「個人情報が漏えいした可能性があります」
最近、そんな個人情報漏えいのニュースを目にすることがあります。
氏名、住所、電話番号、生年月日、メールアドレス――。
漏れた可能性のある情報がずらりと並んでいるのを見て、
「大変そうなのは分かる。でも、住所や電話番号を知られたら、実際には何が起きるんだろう?」
と思ったことはありませんか。
クレジットカード番号やパスワードなら、なんとなく危険性を想像できます。
では、住所や生年月日は?
銀行口座の番号は?
そもそも、漏れたら困る情報を、なぜ企業は集めているのでしょう。
今回は、情報漏えいのニュースを見たときに「何を見ればいいのか」、ぴよまるたちと一緒に整理してみましょう。
※この記事は2026年9月29日時点で確認できる公的情報をもとにしています。
🧩 まずはクイズ|個人情報が漏れたら、すぐお金を盗られる?
あるサービスから、
「氏名、住所、電話番号、メールアドレスが漏えいした可能性があります」
というお知らせが届きました。
さて、どう考えればいいでしょう。
- A.住所を知られたら、すぐ銀行口座からお金を盗られる
- B.何も心配する必要はない
- C.それだけですぐ金銭被害が起きるとは限らないが、別の詐欺などに使われる可能性がある
🐥ぴよまる:うーん……。「個人情報が漏れた」って聞くとAが怖いけど、住所だけで銀行のお金を動かせるのかな?
😸うちのねこさん:オレの住所を知ったところで、オレの財布は開かないニャ。
🐥:それはそうだけど……じゃあ、どうしてこんなに大きなニュースになるんだろう?
🐶うらのいぬさん:正解はCです。
住所や電話番号、メールアドレスなどが漏れたからといって、それだけで直ちに財産的な被害が起こるとは限りません。
ただし、漏れた情報が別の詐欺や不正行為の材料になる可能性はあります。
🐔にわのとりさん:「個人情報」とひとまとめにせず、何が漏れたのか、その情報で何ができるのかを見るのが最初の一歩じゃな。
🔍 個人情報漏えいは「何が漏れたか」で危険が違う
情報漏えいのニュースでは、「○万人分の個人情報が漏えいした可能性」といった人数に目が行きがちです。
でも、私たちが自分への影響を考えるときは、人数と同じくらい、
「どんな情報が対象なのか」
が重要です。
たとえば、
- 氏名・住所・電話番号・生年月日
- メールアドレス
- 銀行口座情報
- ID・パスワードなどの認証情報
- クレジットカード情報
では、想定される危険は同じではありません。
個人情報保護委員会も、住所、電話番号、メールアドレスなどだけが漏れた場合、それだけで直ちに「財産的被害が生じるおそれがある漏えい」に該当するものではないとしています。
🏦 銀行口座情報だけで、お金を動かせるわけではない
ここで少し意外なのが、銀行口座情報です。
「口座番号が漏れた」と聞くと、
「預金を引き出されるのでは?」
と心配になるかもしれません。
しかし個人情報保護委員会によると、金融機関名、支店名、口座番号、口座名義などの銀行口座情報だけが漏れた場合、それだけで直ちに「財産的被害が生じるおそれがある漏えい」に当たるとはされていません。
一方、銀行口座情報とインターネットバンキングのパスワードなど、お金を動かすための認証情報が組み合わさって漏れた場合は、危険性が大きく変わります。
また、クレジットカード番号は不正利用につながるおそれがあることから、財産的被害が生じるおそれのある情報として扱われています。
つまり、
「金融情報だから全部同じ」ではありません。
何の情報が、どんな組み合わせで漏れたのかを見ることが大切です。
🐥❓:銀行口座の番号が漏れたら、それだけでお金を取られると思ってた。
🐶💡:口座情報だけで直ちにそうなるわけではありません。ただし、ログインに必要なパスワードなどまで一緒に漏れたら話は変わります。
😾:……「金融情報」ってひとまとめにしちゃダメなのニャ。
🐔✨:そうじゃな。ニュースを見るときは、情報の名前だけで怖がらず、「その情報で何ができるのか」を見るのがポイントじゃ。
🧩 怖さの一つは「次のだまし」に使われること
では、氏名や住所、電話番号などは、なぜ漏えいすると問題になるのでしょう。
たとえば、知らない相手から突然こんなメールが来たらどうでしょう。
「重要なお知らせです。こちらからログインしてください」
これだけなら、
「怪しいな」
と思えるかもしれません。
でも、自分の名前などを知っている相手から、それらしい内容で連絡が来たらどうでしょう。
少しだけ、本物らしく感じてしまうかもしれません。
警察庁は、実在する企業やサービスを装ったメールやSMSから偽サイトへ誘導し、ID・パスワードなどを盗むフィッシングへの注意を呼びかけています。
偽サイトでは、住所、氏名、電話番号、生年月日のほか、クレジットカード番号、口座情報、ID、パスワードなどを入力させようとする場合があります。
😾:……ひげがむずむずするニャ。
🐥❓:どうしたの?
