするための安全マージンを含む計算上の金利
と考えると分かりやすいでしょう。
🐱:旅行のおやつを、ぴったり3個ではなく、念のため5個持っていく数字ニャ。
🐶:今回は、かなり正しいたとえなんだわん。
🐱:余った2個は、帰りに食べるニャ。
🐔:予算が余ったからといって、ねこさんのおやつにはならんぞ。
図で見ると、こういうこと
↓
今後の金利上昇に備える
↓
財務省が予算を見積もる
↓
想定金利3.8%を設定
↓
利払い予算を計算
一方、実際に支払う利息は――
↓
実際の利払い額
「想定金利3.8%」は予算上の見積もりであり、個々の国債に適用される実際の利率ではありません。
想定金利3.8%は、右下の「個々の国債の実際の利率」ではなく、上側の利払い予算を見積もるための数字です。
🐥:3.8%が国債全部へ直接貼られるわけではないんだね。
🐶:そうなんだわん。
国の借金は、一枚の巨大な借用証書ではありません。
発行時期、満期、表面利率が異なる、たくさんの国債で構成されています。
そのため、実際に国が支払う利息は、それぞれの国債に設定された利率によって決まります。
実際の金利が3.8%より低かったら?
実際の金利が想定より低く推移すれば、予算として計上した利払い費をすべて使わないこともあります。
反対に、想定以上に金利が上昇すれば、必要な利払い費が増える可能性があります。
🐥:想定金利は「必ずこれだけ払います」という数字ではないんだ。
🐔:うむ。将来の金利が読めないなかで、必要な予算をあらかじめ確保しておくための数字じゃ。
🐶:だから、想定金利が3.8%へ引き上げられたことは、財務省が金利上昇による利払い費の増加へ、より大きく備えたということなんだわん。
ここだけ覚えておこう
想定金利3.8%は、国債全体の平均金利ではありません。
実際の市場金利や、個々の国債に適用される表面利率とも異なります。
将来の金利上昇に備えて、利払い予算を計算するために置かれた「予算上の安全マージンを含む数字」です。
🐱:想定金利は、国のおやつ予備袋ニャ。
🐥:最後までおやつで覚えるつもりだね。
利払いが増えると、私たちの暮らしに何が起きる?
🐥:国の利息が増えても、私たちには関係ないんじゃない?
🐔:まったく無関係とはいかんのう。
国の利払い費が増えたからといって、ほかの政策に使えるお金が、ただちに同じ金額だけ減るわけではありません。
税収が増えることもあれば、予算全体を組み替えたり、新たな国債を発行したりして財源を確保することもあります。
ただし、国の収入や予算には限りがあります。
そのなかで国債の元本の償還や利払いに充てる国債費が増え続ければ、
- 社会保障
- 教育
- 防災
- 子育て支援
- インフラ整備
- 成長分野への投資
など、ほかの政策に使える予算を圧迫する可能性があります。
🐥:国債費が増えたから、すぐ何かの予算が削られるわけではない。でも、自由に使えるお金は少なくなりやすいんだね。
🐶:そうなんだわん。利払い費が増えるほど、予算を組むときの選択肢が狭くなる可能性があるんだ。
したがって、
国債費が増えたら、すぐ増税になる
金利が上がったら、社会保障がすぐ削られる
と単純に結びつけることはできません。
税収がどれくらい増えるか、経済がどの程度成長するか、新たな国債をどれだけ発行するか、歳出をどう組み替えるかによって、影響は変わります。
それでも、利払い費の増加が長く続けば、将来の予算編成を難しくし、政策に使える財源の余裕を小さくする可能性があります。
🐱:ぼくのおやつ予算も圧迫されるニャ?
🐔:まずは、食べ残しを減らすところからじゃな。
金利上昇は、悪いことばかりなの?
🐥:国の利払いは増えるし、住宅ローンの負担も重くなる。
やっぱり、金利は上がらないほうがいいのかな?
🐶:金利上昇には負担が増える面もあるけれど、必ずしも悪いことばかりではないんだわん。
大切なのは、
金利が上がったかどうかだけでなく、なぜ金利が上がったのか
を見ることです。
金利上昇が「経済正常化のサイン」になることもある
景気が弱く、物価も賃金も上がらないとき、中央銀行は金利を低くして、お金を借りやすい状態をつくろうとします。
企業がお金を借りて設備投資をしたり、家計が住宅などを購入したりしやすくすることで、経済を支えるためです。
反対に、
- 企業の利益が増える
- 賃金が上昇する
- 消費や投資が活発になる
- 物価が安定的に上がる
という状態になれば、極端に低い金利で経済を支え続ける必要は小さくなります。
そこで中央銀行が政策金利を、経済の状態に合った水準へ戻していくことがあります。
🐥:つまり、金利上昇が「経済が自分で歩けるようになってきた」というサインになることもあるんだね。
🐶:そうなんだわん。
長く続いた超低金利やゼロ金利からの上昇であれば、経済や物価が正常な状態へ近づいている結果と見ることもできます。
ただし、金利が上がれば何でも「正常化」と呼べるわけではありません。
物価だけが上がって賃金が追いつかない場合や、国の財政への不安から国債金利が上昇する場合は、家計や企業に負担をもたらす可能性があります。
良い金利上昇か、苦しい金利上昇かは、その背後に経済成長や賃金上昇があるかによって変わります。
預金する人には、受け取る利息が増える
金利が上昇すれば、普通預金や定期預金の金利が上がり、預金する人が受け取る利息も増える可能性があります。
🐱:預金にも、ようやく利息が帰ってくるニャ?
🐶:そういう面もあるんだわん。
ただし、預金金利の上昇より物価上昇のほうが大きければ、預金の実質的な価値が増えるとは限りません。
受け取る利息だけでなく、物価がどの程度上がっているかも一緒に見る必要があります。
金融機関の収益が改善する可能性がある
銀行は、預金などで集めたお金を、企業や個人への貸出しや債券の運用に回しています。
低金利が長く続くと、貸出金利も低くなり、銀行が預金金利との差から得る利益は小さくなりやすくなります。
金利がある程度上昇すれば、貸出金利と預金金利の差が広がり、銀行の収益が改善する可能性があります。
金融機関の経営が安定すれば、企業への融資や地域経済を支える力につながることも考えられます。
🐥:銀行にとっては、金利が少しあるほうが商売をしやすいこともあるんだね。
🐶:そうなんだわん。
ただし、金利が急激に上がると、金融機関が保有する債券の価格が下がったり、借り手の返済負担が増えて貸し倒れのリスクが高まったりすることもあります。
そのため、金融機関にとっても、金利は上がれば上がるほどよいというものではありません。
経済が成長すれば、税収が増える可能性もある
🐥:国は利払いが増えるけれど、入ってくるお金は増えないの?
🐶:経済全体が成長していれば、税収が増える可能性があるんだわん。
たとえば、
- 賃金が上がれば、所得税などの税収が増える
- 企業の利益が増えれば、法人税収が増える
- 消費額が増えれば、消費税収が増える
- 物価や賃金の上昇によって、名目上の経済規模が大きくなる
といったことが考えられます。
ここで重要なのは、金利が上がるから税収が増えるのではないという点です。
経済成長や賃金上昇、企業収益の改善を伴って金利が上がる場合には、利払い費が増える一方で、税収も増える可能性があるのです。
🐔:国の財布を見るなら、支払う利息だけでなく、入ってくる税収も見なければならん。
🐶:名目経済の成長率と国債金利の関係も、国の借金を考えるうえで大切になるんだわん。
借りる人には逆風、預ける人には追い風
金利上昇の影響は、立場によって異なります。
| 立場 | 主な影響 |
| 住宅ローンなどを借りる人 | 返済負担が増える可能性 |
| 預金する人 | 受け取る利息が増える可能性 |
| 借入れの多い企業 | 資金調達の負担が増える可能性 |
| 金融機関 | 利ざや改善の一方、債券価格下落などのリスク |
| 国 | 国債の利払い費が増える可能性 |
| 経済全体 | 正常化の表れにも、苦しい金利上昇にもなり得る |
🐥:同じ金利上昇でも、立っている場所によって景色が違うんだね。
🐔:うむ。雨を嫌う者もいれば、雨を待っている畑もある。
🐱:雨の日は、やっぱり寝るニャ。
金利上昇は「原因」と「速さ」を見る
金利上昇を、単純に良い、悪いと決めることはできません。
見るべきなのは、主に次の二つです。
なぜ金利が上がったのか
どのくらいの速さで上がったのか
賃金や企業収益の改善を伴い、経済の正常化に合わせて緩やかに金利が上昇するのであれば、預金利息や金融機関の収益、税収などに良い影響が表れる可能性があります。
一方、賃金が上がらないまま物価だけが上昇したり、財政への不安から国債が売られたりして金利が急上昇すれば、家計・企業・政府の負担が同時に重くなるおそれがあります。
🐶:金利上昇は、それ自体が病気なのではなく、経済の体温のようなものなんだわん。
🐥:体が元気に動いて体温が上がっているのか、熱を出して上がっているのかを見分ける必要があるんだね。
金利上昇は、経済が正常化しているサインになることもあります。ただし、成長や賃金上昇を伴わない金利上昇は、家計・企業・政府にとって重い負担になりかねません。
まとめ――三つだけ覚えて帰ろう
🐶:では最後に、今日のおさらいをするんだわん。
🐱:聞いてなかったニャ。
🐥:ずっと一緒にいたでしょう!
🐱:途中で箱の話になったから、箱へ入る準備をしていたニャ。
🐔:まあよい。三つだけじゃから、ねこさんも参加するんじゃ。
🐶:第1問。
国債費36兆6,386億円は、すべて国が支払う利息である。○か×か?
🐥:×!