😾:最初に漏れた情報だけで全部やる必要はないニャ。
🐥:え?
😼:その情報を使って信用させて、あとからもっと大事な情報を聞き出すこともできるニャ?
🐶💡:その可能性には注意が必要です。
個人情報保護委員会も、漏えい後に起こり得る「二次被害」の例として、クレジットカードの不正利用、ポイントの不正利用のほか、漏れたメールアドレスへの不審メール・詐欺メールの送信を挙げています。
🐥💡:そっか。
「漏れた住所がお金を盗む」んじゃなくて、漏れた情報が次のだましの材料になることがあるんだ。
👤 情報が組み合わさると、使われ方も変わってくる
もう一つ考えておきたいのが、情報の組み合わせです。
名前だけ。
住所だけ。
電話番号だけ。
メールアドレスだけ。
一つひとつを見ると、「これで何ができるの?」と思うものもあります。
でも、
氏名+住所+電話番号+生年月日+メールアドレス
と情報が重なっていくと、本人確認の質問に使われる情報や、もっともらしい連絡を作る材料になることがあります。
だからといって、この組み合わせだけで必ず犯罪が成立するわけではありません。
ここは大切です。
しかし、相手について知っている情報が増えれば、それを利用した連絡を本物らしく見せたり、別の情報を聞き出そうとしたりする材料になる可能性があります。
🐥💦:ぼく、「個人情報が漏れたら全部同じくらい危険」だと思ってた。
🐔💭:そこを分けて考えると、ニュースが少し読みやすくなるぞ。
「漏れたか、漏れていないか」だけではなく、「何が漏れたのか」じゃ。
🏠 怖さは「お金を盗られる」だけではない
情報漏えいというと、どうしても「お金を盗られるのでは?」と考えがちです。
もちろん、クレジットカードの不正利用や、漏れた情報をきっかけにした詐欺など、金銭的な二次被害には注意が必要です。
でも、個人情報を守る理由は財産だけではありません。
住所や連絡先などが意図しない相手に知られれば、プライバシーを侵害されたり、迷惑な連絡や嫌がらせなどにつながったりする可能性も考えられます。
だから、
「この情報だけではお金を盗めない=漏れても問題ない」
ではありません。
🐥:そっか。ぼく、「危険かどうか」をお金だけで考えてた。
🐔:個人情報は、その人の暮らしそのものにつながっているからの。
😼:オレの住所を勝手に知られるのは、お金を取られなくてもイヤだニャ。
🐥:……それは、すごく分かりやすい。
😼:オレの縄張りニャ。
📰 ところで、どうして情報漏えいのニュースをよく見るの?