🐱:36兆円分のちゅ~るでもない。×ニャ。
🐶:正解なんだわん。
国債費36.6兆円のうち、債務償還費は20兆25億円、利子及割引料は16兆5,888億円です。
国債費の半分以上は、国債の元本を償還するための財源などに充てる債務償還費です。
ただし、債務償還費20兆円の分だけ、国の借金残高がそのまま減るわけではありません。満期を迎えた国債の一部は、借換債を発行してつないでいるからです。
覚えておきたいこと①
国債費=利息だけではない。
半分以上は、元本の償還に備える債務償還費。
🐱:国債費の中には、元本さんと利息さんが一緒に住んでいるニャ。
🐔:事務費さんも、小さく住んでおるぞ。
🐱:にぎやかな家ニャ。
🐶:では第2問。
市場金利が上がると、過去に発行した固定利付国債の金利も、翌日から一斉に上がる。○か×か?
🐥:×!
固定利付国債の利率は、償還まで変わらない!
🐱:ぼくのお昼寝時間も、償還まで変わらないニャ。
🐶:ねこさんに満期はないんだわん。
金利上昇の影響を受けるのは、主に新たな財源を調達するために発行する国債と、満期を迎えた国債を置き換えるために発行する借換債です。
低い金利で発行された国債が満期を迎え、新しい金利の借換債へ置き換わるたびに、高い金利の国債が少しずつ増えていきます。
覚えておきたいこと②
金利上昇の影響は、新規国債と借換債の発行を通じて、徐々に積み上がる。
🐥:一夜にして全部が変わるんじゃなくて、選手交代を重ねながら、チーム全体の金利が変わっていくんだね。
🐱:ぼくは代打で出るニャ。
🐔:寝ている選手は使えんのう。
🐶:最後の問題なんだわん。
想定金利3.8%とは、日本国債全体の平均金利である。○か×か?
🐥:×!
🐱:おやつを多めに持っていく数字ニャ。
🐶:表現は独特だけど、方向は合っているんだわん。
想定金利は、国債全体に実際に適用される金利ではありません。
将来の金利上昇によって利払い予算が不足しないよう、国債費を計算するために置かれた予算上の金利です。
覚えておきたいこと③
想定金利は、金利上昇への備えを含む予算上の数字。
国債全体の平均金利や、実際の市場金利とは異なる。
🐱:使わなかった安全マージンは、おやつになるニャ?
🐶:ならないんだわん。
🐱:さっきから、国の仕組みにはおやつが足りないニャ。
🐥:でも、ニュースで「国債費36.6兆円」「想定金利3.8%」と聞いても、もう驚くだけじゃなくなったよ。
国債費は、全部が利息ではない。
過去の固定利付国債の金利が、一斉に3.8%になるわけでもない。
新しく発行する国債や借換債を通じて、金利上昇の影響が少しずつ積み上がっていく。
🐔:うむ。難しい言葉も、仕組みを一つずつほどけば、必要以上に怖がることはない。
🐶:国債費、債務償還費、借換債、想定金利。
今日初めて会った言葉も、次にニュースで見かけたときには、もう少し身近に感じられるはずなんだわん。
🐱:一度会ったら、お友達ニャ。
🐥:ねこさん、借換債とお友達になったの?
🐱:名前はまだ覚えてないニャ。
🐔:そこからかのう。
🐶:まずは、この三つだけ覚えて帰れば大丈夫なんだわん。
① 国債費は全部が利息ではない。
36.6兆円のうち、利払いは約16.6兆円。② 金利上昇の影響は、新規国債と借換債から徐々に広がる。
過去の国債の利率が一斉に変わるわけではない。③ 想定金利3.8%は、予算を計算するための数字。
国債全体の平均金利でも、個々の国債の実際の利率でもない。
🐥:ニュースで「国債費36.6兆円」と聞いても、もう全部が利息だとは思わないよ。
🐶:難しい言葉も、中身を分ければ必要以上に怖がらなくていいんだわん。
🐱:そして、おやつは多めに持っていくニャ。
🐔:それは国債費とは関係ないのう。
参考資料
この記事は、以下の資料を参考に作成しました。
🔗財務省「財務省所管令和9年度概算要求をとりまとめました」
国債費36兆6,386億円、債務償還費20兆25億円、利子及割引料16兆5,888億円などの根拠資料です。
🔗財務省「国債とは」
国債の種類や、満期を迎えた国債を借り換えるために発行する「借換債」の仕組みを確認できます。
🔗財務省「ご存知ですか?国債」
国債の元本・利子の仕組みや、固定利付国債の表面利率が発行時に決まり、償還まで変わらないことを説明しています。
🔗財務省「債務管理リポート2025」
60年償還ルール、借換債、国債の平均償還年限など、国の債務管理の仕組みを確認できます。
🔗財務省「令和8年度国債管理政策の概要」
2026年度の国債発行総額180.7兆円、うち借換債135.8兆円など、国債発行計画の内訳を確認できます。
🔗財務省「令和8年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算」
金利や経済成長率が変化した場合、将来の国債費や税収がどのように変わる可能性があるかを機械的に試算した資料です。
※本記事の金額は、原則として億円未満を四捨五入して表示しています。2027年度の国債費36兆6,386億円は概算要求額であり、成立した予算額ではありません。
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