ここでもう一つ疑問が出てきます。
そもそも、なぜ私たちは情報漏えいのニュースをこんなによく目にするのでしょう。
もちろん、不正アクセスなどによる事故が実際に起きています。
ただ、「ニュースでよく見る」ということと、「実際の事故が増えている」ということは分けて考える必要があります。
日本では2022年4月から、個人の権利や利益を害するおそれがある一定の個人データ漏えいについて、事業者には個人情報保護委員会への報告と本人への通知が義務付けられています。
対象になるのは、たとえば、
- 要配慮個人情報を含む場合
- 財産的被害が生じるおそれがある場合
- 不正な目的で行われたおそれがある場合
- 1,000人を超える漏えいが発生した場合
などです。
2025年度に個人情報保護委員会が処理した、個人情報保護法に基づく民間事業者などからの漏えい等の報告は17,139件でした。
前年度は19,056件です。
ただし、この数字の読み方には注意が必要です。
「報告される仕組みがあること」と、「実際に事故そのものが増えたり減ったりしていること」は別の話です。
年度ごとの報告件数だけを見て、
「昔より情報管理が悪くなった」
あるいは反対に、
「報告件数が減ったから安全になった」
と長期的な増減傾向まで判断するのは難しいでしょう。
🐥:じゃあ、「最近よくニュースで見るなあ」という感覚だけでは、事故が増えたとは言えないんだ。
🐶:はい。報告制度の存在や、対象となる事案なども考えて数字を見る必要があります。
🐔☕:ここでは、「見えるようになったこと」と「実際に起きていること」を分けて考えるとよいじゃろう。
情報漏えいのニュースが多いと感じたら、
「また増えた!」
とすぐ結論を出すのではなく、
何件起きたのか。
何件報告されたのか。
どんな制度のもとで集計された数字なのか。
そこまで見ると、ニュースの景色が少し変わってきます。
🤔 でも、そもそも企業はどうして個人情報を集めるの?
ここまで来ると、別の疑問が浮かびます。
🐥❓:ねえ。漏れたら困るものなら、最初から集めなければいいんじゃないの?
😾:オレもそれ、ひげに引っかかったニャ。住所、電話番号、誕生日、メールアドレス……。会員登録の「必須」ってところに、オレたち普通に入れてるニャ。
これはなかなか鋭い疑問です。
もちろん、企業が個人情報を集めること自体が悪いわけではありません。
サービスによっては、情報がなければ提供できないものがあります。
商品を自宅へ届けるなら、配送先が必要です。
本人に連絡するなら、電話番号やメールアドレスが必要になるでしょう。
年齢によって利用条件が変わるサービスなら、生年月日が必要になる場合もあります。
会員サービスでは、購入履歴などを使ってサービスを提供したり、利用者の傾向を分析したりする場合もあります。
大切なのは、
「何のために、その情報を集めているのか」
です。
📋 「とりあえず集めておこう」ではなく、利用目的がある
個人情報保護法では、個人情報を扱う事業者は、利用目的をできる限り特定することが求められています。
個人情報保護委員会は、本人が「自分の情報がどんな事業に使われ、何の目的で利用されるのか」を合理的に予測できる程度に具体的にする必要があると説明しています。
単に「サービス向上のため」といった抽象的な表現だけでは、十分に具体的とはいえない場合があります。
また、購買履歴や閲覧履歴などを分析して、その人の趣味・嗜好に合わせた広告を出すような場合には、そうした分析を行うこと自体も含めて利用目的を特定する必要があるとされています。
🐥:じゃあ、会員登録するときに、
「なんで誕生日が必要なんだろう?」
って思ってもいいんだね。
🐔:もちろんじゃ。
「企業が聞いているから必要に決まっている」と考える必要もなければ、「個人情報を聞く企業は怪しい」と考える必要もない。
どんなサービスのために、何を渡しているのか。
そこを見る習慣を持つとよいのじゃ。
😼:なるほどニャ。無料会員だから、オレは何も払ってないと思ってたニャ。
🐥❓:え? お金は払ってないよ?
😼:お金じゃなくても、オレのことはけっこう教えてるニャ。
🐥💡:ああ……!
📱 カードからアプリへ|便利になると「つながる情報」も増える
昔ながらの紙のポイントカードや、最低限の情報だけで作れる会員カードもあります。
一方、スマートフォンのアプリでは、ログインするためのメールアドレスなど、利用者とサービスを結びつける情報が必要になることがあります。
さらに、
購入履歴を見る。
クーポンを受け取る。
ポイントを管理する。
自分向けのお知らせを受け取る。
こうした便利な機能が増えれば、サービスと個人を結びつける情報も増えることがあります。
だから、
「アプリは危険」
という話ではありません。
便利さと引き換えに何を差し出しているのかを、ときどき確認してみる。
それだけでも、個人情報との付き合い方は少し変わります。
🧭 個人情報漏えいのニュースを見たら「5つ」を確認しよう
では、次に「個人情報が漏えいした可能性」というニュースを見たら、何を確認すればいいでしょう。
全部の専門用語を理解する必要はありません。
まずは次の5つです。
① 自分が利用しているサービスか
まず、自分に関係する話なのかを確認します。
② 何の情報が対象なのか
氏名や住所なのか。
メールアドレスなのか。
銀行口座情報なのか。
ID・パスワードなどの認証情報なのか。
クレジットカード情報まで含まれるのか。
そして、どんな情報が組み合わさっているのか。
ここは特に重要です。
③ パスワード変更などの対応が必要か
企業から具体的な案内が出ている場合は、その内容を確認します。
④ 不審なメールやSMSが来ていないか
情報漏えいを口実にしたフィッシングにも注意します。
警察庁は、メールやSMSに書かれたリンクは見た目だけで真偽を判断するのが難しいとして、リンクを安易にクリックしないよう呼びかけています。
⑤ まだ「調査中」なのか、漏えいが確認されたのか
ニュースでは、
「漏えいした」
「漏えいした可能性がある」
「第三者に閲覧された可能性がある」
など、表現が違うことがあります。
まだ調査中なら、後日情報が更新されることもあります。
🌱 「怖いニュース」から「確認できるニュース」へ
🐥:ぼく、最初は「個人情報が漏れた」って聞いただけで、全部すごく危険なんだと思ってた。でもまず、
何が漏れたのかを見る。
それから、
その情報で何ができるのか、ほかの情報と組み合わさっていないかを見る。
そこからなんだね。
🐶✨:はい。そして企業から対応の案内が出ているなら、その内容を確認する。
必要以上に怖がる必要はありませんが、「自分には関係ない」と決めつける必要もありません。
😼:オレの情報なら、ちゃんと確認するニャ。
🐥:ねこさん、こういうときは慎重だね。
😼✨:当然ニャ。オレは大事ニャ。
🐔☕:それくらいでよいのかもしれんな。
個人情報は、私たちが暮らすうえで、さまざまなサービスを便利にしてくれるものでもある。
だから「渡さない」が唯一の答えではない。
一方で、一度誰かに預けた情報は、自分だけで管理できるものでもなくなる。
何を渡したのか。
何のために渡したのか。
もし漏えいのニュースが出たら、何が対象なのか。
その三つを少し意識するだけでも、ニュースの見え方は変わります。
次に、
「個人情報が漏えいした可能性があります」
というニュースを見かけたら。
「怖い!」で画面を閉じる前に、
「ところで、何が漏れたんだろう?」
と一度だけ立ち止まってみてください。
そこが、そのニュースの地図を読む入口です。
🔗 主な参考資料
- 個人情報保護委員会|漏えい等報告・本人への通知の義務化について
どのような漏えいが報告・本人通知の対象になるのかを確認できます。2022年4月から、一定の場合に報告・通知が義務化されています。警察庁 - 個人情報保護委員会|銀行口座情報のみが漏えいした場合の考え方
今回かなり丁寧に直した「銀行口座情報だけの場合」と「ネットバンキングのパスワードなどが組み合わさった場合」の違いを確認できる資料です。警察庁 - 個人情報保護委員会|クレジットカード番号が漏えいした場合の考え方
クレジットカード番号の漏えいが、財産的被害のおそれがある個人データの漏えい等に当たるという根拠はこちらです。警察庁 - 個人情報保護委員会|個人情報の利用目的はどこまで特定する必要がある?
「そもそも企業はなぜ個人情報を集めるの?」の章につながります。利用目的は、本人が合理的に予測できる程度まで具体的に特定する必要があると説明されています。警察庁 - 警察庁|フィッシング対策
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